昨日のホセ・カレーラスの「酒とバラの日々」に続いて、今日はルイス・パセッティが歌う「慕情:Love is a many splendored thing」です。作詞:Webster Paul Francis 作曲:Fain Sammy オリジナルの歌唱はアンディ・ウィリアムスでしたよね。
率直に言えば「慕情」の方が「酒とバラの日々」よりもクラシックの声楽家には向いていると思うのですが、如何でしょうか。最近でこそクラシック・クロスオーバーと言われる音楽分野が認知されたり、オペラとヘヴィーメタル・ロックンロールとの両刀使いの歌手が現れたり、クラシックに対するハードルも案外と低くなっているのかも知れないとも思います。
日本のポピュラー音楽の作品の中にも、クラシックの歌曲と並べても引けをとらない作品が少なく無いと思っています。沖縄民謡(?)の「芭蕉布」は日本歌曲と言っても何ら問題ないと思っていましたが、実は第二次大戦後のラジオ歌謡の中から生まれた曲とのことですね。1960年代からのフォークソングの王と言っても良いと思う吉田拓郎氏の「襟裳岬」も、ベル・カント唱法で歌っても聴き応えのある作品ではないかと思っています。小林旭氏が歌った「北帰行」や「惜別の歌」も。そう言えば昭和歌謡を牽引した藤山一郎氏は歌謡曲は”藤山一郎”の芸名でテノールとして歌い、正統派のクラシック歌手としては本名の”増永丈夫”でバリトンとして活動されていたんですよね。その頃の作曲家としては歌謡曲も多数作曲している高木東六氏はパリに留学してヴァンサン・ダンディに師事しているんですね。
大分横道にそれてしまいましたが、クラシックの声楽家にとって歌う頻度の高いポピュラー音楽の作品と、殆ど歌うことのないポピュラー音楽の名曲と、明らかに傾向があるのではないかとこの夏悩んで来ました。この「慕情」等はもっとクラシックの声楽家が歌っても良いのではないかと思うその最右翼の作品ではあります。
最後になってしまいましたが、ネットの最大手の動画サイトで、”Love is a many splendored thing”&”Luis Pacetti”で検索して頂ければ音源は直ぐに見つかると思います。ところで”splendored”という英語は無いようですね。常にスペルミスを示す波下線が付いてしまいます。