1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「変貌する民主主義」(森政稔)

2008-07-21 17:45:34 | 
 「変貌する民主主義」(森政稔)を読みました。むつかしい本でした。著者の言いたいことの十分の一も理解できていないのだろうなぁと思いながら、感想を書いています。読後に残された問いが、僕にとっては、あまりに大きすぎるのです。
 この本を読んでまず思ったのは、「民主主義」という言葉が、とてもあいまいで不確かなものであると言うことでした。自由民主主義、社会民主主義、プロレタリア民主主義、議会制民主主義、熟議民主主義などなど。このような多様な民主主義の存在こそが、社会の変化の中で、民主主義という思想が変貌してきたことのあらわれであるのです。
 著者は、この本を書く目的として、「2005年の総選挙における小泉政権の大勝利があり、新自由主義が民主主義に落とす影について考えてみたい」と述べています。この本を読むと、新自由主義の台頭によって、民主主義が大きな変貌と存続の危機に直面していることがとてもよくわかります。
 自由という名による規制の緩和と非政治的領域である市場の拡大、それにともなう公的政治領域としての民主主義の格下げと縮小。郵政民営化を争点とした選挙で、ポピュリズム的手法によって勝利した小泉政権が、その後のイラクへの派兵など、保守主義政策の強行採決で推し進めた民主主義の破壊。フセイン独裁政権からイラク民衆を解放するという大義の下に行われたイラクへの侵攻で、当事者であり、悲惨と苦痛をもっとも引き受けなければならなかったイラクの民衆が、その決定に参加することすらできなかったという民主主義の空洞化などなど。
 新自由主義が落とす影とともに、現在、民主主義に変貌を迫っている問題として、筆者は、多数決による決定を原理とする民主主義が、少数者や弱者の声を切り捨てずに、どう尊重していくのかという課題と、民主主義の主体という時の主体そのももが不確かなものになっている(私とは何か?自己とは何か?)という問題を上げています。
 で、読後に大きな問題が残るのです。民主主義が直面しているこのような問題に対して、私たちはどうすればいいのだろうか?社会と政治を変革する不確かな主体である私たちが、少数者の願いや声を尊重しながら、つくりだす民主主義とはどのようなもので、どのようにすれば可能となるのか?
 大きすぎるなぁ、僕には、この問題は。