1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「言魂」(多田富雄・石牟礼道子)

2008-09-29 08:41:14 | 
「言魂」を読みました。免疫学者の多田富雄さんと石牟礼道子の往復書簡集です。
心にしみる一冊でした。
 多田富雄さんは、脳梗塞で倒れ、右半身の麻痺と言語障害、嚥下障害という後遺
症が残っているそうです。その上に、前立腺癌がみつかり、食べるのも排尿をする
のもとても苦しい状態だそうです。
 石牟礼道子さんは、水俣の苦海をえがき続けてこられました。石牟礼さんもパー
キンソン病と闘っておられます。
 自らの病苦と闘いながら、弱者を切り捨てるリハビリ打ち切りや後期高齢者医療
制度と闘っておられる多田さんの姿や、水俣病の患者の方が「ふつうの人生」が歩
めるようにと50年間支え続けておられる石牟礼さんの姿には、ほんとうにこころ
がうたれます。胎児の時に水俣病に罹患した方は、もう50歳。今も病に苦しんで
おられるのですね。この本を読んで、チッソ資本と政府にあらためて怒りを感じま
した。
 多田富雄さんは、次のように書かれています。
「私にとって、日常とは本能的な死との闘いです。苦しみが日常になっているか
ら、それに耐えることも日常になったのです。」
「人間は受苦によって成長しますが、気を許すと人格まで破壊されます。今は苦し
みと対抗して、何とか魂のほうが優位に立つことが、私のささやかな生きがいにな
っています。いやいや、まだ破壊はされていないぞと、毎日勝利宣言をしているの
が心の支えになっています。それも浄土かなと思います。」
 多田さんは74歳。これから僕が迎えていく60代、70代の人生に向けて、
「苦しみに耐えることを日常」とする心構えの大切さをあらためて実感した一冊で
した。