1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「科学の扉をノックする」(小川洋子)

2008-09-01 23:11:41 | 
 「科学の扉をノックする」(小川洋子)を読みました。読んだ後で、とってもほん
わかとした気持ちのなりました。天文学、鉱物学、遺伝子、粘菌、遺体科学など、
小川洋子の7人の科学者へのインタビュー集です。
 自分が掘り当てたトパーズを結婚指輪として奥さんに送った鉱物学者の先生。カノ
ープスという星が見えるところにわが家を買った天文学者の先生。結婚式の前日夜
おそくまでパンダの遺体と一緒に過ごし、どうしてパンダが竹を握ることがでくる
のかを明らかにした遺体科学の先生など。どの科学者の方からも、夢とロマンが伝
わってきました。
 私たちの身体の窒素と炭素は、何十億年も前に宇宙のどこかで爆発した星の一欠片
であるという話。僕が死んで、地球の命の一欠片となって、何十億年かさきには、遠い
宇宙の星の一欠片になっているのかも知れない。ということは、「死んで星になる」という
話も、あながち嘘ではないわけで・・・。
 ヒトをつくるのに必要な最小限の遺伝情報のセットであるヒトゲノム。4種類の塩基、
30億でできているそうです。4種類の塩基が30億ならぶ可能性は、4の30億乗もあるの
ですが、その中から選ばれたたった一つの組み合わせがヒトを人間たらしめているヒト
ゲノムなのです。4の30億乗分の1・・・すごい数字です。人間がこの地球に存在すること
自体に、荘厳な奇跡を感じてしまいます。
 80パーセントの仲間を生かすために、犠牲となる20パーセントの粘菌達。誰よりも早く
土を掘るツチブタの手の美しさなどなど。
 宇宙も地球も、そこで生きるすべてのいのちや鉱物も、大きな命(サムシンググレート)
の循環のなかで共生しているのだということを、じんわりと実感させてくれる一冊でした。