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生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

Lili Boulanger  Vielle Prière Bouddhique   リリー・ブーランジェ  古い仏教の祈り

2014-11-16 21:18:22 | リリー・ブーランジェ
 良い時代になったものです。インターネットの動画サイトを検索すると様々な音源に巡り会うことが出来ます。リリー・ブーランジェの作品を探していて出会ったのが、「古い仏教の祈り」。テノールの独唱を含む混声四部合唱とオーケストラのための、8分程の作品です。ペトルッチ(IMSLP)のサイトでオーケストラのフルスコアが公開されています。もっとも私にとってはピアノ伴奏のヴォーカルスコア版が公開されているほうが有難いのですが。2分の3拍子で二分音符が46から52のラルゴと指定されています。バスーンの低音とハープと弦五部のロングトーンの上に男女の低声部の詠唱が静かにかぶさって来ます。

 「ファウストとエレーヌ」に比べれば、淡々と物静かに、確かに東洋的な静謐な仏教の祈りを思わせる音響が流れて行きます。それでいて東洋的というよりは普遍性が感じられます。東洋のテキストを歌うオーケストラ作品と言えばマーラーの「大地の歌」が思い浮かびますが、異なるタイプの作品ではありますが、リリー・ブーランジェの「古い仏教の祈り」の方が、色彩感覚に溢れていて人気が出て良い様に思います(私個人としては「大地の歌」も大好きな作品で、歌えるものなら歌ってみたい曲の上位に常にありますが)。

 動画サイトの一つに、コメント欄に英訳が載っているものがありました。著作権を放棄しているかどうか判らないのでそのまま転載することは避け、極々簡単に要約すると以下の様なものでしょうか。




 生きとし生けるもの 敵は無く 妨げるものも無い

 痛みを癒し 幸福を手にする  自由に行動し

 如何なる道を歩もうとも  それが彼に運命付けられている




 是非是非是非、お聴き下さい。 そしてせめてリリー・ブーランジェ没後100年となる2018年には、生で聴いてみたいものです。

Jammes Boulanger  Clairières dans le ciel  フランシス・ジャム リリー・ブーランジェ 空の広がり

2014-11-14 23:59:23 | リリー・ブーランジェ
 すっかりリリー・ブーランジェに嵌まっています。こうやってブログを書いているよりも、詩篇129番のパソコン音源を作りたくてうずうずしています。さてリリー・ブーランジェの独唱歌曲集があります。フランシス・ジャムの詩に曲をつけた「空の広がり」とか「空の隙間」、あるいは「雲の隙間に」・・・、要するに空の一部にぽっかりと全く雲のない領域があって、その部分の空の青さの印象が雲が浮かんでいる他の空の部分の存在感を凌駕している、そんな情景でしょうか。

 幸いなことにペトルッチ(IMSLP)で全13曲48頁の楽譜が入手できます。むしろ音源の方がアクセスするのに大変なようで、動画サイトにも数曲アップされていることを確認したのみです。日本のAmazonではリリー・ブーランジェの歌曲集のCDは見当たりませんでしたが、米国Amazonにはリリー・ブーランジェの歌曲のCDがあったので既に発注しています。しかし送料をケチって普通の船便を指定しましたので届くまでに一月ほど掛かるでしょう。発注したCDも動画サイトで見つけた音源も、いまのところ全てソプラノが歌っているようです。男声が歌っている「空の広がり」はまだ聞いたことがありません。動画サイトの音源を楽譜を見ながら聴いていると、結構音域が高そうです。高音部譜表の五線譜の上に飛び出したAのロングトーンが普通に出て来ます。今の私には少々きついです。そんな中で歌えそうなのが8曲目の「Vous m'avez regardé avec toute votre âme」「あなたはぼくを見た、あなたの魂すべてで」ですね。今の私でも音域的には楽勝で歌えます。かの「梅丘歌曲会館」に全曲の訳が収録されていると共に、管理人氏がシューマンの「詩人の恋」とも対比させて、フランス歌曲の傑作とコメントしています。「梅丘歌曲会館」の管理人氏に最大限の敬意を表しながら詩と、リリー・ブーランジェの「空の広がり」を勉強させて頂きましょう。

Lili Boulanger Psaume 24 129 130  リリー・ブーランジェ 詩篇24番 129番 130番

2014-11-12 22:50:38 | リリー・ブーランジェ
 詩篇24番は3分半程の曲で、オーケストラと合唱による賑やかな作品です。オルフのカルミナ・ブラーナに良く似た雰囲気で、カルミナ・ブラーナの中に紛れ込ませて演奏しても知らない人は気が付かないだろうと思えるくらいです。ペトルッチ(IMSLP)サイトでフルスコアを入手出来ます。良く見るとオーケストラと言っても金管群とティンパニにハープとオルガンと言う編成で木管と弦が含まれていません。

 詩篇129番は詩篇3作の中では不人気作品のようで私が入手したCDには収録されていません。動画サイトでも24番と130番に比べるとアップされている音源数も少なくて、複数あることはありますがどれも同一音源の様にも思われます。ペトルッチサイトではフルスコアは入手できず、ピアノ伴奏版が入手できます。その楽譜の表紙を見るとオーケストラとバリトンのための詩篇129番となっています。音源を聴くと独唱ではなく斉唱に聴こえます。7分半程の曲です。どうもこの曲には異なる版があるのか、オーケストラ版をピアノ版にリダクションする際に大幅に手を加えているのか、伴奏の構成はペトルッチで入手できるピアノ版の楽譜と、動画サイトで聴ける詩篇129番とでかなり違うようです。でもバリトン独唱の作品として高い品格をもった格調高い格好の良い作品です。これは歌いたいですね。詩篇だからラテン語かと思いきや古フランス語なのでしょうか、詩の読み方については研究が必要な様です。さらにオーケストラ作品をピアノにリダクションしたからか、ペトルッチ版のピアノ伴奏譜は通常の2段組の大譜表のところもありますが、3段組になっている箇所も多いです。同時に鳴る音を数えると最大8音の様なので両手の指の数で間に合うことは間に合いますが、どうやっても一人の人間で弾けるキィの分布ではありません。はい、連弾で弾いていただきましょう。大人の学芸会という集まりでは伴奏したいピアニストが余る傾向にありますし、フランス音楽大好き人間も多いので、声をかければ直ぐにこの指に止まってくれそうです。それまではパソコン音源で伴奏音源を作って歌える様にしておかないと、この手の楽譜でもパソコン音源は苦手としないので助かります。この楽譜をレッスンに持って行っていきなり声楽の先生に教えて下さいと言っても、ピアノが弾けない(どうやって弾くのか判らない)からと却下されそうです。

 詩篇130番は前2曲に対して24分程の大曲となっています。バックボーンはロマン派の範疇に入っていると思います。宗教曲としての信仰心も間違いなく存在しています。ロマン派音楽から少しはみ出す程度の現代音楽的なスパイスが結構効いていると思います。ストラヴィンスキーの詩篇交響曲に比べれば余程普通のクラシック音楽愛好家の耳に馴染むと思います。4年後にはリリー・ブーランジェ没後100年のメモリアルイヤーがやってくるので、2018年には詩篇に限らずリリー・ブーランジェの作品が日本においても多数演奏されることを望みます。カンタータ「ファウストとエレーヌ」に詩篇の3曲、それに「ピエ・イエズ」と声楽作品でまとめたプログラムの演奏会を是非是非開催して欲しいですね。聴けるだけ聴きたいと思います。

 様々な芸術の中で女性の進出が最も遅れているのはクラシック音楽の作曲の世界だそうです。クラシック音楽には関心がないけれどジェンダー問題には関心がある、と言う方には多少強引にでも聞かせてみたいと思いますが、無理強いは出来ませんね。

 兎に角何年かかってもリリー・ブーランジェの詩篇129番は必ず歌います。どんな形にせよこの曲を自ら歌ってみるまでは絶対に死にたくない、言い換えればそれだけの生きる力を与えてくれる作品です。嗚呼リリー・ブーランジュ様、貴方に少しでも近づきたいと言う思いを抱えたオジが太平洋の西の端の島国に一人います。

Lili Boulanger  Pie・Jesu   リリー・ブーランジェ   ピエ・イエズ

2014-11-11 23:31:33 | リリー・ブーランジェ
 ピエ・イエズと言えばフォーレのレクイエムの第4曲のソプラノ独唱が有名ですね。ソプラノのコンサートピースとして単独で歌われることも多いと思います。一方でリリー・ブーランジェですが、どんな世界にも愛好者はいるもので、少し調べただけでリリー・ブーランジェもピエ・イエズを残していることが判りました。聞いた印象は浮遊感と言うことの様で、動画サイトで検索するとボーイ・ソプラノを含む複数の音源を聴くことが出来ます。ペトルッチ(IMSLP)のサイトで楽譜を入手できます。歌と弦楽四重奏とハープとオルガンという編成の5分ほどの作品です。

 実はこの作品はリリー・ブーランジェが24歳で亡くなる最後の作品で、病床で姉のナディアに口述筆記させて完成させた作品だそうです。それにしてもこの浮遊感は何なのでしょう。冷たく青く燃える炎とも思いましたが違いますね。自らの死を予感しているはずなのに悲しみとか絶望と言うような感覚は全く伝わって来ません。客観視とでも言うのでしょうか感情の高まりの全く無い徹底した冷静さを感じます。何度か繰り返し聴いているうちに一つのイメージがよぎりました。自分自身が死を前にして幽体離脱して、自分の霊が死に行く自らの肉体を眺めているとしたら、この様な浮遊感になるのではないか、という思いです。

 この曲も私の葬儀の場で流して、遺族に味わって欲しい曲です。というか現時点ではその筆頭に位置する曲ですね。もう一曲は最近紹介したイベールのドン・キホーテの死で、これは自分で録音して音源を残しておきたいと思っています。もう一曲は以前に紹介したアルカンのオウムの葬送行進曲で、この3曲は決まりですね。自分の葬儀にこの曲を流すためにはキリスト教の洗礼を受けなければならないと言われたら、喜んで今すぐ洗礼を受けたいと思います。それほどの存在感のある曲です。もはや背後霊、守護霊の様に私に取り付いて(私がこの曲に取り付いて???)いる、そんな気がしています。音楽との出会いの中で最もカルチャーショックを受けたのがこの曲だと言えるでしょう。

 長らく生で聞いて見たい歌曲の筆頭にシェーンベルクの月に憑かれたピエロが位置していましたが、今はこのリリー・ブーランジェのピエ・イエズを生で聴いて見たいと思っています。日本では演奏機会は殆ど無いのでしょうね。どうなんでしょう、ご存知の方いらっしゃいましたら是非教えて下さい。

 先ずは携帯音楽プレーヤーの中に音源を入れて、興味を持ってくれそうな知人・友人に聞かせて、何とか弦楽四重奏+オルガンあるいはピアノでだれかに歌ってもらいますか。

Lili Boulanger Faust et Hélène  リリー・ブーランジェ  カンタータ 「ファウストとエレーヌ」

2014-11-10 21:42:43 | リリー・ブーランジェ
 インターネットのオークションサイトでCDの声楽ジャンルを漁るのが日課になっています。ふと目について入札し、競合することなく最初の入札額で落札できたのがリリー・ブーランジェのカンタータ「ファウストとエレーヌ」です。

 Wikipediaによるとリリー・ブーランジェは音楽家の一家に生まれたものの、生まれつき体が弱く医師に短命を予告されていたとか。そしてその通り24歳で亡くなっています。わずか4歳の時に姉についてパリ音楽院の講座にもぐりこみ音楽を吸収したとか。ラヴェルが取れなかったローマ大賞を19歳で、しかも女性としては初めて獲得したそうです。そのローマ大賞受賞作品がカンタータ「ファウストとエレーヌ」です。30分程のオーケストラ作品で、エレーヌをソプラノが、ファウストをテノールが、メフィストフェレスをバスが歌っています。1913年に作曲された曲ですが、現代曲と言うよりはロマン派の範疇に入る曲の様に聞えます。初めはメフィストフェレスとファウストのやり取りですが、途中でファウストとエレーヌが「ラムール」「ラムール」と歌い交わしているので、愛を歌い上げていると思います。聞くものを引きずり込む大きな引力のある曲です。集中して聴くことを強いる曲です。だからこその名曲だと思います。クライマックスの頂点へと畳み掛けるところ等は作曲技巧を十分に身につけていると思います。舞台の道具立てを用意して歌い手が衣装をまとって小芝居しながら歌えばそのままオペラになる気がします。

 何故日本でもっと認知されないのが不思議です。フランス語の声楽作品だからでしょうか。微力ながらせめて私としても精々宣伝させていただきたいと思います。Wikipediaの写真は正面からのモノクロ画像で少し怖い印象を持ちますが、動画サイトを見ると様々音源がアップされていて、その中には本人のものと思われる写真が貼られているものもあります。彫りの深い端整な意志の強さを感じる美人だと思います。その音楽と共にリリー・ブーランジェの面影を私の理想の女性にさせて頂きましょう。