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欧州リーグの事情17

2021-05-06 00:01:00 | サッカー(J3以下・外国・他カテゴリ)

 リスペクトコラムです。
 先日、いわゆるお蔵入りになったESL(欧州スーパーリーグ)騒動ですが、あれで終わったのかと思ったら、その後も次々とその背景を含めて報道が流れてきます。世の中とずれた一騒動でしたが、実は根の深い込み入った社会問題が含まれていました。欧州流対米国流ではありますが、サッカーとは何か、どこを見て興行するべきなのか考えさせられる重たいテーマのようです。
 先日のDAZN「やべスタ」の終了際に「英プレミアリーグの優勝争いを左右するリバプール対マンUの試合が、この後すぐ配信されます」とアナウンスしていたのですが、翌朝にサポーターの暴動で中止と聞き、ビックリでした。
   
【〝赤い悪魔〟のサポーターが大暴走 欧州スーパーリーグ構想合意への抗議でリバプール戦延期】
「2日(日本時間3日)に行われる予定だったイングランド・プレミアリーグで、マンチェスター・ユナイテッドのサポーターがリバプール戦の前にスタジアムに乱入するなどの騒ぎを起こしたため、試合が延期される事態となった。
 もともとこの試合は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため無観客で開催されることになっていたが、試合前から1000人以上のサポーターが本拠地オールド・トラフォードに集結。欧州スーパーリーグ(ESL)構想に合意したクラブオーナーのジョエル・グレーザー氏やその一族に対しての抗議活動を行い、警察ともみ合いになった末にスタジアム内になだれ込んだ。その際、ゴールポストによじ登ったり、機材を破壊する者もおり、クラブ側は安全確保が困難と判断して、試合の延期を決めた。サポーターの一部は選手が滞在するホテルにも集まり、選手たちは身動きが取れない状況にもなっていたという。
 ESLへの参加を表明していたマンUだったが、サポーターや関係者の猛反発を受けてすぐに撤退を表明。だが、以前からグレーザー一族への不満を募らせていたサポーターは抗議活動をやめず、辞任を求める動きは過激さを増している。4月28日にはクラブのエド・ウッドワードCEOの自宅がサポーターに荒らされるという事件も起こっている。」
引用:東スポWEB

 暴動は良くないと思いますが、マンUのサポーターも我慢できなかったのでしょうか。05年にマンUを買収したグレーザー一族には当初からファンが反発していたようですね。長年にわたってため込んでいた不満がESL参加で爆発し、クラブが撤退を表明して謝罪した後も辞任要求という形で続いているようです。何か米大統領選の時の時のニュースを思い出してしまいました。
 日本でも過去に暴動ではないですが、各試合会場(各サポーター)でリーグに対して反旗を翻した事がありました。そう、2ステージ制騒動です。当ブログでも忘れもしない大騒動。何年も熱く反対記事を書いたものでした。日本では横断幕の掲示の行動が、外国ではこうなるんだなと認識しました。マンUサポーターは以前からオーナー(一族なんですね)に不満があったと書いていますが、辞任要求まで行っているのか。Jリーグでもいわゆる「オーナー」がいますが、辞任要求というのはちょっとレベルが違いますね。でも、ある意味ストレートでわかりやすい。辞任要求の中にはオーナーの資金力という概念は存在していないんだなと思う。
   
【マンUサポ団体が新たな声明…オーナーに叩きつけた“4つの要求”】
「ファンの抗議活動による試合中止はプレミアリーグ史上初。世界の注目を集めたこのトラブルについては3日、集会を主導していたサポーターズ・トラストがグレイザー会長への公開レターという形でメッセージを発表した。」
「今回起きたことはあなたの家族がオーナーシップを保有していた16年間の集大成だ。クラブは借金と衰退に追い込まれ、われわれはこれまで以上に無視され、見捨てられたと感じている。これまでの16年間、グレイザー家はサポーターズトラストと一度も会話をしたことがなかった。」
「その上で『前進する方法を見つける必要がある』と主張するサポーターズ・トラストは以下の4点を求めている。
1.政府が先導しているように、サッカーをファン主導な形に見直すよう積極的かつオープンに取り組み、オーナーシップ構造をサポーターに利益があるものに変えていくこと。
2.株主ではなく、クラブの利益を守ることをただ一つの目的とする独立した取締役をただちに取締役会に任命すること。
3.マンチェスター・ユナイテッド・サポーターズ・トラストや個々のサポーターと幅広く協力し、グレイザー家が保有する株式と同様の議決権を持つ株式スキームを誰もがアクセスできる形で導入すること。またもしもサポーターからの強い要望があれば、グレイザー家の持ち数が少数派になったり、完全に買い取られることをも歓迎し、反対しないこと。
4.われわれが参加する大会も含めたクラブの将来に関わる重要な変更については、シーズンチケットホルダーとの十分な協議にコミットすること。
 サポーターズ・トラストはこれらの4点について、金曜日(5月7日)までに返答することを要求。「これがこの問題を前進させる唯一の方法だ。やってみることを強く要望する」としている。」
引用:ゲキサカ

 このコラム内容ってすごいと思います。中身が濃過ぎます。この要求はオーナーよりもサポーターが強い事を主張している内容です。オーナーがどれくらい高額の資金を負担しているのか、オーナーシップ構造も、ビジネス上の株式スキーム、株主の権利も関係ないと書かれてあります。この流れが英国政府も先導している一面がある事もまた趣深いです。底辺のファン・サポーターから王室まで貫かれた考え方というのは無敵でしょう。
 サポーター側と16年間会話をした事が無かったという部分も気になりました。当ブログでもサポカンの重要性を長年唱えていますが、1回やって大きな声を出されて、その後ずっと実施しないというどこかであった事例と構造は同じに思えました。やっぱ体質が米国流なのかもしれないと。
 このコラムに出てくる「株主が一番」「ファン主導ではない形」が米国流に思えます。「オーナーシップ構造をサポーターに利益があるものに変えていく」「オーナー保有の株式と同様の議決権を持つ株式スキームを誰もがアクセスできる形で導入」「要望で、オーナーの持ち株数を減らしたり、完全に買い取る事を認めさせる」「クラブの将来に関わる重要な変更があれば、シーズンチケットホルダーとの十分な協議にコミット」とありますが、すごいですね。日本ではそこまでは考えられませんが、いくつかでも実現すれば、影響が他クラブ、他国に広がって行き、現在の巨大マネー構造に一石を投じて健全化するかもしれません。そして、そういう部分を理想視していた日本勢の今後の動きにも影響が出る可能性があるし、健全化であれば当ブログも大歓迎ですね。

【魅惑収益、招いた見切り発進 猛反発で早々頓挫―欧州サッカー連載企画(上)】
「◇CL上回る収益
 SLは入れ替えのない15の「創設クラブ」を含む20チームで争われ、1次リーグと決勝トーナメントを8月から翌年5月の平日に実施する計画だった。ビッグマッチが増え、現行の欧州チャンピオンズリーグ(CL)を上回る収益が見込まれた。」
「欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する欧州CLの賞金総額は約20億ユーロ(約2600億円)だが、SLが初年度にクラブに支払う金額は桁違いの100億ユーロ(約1兆3000億円)。米金融大手JPモルガン・チェースによる莫大(ばくだい)な支援や増額が見込まれる放映権料は、オーナー陣にとって魅力だった。
 しかし、最大の過ちはサッカー界の合意がないまま見切り発車したことにある。SL創設の発表後、UEFAだけでなく国際サッカー連盟(FIFA)や各国協会、リーグが次々と反対の意思を表明。英国では政府が介入し、創設を阻止する動きまで見せた。」
引用:時事ドットコム

 ここでは最大の過ちは「対話」「協議」が無かった事とあります。サポーター側との会話もそうですね。最初聞いた時はてっきりFIFAやUEFAも賛同していると思っていましたが、スルーしていたのか。そりゃダメでしょう。なぜならサッカーのピラミッドの頂点にあるのはそれらの組織。親方(政府も介入しているし)に歯向かってはダメかな。「お金」だけを武器にして主張しても、そりゃ勝てない。お金のピラミッドの頂点は消費者(ファン・サポーター)であり、「お客様」を敵にして戦ってもそりゃ勝てる訳がない。どの道無理がありました。後者の部分ですが、日本では過去に2ステージ制騒動という形で終焉しましたが、再び過ちを繰り返さないようお願いしたいところ。

【残した火種残したSL構想 問題点も浮き彫りに―欧州サッカー連載企画(下)】
「新大会「欧州スーパーリーグ」構想が反発を受けた理由は、各国リーグ戦の価値を下げ、サッカーの伝統から逸脱していたからに他ならない。」
「(現在は)どのチームにも欧州の頂点をつかむチャンスがある。番狂わせはスポーツが持つ醍醐味(だいごみ)の一つだ。しかし、SLは創設15チームが固定され、残りの招待枠は5だけ。多くのチームにとっては欧州の大舞台とのつながりがほぼ絶たれ、国内リーグはタイトルを争うためだけの存在になる。」
 SLをめぐる騒動が浮き彫りにした問題点もある。欧州CL出場チームは1990年代半ば以降、16から24、32と段階的に増えた。さらに欧州サッカー連盟(UEFA)は2024~25年シーズンから36チームに拡大すると発表したばかり。UEFAランキング下位国まで裾野は広がる一方で、近年は実力差がはっきりし、見応えに欠ける試合も目立つ。スペインのマルカ紙が約20万人を対象に行ったアンケートでは、約41%がSL創設に賛同。「量より質」を求めるファンの声は根強い。
 SL構想は以前からくすぶっていた。今回は失敗に終わったものの、新型コロナウイルスの影響による財政難は現在進行中で、火種は残ったまま。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は「UEFAは生き延びたが嵐は終わっていない」と、欧州サッカー界が新たな財源を必要としている現実に変わりはないと指摘した。」
引用:時事ドットコム

 ウィンウィンではなく、「ウィンはわしらだけでええんじゃ」という発想がダメだったのでしょうね。ちょっと例えがずれているのかもしれませんが、今の大河ドラマ「晴天を衝け」の渋沢氏も「みんながウィンウィン」という思想があったからこそ、あれほどの成功を収めているのでしょう。読者の皆さんにお勧めします。
 欧州CLの肥大化はそのままJリーグのチーム数の増加、欧州CLの増えたチーム数による見応えに欠ける試合は、そのままJ1の増えたチーム数による見応えに欠ける試合にダブって映ります。気になるのが欧州と日本は逆になっている点。日本は協会やJリーグがメガクラブの出現やプレミア化を自ら推進している風潮がある。J1の下半分、J2以下のクラブは反対の立場のはず。ファン・サポーター、地方クラブ不在の論理が闊歩しようとしています。それでいいのでしょうか。今回のリバプールの事例は米国流に対して、欧州流が激しく跳ね付けた格好です。もし今後日本にも米国流がはびこる動きがあったら跳ね付けないといけませんね。
欧州スーパーリーグ騒動関連②:https://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20210424
  〃          ①:
https://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20201023
#がんばろう日本 #ThankYouHealthcareWorkers #ThankYouCaregivers 

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