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生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

Schumann  Dichterliebe Op.48 シューマン 「詩人の恋」   レッスンを受けないと不安症候群

2014-10-22 22:15:26 | シューマン
 シューマン大好きピアニスト氏と、「詩人の恋」を合わせることになっています。私としては全16曲の中から数曲を選んであわせる積りでしたが、シューマン大好きピアニスト氏は当然のごとく全曲をやる積りでした。いよいよこの週末に最初の合わせ練習があります。合わせの時間は1時間なので、先ずは前半の6曲ぐらいを合わせることになっています。

 この曲集は合唱を始めたばかりの高校生の時から、何時かはリサイタルで全曲を歌ってみたいと思っていました。当時も楽譜を買って全16曲譜読みをして歌える様に準備していた様です。あらためて楽譜を確認しました。7番と1番は高校時代から、以降も機会があれば歌える様にと心がけてきています。かつては歌詞も全て暗譜していました。今現在は多少歌詞を忘れている部分もありますが楽譜を見ながらであれば先ず先ず歌えそうです。4番、6番もそれなりに歌えそうです。2番はあまり歌いこんだ記憶はないのですが、楽譜を見ながら音符と歌詞を追って行くと、過去の記憶が蘇ってきます。結構真面目に譜読みしていたんだなと我ながら感心します。5番は歌い手よりもピアニスト氏の方が大変な曲ではないかと思います。短い曲ではありますが最初から最後まで32分音符のアルペジオです。この5番以外に8番も殆どが32分音符のアルペジオです。16分音符が大活躍する曲は珍しくありませんが、ひたすら32分音符のアルペジオで歌を支える歌曲と言うのもシューマンならではでしょうか。

 連作歌曲ですから当然1番から順に16番へと歌い進めます。前奏がある曲もあれば、無伴奏で歌から入り追いかけてピアノが鳴る曲もあります。無伴奏で歌い始めなければならない曲に限って、その前の曲の歌い終わりから音をとりやすい調ではないときています。まあ私はプロでもないし変なプライドもないので、無伴奏で歌い始める曲については伴奏者に歌い始めの音を叩いてもらっても良いとは思っています。それでも音を貰わずに前の曲の歌い終わりなりピアノの後奏なりから音を取れるようになればその方が格好良いとは思っています。

 ところで13番以外は楽譜を眺めていると大昔に譜読み・音取りをしてあるていどは歌える様にしていた記憶が蘇ってくるのですが、13番については記憶が蘇って来ません。思い出せないのではなく思い出すべき記憶がそもそもないのかも知れないと思っています。というのも、13番こそが無伴奏で歌いだすのですが、無伴奏の小節数が多くて、当時あきらめて譜読みをしなかったのかも知れません。また、合唱にしろ声楽にしろ、これまで本番までには必ず指導者のチェックが入っていました。仲間内で互いに聞きあうだけの発表会とは言え、本番に際して指導者にチェックしてもらわずに歌うことにもなりそうです。他人の歌を聞くのと違って、自分自身の歌は体内を通る骨伝導の声も重なるので、自分の歌は自分では客観的に聞くことは出来ません。そうすると急に「詩人の恋」についてもレッスンを受けたくなりました。ところで問題があります。「詩人の恋」はシューマンの作品だけあって、ピアノが無茶苦茶難しい曲が数曲有ります。結構簡単に弾ける曲もありますが、声楽の先生にピアノを弾いてもらいながら見ていただくのは実質不可能と思われる曲が数曲あります。そしてその様な曲こそを見ていただきたいわけです。そうするとどうするかと言えば、ピアニストを別にお願いしてレッスンをしていただくと言うことになります。以前師事していた先生のところでは、音大同窓のご友人のピアニストのご好意でリーズナブルな謝金でレッスン時の伴奏をお願いしました。もう一度連絡をとって「詩人の恋」のレッスンをお願いしてみましょうか。ただその先生は絶対音感の持ち主だから無伴奏で歌いだす曲の歌いだしをどうするかの相談はできません。以前にも他の曲で話題になったことがありますが、その時は「私は絶対音感を持っているから歌えちゃうんだよね。」でした。絶対音感を持っていない身ではどうしようもない問題です。やはり歌いこんで前の曲の歌い終わりなり後奏から音を取る練習をして、どうしても出来なければピアニストに歌いだしの音を叩いてもらうしかないですね。

 それにしても、完成とまでは行かなくても何とか人前で歌うレベルにギリギリ合格、等と先生に言ってもらうことでどれだけ安心できていたか、初めて認識しました。どのみち合わせ練習をする今度の週末までにレッスンを受けることはむりですが、本番までには「詩人の恋」についてのレッスンをうけたいと、今しみじみと思っています。

Heinrich Heine   Robert Schumann  Dichterliebe Op.48 シューマン 「詩人の恋」

2014-08-31 11:45:55 | シューマン
 ピアニストを二つに分けるとすると、一人で独奏曲を弾くのが好きな人と、それだけでは満足できなくて合奏あるいは伴奏にも魅力を感じる人、ということになるのでしょうか。声楽を学ぶ立場からは、ピアノを一人で弾くのが好きな人とはお付き合いする機会は余り無く、発表会等で伴奏をお願いするピアニストとの交流ぐらいしかありません。常に謝礼をお渡しして伴奏して頂く方たちという捉え方になっています。ところで大人の学芸会という集まりにはピアニストの方も複数いらっしゃいます。皆さん合奏がお好きなようで楽しんでいらっしゃるのが伝わってきます。私の歌でも、プーランクを一緒にやりましょうとか、デュパルクが好きだから歌うときは伴奏させて、等と声をかけて頂いており嬉しい限りです。もう一人のピアニスト氏はシューマンがお好きとのことで、それなら「詩人の恋」なら何時でも歌いますとお願いしておきました。

 今から三十数年前、合唱を始めたばかりの頃、先輩達が練習の合間にイタリア歌曲やらオペラのアリアやら歌っている中に「詩人の恋」の第7曲「Ich grolle nicht」もありました。直ぐに自分でも歌うようになっていました。程なく全音の楽譜集も買い、他の曲も譜読みしました。一度で良いから「詩人の恋」全曲を自分で歌うコンサートをやって見たいと、当時から思っていたものでした。

 4年前にテノールの先生の個人レッスンを受けるようになりましたが、その先生が毎年冬に、毎回異なるピアニストを伴奏者に迎えて「詩人の恋」を歌うというコンサートを催されていました。4回異なる伴奏者との組み合わせで同じテノールの先生の「詩人の恋」を聞きました。正直言って一年たつと前年のコンサートの内容はあまり覚えていませんが、それでもピアニストの個性はかなり記憶に残っています。自分が歌うときはこの4人の中だったらこの人にお願いしたい、という方はしっかりと頭の中に残っています。

 ところで自分の先生がこのようにライフテーマとして真剣に取り組んでいる曲を、自分でも歌いたいと表明するのは中々に勇気のいるもので、話の流れで軽いジャブとして曲名を出したこともあり、先生も特に拒絶することも無く要望としては聞いておくよ、ぐらいのノリだったでしょうか。しかしレッスンの曲として取り上げてもらったことはありません。「詩人の恋」に限らず、マーラーの「子供の不思議な角笛」の中の曲を歌いたい、とはレッスンの際にはっきりと申上げたこともありますが、今やると発声が壊れるとのコメント付きで却下されました。まあ、これは当時はその通りだったと自分でも納得しています。

 「詩人の恋」作品48.全16曲からなる連作歌曲。6曲目までが恋の喜びを歌った歌。一転して7曲目からは失恋の歌。この中から2曲選べといわれたら、迷わずに1曲目の「Im wunderschoenen Monat Mai」と7曲目の「Ich grolle nicht」を選びます。しかし1曲だけといわれたらどちらを選ぶかは迷うところですね。シューマンの歌曲はピアノが単なる伴奏の域を超えて重要な役割を果たしていると良く言われているそうですが、その観点からすれば「Im wunderschoenen Monat Mai」ですね。係留音と言うのでしょうか解決しない和音の緊張感が漲っています。一方の「Ich grolle nicht」は左手は2分音符、右手は8分音符で和音を刻むだけの伴奏としてこれ以上シンプルなものは考えられないのではないかと思うほど単純なものです。しかしこれは「Ich grolle nicht」の曲想に合わせてシューマンが敢えてシンプルにしたと思われます。詩も歌もピアノも、「詩人の恋」の中で最も対極的にあるこの2曲であるからこそ、全16曲の中からこの2つを選んで歌う意義があるというものです。この2曲に更にもう少し追加するとなると、第6曲「Im Rhein, im hiligen Strome」、第4曲「Wenn ich in deine Augen seh'」、第5曲「Ich will meine Seele tauchen」、第9曲「Das ist ein Floten und Geigen」、とこの辺りでしょうか。こうしてみると前半の明るい恋の喜びを歌った曲の方が多いですね。第5曲「Ich will meine Seele tauchen」はピアノ伴奏が32分音符のアルペジオで、歌が一音節歌う間にピアノが4つの音を叩くというピアニストにとっては大忙しの曲です。連作歌曲ですからどの曲を歌おうかと悩むよりは、全曲通して歌う機会を持てればそれに越したことはありません。

 余りに有名な曲なので、多数の録音が残っています。果たして「詩人の恋」はテノールが歌った方が良いのか、それともバリトン?、と思い色々と聴き比べたことがあります。誰か一人と言われれば、やはり20世紀が生んだ最高のバリトン、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウでしょう。しかし、特に第1曲の「Im wunderschoenen Monat Mai」だったらペーター・シュライヤーの方が魅力的に感じる部分もあります。ハイ、私が出した結論は前半の恋の喜びを歌った曲はテノールが、後半の失恋の歌はバリトンが歌った方が良い、というものです。誰もが感じる当たり前のことと思いますが、当たり前のことに真理があるということの一例だと思っています。