川本ちょっとメモ

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米誌TIME「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた大坂なおみさん 7つの試合と7枚のマスクにこめた心

2020-11-05 22:40:52 | Weblog


今年2020年9月22日、アメリカ「TIME」誌が今年も「世界で最も影響力のある100人」を発表しました。日本からはテニスの大坂なおみさんとジャーナリストの伊藤詩織さんが選出されました。

大坂なおみさんは、テニス全米オープンで今年2年ぶりに2回目の優勝を手にしました。しかしこの全米オープン優勝をたたえて100人のうちの1人に選ばれたのではありません。

おりしも全米オープン前の今年の夏は、白人警官による情け容赦のない無謀な黒人殺害の現場映像が、テレビニュースで日本の私たちにもくり返し伝えられました。

大坂なおみさんは「Black Lives Matter 黒人の命は大切だ」ムーブメントに共感していましたが、白人警官が従順な黒人男性の背に容赦なく数発銃撃した映像にはとりわけ衝撃を受けました。

彼女は8月27日、ツィッターに書き込みました。Before I am a athlete, I am a black woman.  ――大坂なおみさんはこのとき、非難やスポンサーの反発など予見できる逆風に抗してでも、1試合ごとに黒人犠牲者の名前を1人づつ記したマスクをつけて犠牲者の命を明るみに出すことによって、「Black Lives Matter 黒人の命は大切だ」を人々に訴え、差別・蛮行をする側に抗議する決心をしたのです。

1試合ごとに記された犠牲者の名は次の通りです(時事通信、buzzfeed)

  1回戦 ブレオナ・テイラーさん(当時26歳)
  2回戦 イライジャ・マクレーンさん(当時23歳) 
  3回戦 アマード・アーベリーさん(当時25歳) 
  4回戦 トレイボン・マーティンさん(当時17歳)
  準々決勝 ジョージ・フロイドさん(当時46歳)
  準決勝 フィランド・キャスティルさん(当時32歳) 
  決 勝 タミル・ライスさん(当時12歳) 

7枚のマスクをつけて全米オープンに臨むことを、大坂なおみさんは試合前に公表しました。7枚のマスクをすべてつけ終わるには、優勝しなければなりません。大坂なおみさんは7つの試合に7人の犠牲者の名をまとって臨むことを自分の使命として課しました。

予見できる世間からの逆風と、果たして優勝できるのかという二つのリスクを自分に課した勇気、そしてそれをやりきったことに多くの賞賛が集まりました。

時事通信2020年09月13日14時57分は次のように伝えました。


〈時事通信2020年09月13日14時57分〉

大坂選手の行動を、米タイム誌(電子版)は「大坂のマスクはアスリートの強力な抗議の手段」、米スポーツ専門局ESPN(電子版)は「優勝トロフィーを手に入れるより、はるかに大きなこと」と報じた。大会中には被害者遺族から、行動をたたえるメッセージも受け取った。


BuzzFeed 2020年9月14日は次のように伝えました。


〈BuzzFeed 2020年9月14日〉

米ニューヨークで、テニスの世界4大大会の1つ「全米オープン」が開かれた。新型コロナウイルスの影響で無観客開催となった会場には、「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」と書かれた幕が掛けられていた。

 女子シングルスの第4シードで出場した大坂なおみ選手は、見事に優勝を果たした。全米オープンのタイトルを獲得したのは2度目となる。

 大坂選手は人種差別への抗議を示すマスクをつけて試合会場に現れ、世界中から注目を浴びた。今大会では1試合ごとに、警察の過剰な暴力行使の犠牲となった人々の名前が書かれたマスクを披露すると宣言していた。

ウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性が警官に銃撃された事件を受け、全米オープンの前哨戦となる大会では、一度は棄権を表明していた。全米オープンで大坂選手は優勝までの7戦を勝ち抜き、7枚のマスクをすべて着けることができた。

 7枚のマスクに名前があった7人は、なぜ亡くなったのか。なぜ、その名を語り継がねばならないのか。それが今回、大坂選手が伝えたかったことの一つだ。


日経ビジネス 2020年9月29日に記事を書いた河合 薫氏(健康社会学者Ph.D.)は次のように賞賛しています。


〈日経ビジネス 2020年9月29日〉

大坂選手の勇気ある行動には感動し、力をもらった。 推薦者ムーア氏が指摘した通り、「信じられないほどの強い意思」なくして成し遂 げられることではなかったと思う。だって、「7枚のマスクを用意した」と初戦で公言したのだ。決勝戦に出場しない限り、7人の名前が世界に発信されないのだ。


日テレNews24 2020年9月28日18:25 は全米オープン準決勝戦マスク「フィランド・キャスティルさん(犠牲当時32歳) 」の母親バレリー・カスティールさんと、決勝戦マスク「タミル・ライス君(犠牲当時12歳) 」の母親サマリア・ライスさんのインタビュ―映像を伝えました。

フィランド・キャステルさんは2016年7月6日、警官に射殺されました。彼は、車のテールランプが壊れていたことを理由に停止を命じられ、自分は銃携帯の許可証を持ち銃を携帯していると警官に告げて財布に手を伸ばしたところ、撃たれました。同乗していた婚約者のダイアモンド・レイノルズさんは、Tシャツのそでや胸部付近から大量の血を流し、のけぞった姿勢でうめき声を上げるカスティールさんと銃撃する警官の姿を証拠撮影しました。後部座席にはレイノルズさんの4歳の娘が乗っていました。

この事件には報復の悲劇がありました。後日、テキサス州ダラスでフィランド・キャステルさん射殺事件抗議集会があり、何者かが、警備についていた警官5人を射殺しました。(CNN日本版2016.07.08 Fri posted at 17:06 JST )

タミル・ライス君は2014年11月22日、銃を持った男が徘徊しているという通報を受けて出動したパトカーが現場到着。降車した警察官が銃を構えて歩み始めたところ、タミル君も模造銃を持って警官の方に歩み始めたところ、警官が銃撃し、翌日、搬送先病院で死亡しました。(AFP日本版2014年11月27日 13:01 発信地:クリーブランド/米国 )


〈日テレNews24 2020年9月28日18:25〉

 
フィランド・カスティールさんの母親
 バレリー・カスティールさん


 私の息子は銃を所持する免許を持っていたので、警官に「自分が車の中に武器を持っている」と伝えたのです。

 それでも警官は、「何も取り出すな」と怒鳴りつづけたんです。息子は過去に60回以上も職務質問を受けたことがあるので、警察が求めることがわかっていたんです。

 パトカーのライトを見て、警官が自分の免許証を見たがるだろうと察したんだと思います。その車の中には女性も子供も乗っていて、息子が「何をするって言うんですか。武器を持っていることをきちんと伝えたじゃないですか」と言ったのに、殺されたんです。

 しかしその後警官には無罪判決が‥‥。

 私の息子は人々の見本となる指導役で、小学校のカフェテリアで働いていました。生徒の名前はもちろん、誰がどんなアレルギーを持っているかも覚えていました。

 朝は早く仕事に行って、障害がある子供がバスに乗るのを手伝う良い人間でした。こうして話すことも、息子がいないことも、そのすべてが現実ではないようです。私にとって辛いものです。しかし私は語りつづけなければいけないのです。

 警察がどれだけまちがったことをしたのか、皆さんに知っていただきたいからです。


 
タミル・ライス君の母親
サマリア・ライスさん
 
 タミルは12歳のときにオハイオ州クリーブランドで、2人の警官に殺されました。あの日、自宅の玄関先に近所の子供がやってきて、「おばさんとこの子が銃で撃たれた」と言ったんです。

 現場に近づくと、娘がパトカーの後部座席で叫んでいて、16歳の息子は8人の警官に囲まれていました。そして目の前には、タミルが警官の横で地面に倒れていたんです。撃たれたきっかけは、おもちゃの銃を持っていたこと。

 目を離したすきに外をふらつく子供もいますが、タミルはそういう子ではありませんでした。公園でおもちゃの銃を使って遊んでいただけなんです。タミルが悪いことをしていたようには見えませんでした。

 なぜ亡くならなくてはならなかったのか、私にはわかりません。

 彼女が自分の舞台を使って「タミル・ライス」の名前をマスクにつけて出てくれたことに感謝します。本当に特別で、力強い発言だわ。私たちを気にかけてくれて、私たちや私自身を信じてくれて感謝しています。

 これからも逆風があるかもしれないけれど、信念のために戦いつづけてほしい。彼女に心からお礼を言います。



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