1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「地のはてから(上)」(乃南 アサ)

2011-06-12 16:44:31 | 
上巻は大正5年(1916年)から昭和3年(1928年)まで。北海道の過酷な自然の中で、ひたむきに生きる少女が主人公の物語です。



借金取りに追われ、福島から、開拓農民として知床に渡った両親に連れられて、少女は北海道にやってきます。木を伐採し、笹の根と戦い、ようやく開墾した畑で作った作物が、バッタの大群によって一瞬にして食い荒らされてしまう。前半は、飢餓線上を生きる開拓農民たちの過酷な生活が描かれていきます。

少女の一家も、事故で父親を失い、母親が再婚。再婚した家でも、火災によって義理の父が死んでしまうなど、不幸が重なります。そして、少女は、12歳の時に、口減らしのために、小樽に奉公に出されてしまいます。

関東大震災(1923年)、治安維持法制定(1925年)、小樽高等商業学校での軍事教練反対運動(1925年)、小樽港湾労働者7千人のゼネスト(1927年)、日本共産党、労働農民党などの関係者約1600人が検挙された3.15事件など、しのびよる軍国主義と排外主義の空気の中で、人は平等には生まれてこないということを、少女は、身をもって知るというのが上巻のストーリー。

「人はまず舞い降りた場所で、まるで違ってしまうのだ。そうして皆が違う流れに運ばれる。」

小樽は、戦前、日本の労働運動と在日朝鮮人の数少ない共同闘争が行われたところです。小樽高等商業学校での軍事教練反対運動は、軍事教練の目的に、「無政府義者ハ不逞(ふてい)鮮人ヲ煽動(せんどう)」とあったことから、小樽総労働組合、在日朝鮮人らによる大規模な反対運動が展開されました。また、小樽の労働者たちは、1929年に朝鮮で行われた元山ゼネスト(1929年)に対して、連帯ストを行ったともいわれています。

このような小樽で、14歳になった主人公は、どのように生きていくのか、下巻が楽しみです。