1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「格差はつくられた」(クルーグマン)

2008-09-08 21:44:36 | 
 ノーベル賞にもっとも近い経済学者の一人と言われているポール・クルーグマンの本。経済学書だと思い手にしたのですが、大違い。イラクへの武力介入や金持ちへの優遇を推し進める共和党と「保守派ムーブメント」に対する闘争宣言とも言える本でした。クルーグマンは、自らの政治的な立場を次のように述べています。
 「私は、極端な貧困と富を抑制する制度によって支えられた、比較的平等な社会を信じている。私は民主主義、公民権、そして法による統治を信じている。それは私をリベラル派に属させ、そのことを誇りに思っている。」
 すごいなぁ、ここまではっきり自分の立場を主張できるのですね。拍手、拍手です。ちなみに、この本の原題は、「The Conscience of a Liberal」といいます。
 この本の中でクルーグマンは、経済格差は政治的に作られたものだと主張しています。アメリカにおいて、この政策を推し進めてきたのは、大企業と大金持ちによって支援されてきた「保守派ムーブメント」と共和党でした。「保守派ムーブメント」と共和党は、白人プロテスタントの黒人に対する差別意識を利用しながら、福祉の切り捨てと大企業優遇政策を進めてきました。黒人や移民達が福祉によって恩恵を受けるのを、白人プロテスタントの差別意識は許さなかったのです。
 クルーグマンは、危機に直面したアメリカ経済が息を吹き返すためには、大企業や金持ち優遇の政策を改め、経済格差を小さくする政策をとるべきだと主張します。具体的には、国民皆保険を実現すること(アメリカでは、40%もの人が保険料が高すぎるために医療保険に加入していない)、ブッシュが導入した金持ちへの優遇税制を廃止すること、累進課税を強化すること、最低賃金を上げること、労働組合を弱体化する法律を廃止することなどを主張しています。
 実感なき景気拡大が終焉したとき、外需依存の日本経済がとても脆弱なものであることを、私たちは認識せざるを得ませんでした。内需の拡大を通して日本の経済を活性化させていくためにも、働いている人の福祉と労働条件を向上させ、経済格差を少しでも小さくしていく政策を取っていくことが、日本でも必要なのだと思いました。クルーグマンのような経済学者が、日本にもでてこないかな。