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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】どこか懐かしい「アドバルーン」

2023年11月17日 | 気まぐれ写真館

2023.11.17


【新刊書評2023】10月の書評から 

2023年11月17日 | 書評した本たち

庭のもみじ 2023.11.16

 

 

【新刊書評2023】

週刊新潮に寄稿した

2023年10月の書評から

 

 

塚田穂高、鈴木エイト、藤倉善郎:編著

『だから知ってほしい「宗教2世」問題』

筑摩書房 1980円

昨年の安倍晋三元首相銃殺事件で注目を集めた「宗教2世」問題。宗教や新宗教、カルトだけでは括れない、実に多面的な課題を含んでいる。本書は「分析・対策編」と「当事者・実践編の二部構成。問題の基礎知識に始まり、なぜ起きたのか、対処はどうするのか、さらに当事者たちの内実にまで迫る。問われているのは宗教の公共性だ。法や制度はもちろん、社会の偏見という難題も考察していく。(2023.08.30発行)

 

今尾恵介

『地図バカ~地図好きの地図好きによる地図好きのための本』

中公新書ラクレ 990円

地図界のレジェンドによる最新エッセイ集。まず語られるのは地図との出会いと惑溺の歴史だ。「お宝地図コレクション」の章には、海ばかりの不思議な地形図や、国境線が現在と異なる旧制中学の世界地図帳などが登場。また地図を愛した先人として、恩師の堀淳一などを挙げていく。紙でもデジタルでも、地図を眺め、何かに気づく楽しみは変わらない。久しぶりに最新の地図帳を購入したくなる。(2023.09.10発行)

 

後藤雅洋『ジャズ喫茶いーぐるの現代ジャズ入門』

シンコーミュージック 2420円

東京・四谷のジャズ喫茶「

いーぐる」。その名物店でジャズ評論家の著者によれば、実は「今どきのジャズ」に関心が薄いのがベテラン・ジャズ・ファンだという。一時、最新のジャズは技術が先行し、個性的表現が希薄になった。しかし現在、新たな活況期に入ったと著者。語り言葉での熱い解説と、現代ジャズの面白さがわかる特選アルバム200枚の紹介で、ジャズ再入門の秋になりそうだ。(2023.09.14発行)

 

阿古真理『おいしい食の流行史』

青幻舎 1980円

著者は生活史研究家。食の流行は「時代を反映」しており、それは「食が人間の営みの基本になっている」からだという。本書は食と暮らしの近現代史だ。幕末の「獣肉食」ブームに始まり、明治期におけるパンとの出会い、大正時代の「三大洋食ブーム」、さらに高度経済成長期の「台所革命」などが語られていく。各時代の政治体制や経済的環境が、食文化に及ぼす影響の大きさに驚かされる。(2023.09.06発行)

 

ホンダ・アキノ『二人の美術記者~井上靖と司馬遼太郎』

平凡社 2640円

新聞記者時代、美術と宗教を担当したことで共通す2人の作家。人は職業や役割にどれほど影響されるかという疑問を出発点に、彼らと美術の関係に迫るノンフィクションだ。一時は美術評論家を目指した井上を、司馬は「誰も持たない美についての微妙な作用ができる天分」と評した。井上が憑かれたゴヤ。司馬が惹かれたゴッホ。美術に対する自身の見方を自身の言葉で語る姿勢は両者とも同じだ。(2023.09.13発行)

 

内田 樹 『街場の成熟論』

文藝春秋 1760円

「街場」シリーズの最新刊。著者はまず「ウクライナ機後の世界」を読み解いていく。次に探るのは「沈みゆく社会」としての日本だ。そして、今の日本社会に一番足りないという「成熟」について考察。年齢に関わらず、本来の意味での「大人」を増やす必要があると説く。今、自分たちはどんな状況の中にいるのか。考えるべき課題は何か。また市民として何が出来るのか。立ち止まって考えたくなる。(2023.09.15発行)

 


【気まぐれ写真館】羽田で「ゴジラ」と遭遇

2023年11月16日 | 気まぐれ写真館

「ゴジラVS.デストロイア」(1995年)のゴジラ

羽田空港 第2ターミナル B1階(11月30日まで)


「セクシー田中さん」 秀逸な2人の女性の成長物語

2023年11月15日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「セクシー田中さん」

(日本テレビ系)

秀逸な2人の女性の成長物語

 

ついついクセになるドラマだ。日曜夜の「セクシー田中さん」(日本テレビ系)である。

派遣OLの朱里(あかり、生見愛瑠)は、同じ会社の経理部で働く田中京子(木南晴夏)の秘密を知る。

仕事は完璧な田中さんだが、見た目は地味で暗いアラフォーだ。ところが、彼女にはセクシーなベリーダンサーという別の顔があった。

このドラマ、2人の女性の成長物語として秀逸だ。

子どもの頃から周囲とうまく交わることが出来ず、自分を封印しながら生きてきた田中さん。真壁くんと名づけたハムスターと暮らしており、毎日のルティンワークを決して欠かさない。

田中さんが言う。

「ベリーダンスに正解はない。自分で考えて、自分で探すしかない。私は自分の足を地にしっかりつけて生きたかった。だから、ベリーダンスなんです」。

それは自分を解放する魔法だったのだ。

一方の朱里は、誰からも好かれる「愛され系女子」だ。しかし、誰かから「本当に好かれた」という実感がなく、モヤモヤしていた。

また、不安定な派遣の仕事を続ける中で、不幸にならないためのリスクヘッジばかりを意識してきた。他人にどう思われようと気にしない田中さんに接する「推し活」で、朱里は徐々に変わっていく。

原作は芦原妃名子の同名漫画。好アレンジの脚本は「ミステリと言う勿れ」などの相沢友子だ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2023.11.14)


【気まぐれ写真館】「白金台」散歩

2023年11月14日 | 気まぐれ写真館

 


『ブギウギ』羽鳥(草彅剛)が、スズ子(趣里)に伝えた「バドジズのこころ」とは?

2023年11月13日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

『ブギウギ』羽鳥(草彅剛)が、

スズ子(趣里)に伝えた

「バドジズのこころ」とは?

 

NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ブギウギ』の東京編が始まりました。

1938(昭和13)年となった第6週。

24歳のスズ子(趣里)は、22歳の秋山(伊原六花)と共に東京へとやってきました。

スズ子のモデルである笠置シヅ子の上京も、同じ昭和13年でした。

第6週の大きな見所が、「梅丸楽劇団」の音楽監督である、羽鳥善一(草彅剛)との出会いです。

羽鳥のモデルはもちろん、笠置シヅ子にとって音楽のパートナーであり、プロデューサーともいえる、作曲家の服部良一。

笠置シヅ子と服部良一の出会い

服部良一と笠置シヅ子が初めて向き合ったのは稽古場でした。

シヅ子の評判を聞いていた服部は、どんなプリマドンナが来るのかと、大いに期待していたそうです。

ところが服部の自伝によれば、現れたシヅ子は・・・

「裏町の子守女か出前持ちの女の子のようだ。まさか、これが大スターとは思えないので、ぼくはあらぬ方向へ期待の視線を泳がせていた」

すると・・・

「笠置シヅ子です。よろしゅう頼んまっせ」と、「目の前にきた、鉢巻で髪を引き詰めた下りまゆのしょぼしょぼ目」が挨拶したのです。

「ぼくは驚き、すっかりまごついてしまった」と服部。

オフステージのシヅ子は、何も飾らない自然体の女性でした。

ところが、その後の稽古で、服部は驚愕します。

3センチもある長いつけまつげの目を見開き、大きな口をあけて歌うシヅ子は別人でした。

その抜群のスウィング感に、「なるほど、これが世間で騒いでいた歌手か」と納得します。

服部良一と笠置シヅ子という、戦前ジャズ・ソングの「最強コンビ」誕生の瞬間でした。

羽鳥が、笑顔で「千本ノック」

ドラマでは、羽鳥による特訓が描かれました。

スズ子が歌う『ラッパと娘』には、まだ羽鳥が狙うような「スウィング感」がなかったからです。

つまり、羽鳥流の「ジャズ」になっていない。

「なんだか聴いててあんまり楽しくないぞお。ジャズは楽しくなくちゃ」

羽鳥は、笑顔で(!)スズ子を追い込んでいきます。

「ワクワクしないんだよなあ」と、何度も何度もやり直し。まるで千本ノックです。

「バドジズできればいいんだよ」と言われても、スズ子にはよくわかりません。

「バドジズ……ってどういうことなんでっか?」と訊ねますが・・・

「そんなの知らないけど、今の福来くんはぜんぜんバドジズしてないよねえ」

バドジズしなきゃ、ジャズじゃない!?

このバドジズ、『ラッパと娘』の歌詞にあるんですね。

 

楽しいお方も 悲しいお方も

誰でも好きな その歌は

バドジズ デジドダー

この歌歌えば なぜかひとりでに

誰でもみんな うかれだす

バドジズ デジドダー

(『ラッパと娘』作詞・作曲:服部良一、歌:笠置シヅ子)

 

「僕は福来くんが最高に楽しく歌ってくれたら、それでいいんだけどね。今、楽しいかい?」

こうした言葉の中から、服部良一その人ともまた違う、羽鳥善一の「人物」と「音楽」が立ち上がってくるようです。

大事なのは、自分に正直になること。自分の感情を思うままにぶつけること。

スズ子が、羽鳥に喧嘩(けんか)を売るような発声で歌ってみると・・・

「なんだか少しだけ、ジャズっぽくなったじゃない」と羽鳥。

スズ子にも、何かが、少しずつ、見えてきたようです。

「スウィングの女王」へ

そして、「梅丸楽劇団」旗揚げ公演の初日。

舞台の上を激しく動き回りながら熱唱するスズ子に、観客は大興奮です。

『ラッパと娘』がフルコーラスで披露されましたが、趣里さんに笠置シヅ子が「降りてきた」と言ってもいい、圧巻のステージでした。

この公演の成功で、「スウィングの女王」と呼ばれるようになったシヅ子、いえ、スズ子。

羽鳥との最強コンビによる、怒濤の快進撃が始まったのです。

 


【気まぐれ写真館】「羽田空港ベストビュードライブ」

2023年11月12日 | 気まぐれ写真館

 

 

はとバス「羽田空港ベストビュードライブ」に参加

 

許可された車両のみが走行できる

「空港制限区域内」を約70分間走行します。

 

途中、

制限区域内でバスから降りる時間を約10分間、

滑走路付近への停車を約10分間行います。

 

羽田空港を新たな角度から

ダイナミックに体感。

 

一般には

立ち入ることができない

「制限区域内」に降り立つことは

まさに「希少体験」で、

ヒコーキ好きには

堪らないツアーでした。

 

 

 2023.11.11


【新刊書評2023】9月後期の書評から 

2023年11月11日 | 書評した本たち

庭で見つけた枯葉

 

 

【新刊書評2023】

週刊新潮に寄稿した

2023年9月後期の書評から

 

 

村上謙三久『いつものラジオ~リスナーに聞いた16の話』

本の雑誌社 2090円

機能はマスメディアでありながら、極めて私的なメディアでもあるラジオ。出演者や制作者をめぐる本は多いが、本書の主役はリスナーである。伊集院光と爆笑問題の番組は聴き逃さないトラックドライバー。ラジオに投稿する「ハガキ職人」出身のお笑い芸人。そして就職、転職、結婚、出産を経験した日常に、いつもAMラジオがあったというデザイナーなど16人。本書全体が“読むラジオ”だ。(2023.08.10発行)

 

八木 毅『実相寺昭雄の冒険 創造と美学』

立東舎 2750円

十七周忌となる実相寺昭雄監督。本書は監督本人と作品に直接関わってきた人たちへのインタビュー集だ。撮影監督の中堀正夫は、極端なアップや斜めの構図といった「実相寺アングル」について、「(画面が)歪むことを上手に使う」手法だったと回想する。また俳優の寺田農は「余人の解釈を許さないところが天才の天才たるところ」と語る。「非常識こそ良い」を貫いた実相寺の面目躍如だ。(2023.08.25発行)

 

木下龍也、鈴木晴香『荻窪メリーゴーランド』

太田出版 2200円

虚構と現実の間を巡行する、言の葉たちのメリーゴーランド。気鋭の歌人2人が描く、短歌によるラブストーリーだ。「会っているあいだは途切れるからまだLINEは会えたことを知らない」「脱がすときわずかに腰をベッドから浮かせてくれるやさしさが好き」「死んでないなら許せない未読無視ごとポケットに入れて渋谷へ」「おそろいのコップがひとつ欠けていて残ったほうをわざと落とした」(2023.09.01発行)

 

五木寛之『新・地図のない旅Ⅱ』

平凡社 1650円

地方紙連載のエッセイ集、その第2弾。「重いことを軽く、大事なことを日常のなかに」がモットーだ。自身の体との対話は、健康法ではなく「養生」と呼ぶ。またディベートの時代だからこそ、「相槌」の機微を思う。そして何かを横ざまに超える「横超(おうちょう)」を、発想の転換として捉えてみる。日々の細部や些事の奥にある、人生のヒントが何気なく披露されていく一期一会の文章だ。(2023.08.23発行)

 

椎名 誠『机の上の動物園』

産業編集センター 1760円

お土産を見つけるのは旅の楽しみだ。そして帰宅後、それを手にしながらの回想は、もう一つの旅の楽しみである。本書は著者にとって初となる「モノ、道具だけ」に集中した雑文集だ。海外初旅で入手したオムレツ用のフライパンに始まり、日本とは削る方向が違うパタゴニアのカンナ、アマゾンの木製アナコンダ、ベトナムの手縫いネコなど逸品、珍品が並ぶ。非実用的であればあるほど魅力的だ。(2023.08.25発行)

 

三上 延『百鬼園事件帖』

KADOKAWA 1760円

『ビブリア古書堂の事件手帖』の著者による連作短編集だ。舞台は昭和初期の東京・神楽坂。大学生の甘木はドイツ語の内田榮造教授と親しくなった。教授は内田百間の筆名を持つ作家でもあるが、なぜか周辺で怪異な出来事が発生する。形見分けである漱石の背広と『夢十夜』。交流のあった芥川龍之介と『歯車』。作品世界と現実との境界線で遭遇する事件を、百間探偵と学生助手が解明していく。(2023.09.01発行)

 


【新刊書評2023】9月前期の書評から 

2023年11月10日 | 書評した本たち

庭で見つけた枯葉

 

 

【新刊書評2023】

週刊新潮に寄稿した

2023年9月前期の書評から

 

 

アルテュール・ブラント:著、安原和見:訳

『ヒトラーの馬を奪還せよ~美術探偵、ナチ地下世界を往く』

筑摩書房 2640円

かつてヒトラー総統の官邸前にあった一対の馬。ベルリン攻防戦で破壊されたはずの傑作彫刻が70年を経て闇市場に出現した。果たして本物か贋作か。現物はどこにあるのか。オランダの美術調査員である著者の追跡が始まる。ミュンヘン、ブリュッセル、そしてベルリン。行く先々で出会う、ヒムラ―の娘をはじめとする謎多き人物たち。まるでミステリー小説のような、極上のノンフィクションだ。(2023.07.30発行)

 

平山周吉『昭和史百冊』

草思社 2750円

書名に偽りあり。本書に登場する“昭和史本”は百冊ではない。実に四百冊を超えるのだ。構成は「戦前社会」「開戦」「軍部」「天皇」「占領」「日記」など全12章。必読書ともいうべき各ジャンルの“定本”と、著者による“書評本”が紹介されていく。しかも新旧問わず、アカデミズムから自費出版まで選択が幅広い。後世へとつなぐ「バトン」として書いたと著者。昭和史への新たな視座を与えてくれる。(2023.08.02発行)

 

上杉 隆『五輪カルテル』

扶桑社 1760円

五輪運営事業の受注を巡る官製談合。捜査は今も続いているが、ゴールはまだ見えない。本書では五輪問題を10年以上も取材してきた著者が、巨大国家プロジェクトが抱える腐敗の深層に光を当てている。汚職の中心人物、高橋治之元五輪組織委理事とは何者なのか。彼を起用した森喜朗元組織委会長が逮捕されないのはなぜなのか。さらに五輪と神宮外苑再開発の危うい接点にもメスを入れていく。(2023.08.04発行)

 

安西水丸『安西水丸が遺した最後の抒情漫画集 陽だまり』

講談社ビーシー 1980円

イラストレーターであり、小説家、エッセイストでもあった安西水丸が亡くなって9年。晩年に手掛けた読み切り漫画4本を収めたのが本書だ。私生児の主人公が、取り立て屋の老人の愛人である女性と関係をもつ表題作をはじめ、いずれの作品にも独特のエロティシズムが漂っている。また村上春樹や角田光代など6人が回想エッセイを寄稿しており、水丸ワールドを立体的に堪能することができる。(2023.08.21発行)

 

倉本 聰『破れ星、燃えた』

幻冬舎 1980円

昨年の『破れ星、流れた』に続く自伝エッセイだ。ニッポン放送を辞めて独立した著者は売れっ子のシナリオライターになっていく。やがてNHK大河ドラマ『勝海舟』を担当するが、制作側と衝突して北海道へと逃避行する事態に。その内幕も克明に語られている。さらに名作『北の国から』の誕生秘話、富良野塾や舞台への挑戦などが続く。来年には映画の公開も控える、88歳の現役脚本家に拍手だ。(2023.08.25発行)

 

渡部潤一『賢治と「星」を見る』

NHK出版 1815円

著者は天文学者だ。宮沢賢治の作品に記された宇宙や星空を巡る文章をベースに、新たな賢治像が描かれる。代表作『銀河鉄道の夜』の舞台は宇宙だ。登場する星や星座に関する記述は深い知識に裏打ちされており、それは他の童話や詩でも見てとれると著者。宗教や農業だけでなく、天文学にも通じていたことになる賢治は、天の川の向こうに何を見たのか。著者と共に探る、2023年宇宙の旅だ。(2023.08.25発行)

 


「メディアと放送」を担当した、『現代用語の基礎知識2024』が発売されました。

2023年11月09日 | 本・新聞・雑誌・活字

『現代用語の基礎知識2024』自由国民社

担当した「メディアと放送」


【気まぐれ写真館】厚木

2023年11月08日 | 気まぐれ写真館

2023.11.08


「うちの弁護士は手がかかる」異能のパラリーガルを梃子に描かれる人間ドラマ

2023年11月08日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「うちの弁護士は手がかかる」

(フジテレビ系)

異能のパラリーガルを梃子に

描かれる人間ドラマ

 

ムロツヨシが絶好調だ。

NHK大河ドラマ「どうする家康」の豊臣秀吉で主役を食う怪演、いや快演を見せたが、「うちの弁護士は手がかかる」(フジテレビ系)では、異能のパラリーガルを主役として演じている。

蔵前勉(ムロ)は芸能事務所の元敏腕マネジャー。突然解雇を言い渡され、法律事務所に拾われる。

組んだのが新人弁護士の天野杏(平手友梨奈)。18歳で司法試験合格の天才肌だが、かなり非常識で人とのコミュニケーションが苦手だ。

まったく異なるタイプの2人。その嚙み合わなさから生まれる、絶妙の掛け合いが笑える。

いかりや長介へのオマージュ「ダメだ、こりゃ。次、行ってみよう!」など、スイッチが入った瞬間のムロが繰り出す、どこまでが台本で、どこからがアドリブかも不明なセリフの連射が楽しい。

また、法廷ドラマとしても十分見応えがある。

先週も、女性シンガーソングライターの身代わりで強盗傷害の容疑者となった青年の心情を見抜き、裁判員裁判での逆転を引き寄せたのは蔵前だった。

今期も漫画原作のドラマが多いが、本作は完全オリジナルだ。「競争の番人」の神田優、「元彼の遺言状」の中園勇也などが、実際の事件も参考にしながら起伏に富んだストーリーを練り上げている。

バディ型のリーガルドラマであると同時に、パラリーガルを梃子にして描く人間ドラマだ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2023.11.07)


11月7日、合掌

2023年11月07日 | 日々雑感

2023.11.07

 

 

 

今日

11月7日は、

父の命日です。

 

合掌。

 

 


【気まぐれ写真館】「高速道路の働き者」を目撃

2023年11月07日 | 日々雑感

NEXCO東日本の「 i 光太郎(あいこうたろう)くん」

(バルーン式人型交通誘導安全標識)

 

 


日曜劇場『下剋上球児』の主人公は、高校野球界の「ブラック・ジャック」か!?

2023年11月06日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

日曜劇場『下剋上球児』の主人公は、

高校野球界の「ブラック・ジャック」か!?

 

日曜劇場『下剋上球児』(TBS系)の舞台は、架空の三重県立越山(えつざん)高校。

元高校球児の社会科教師(鈴木亮平)が、弱小野球部を率いて甲子園を目指す物語です。

ドラマと「原案」

このドラマには「原案」があります。

菊地高弘さんが書いた、ノンフィクション『下剋上球児ー三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』です。

2018年夏、実在の三重県立白山高校が甲子園に初出場しました。

過去10年連続で県大会「初戦敗退」だった無名野球部が、なぜ甲子園に行けたのか。

その経緯を、当時の監督や部員たちへの綿密な取材をもとに、浮かび上がらせています。

放送前に思ったのは、弱小チームの甲子園出場という原案の事実をなぞれば、感動的なドラマにはなるだろう、ということでした。

とはいえ、実話がベースである以上、展開や結末が見えているのは否めません。

見る側の興味をどうやって持続させるかが気になっていました。

しかし始まってみれば、それは杞憂(きゆう)だったようです。

菊地さんの書籍はあくまでも原案であり、登場人物の経歴を含むキャラクターやストーリーは、ほぼオリジナルといっていい。

脚本は、『最愛』(TBS系)などの奥寺佐渡子さんです。

「陰影」のある主人公

まず、主人公の南雲脩司(鈴木)には、野球をめぐる苦い過去があります。

かつて高校野球部の主将だった南雲。

勝利至上主義の監督(松平健)に従って勝ち進んだものの、敬遠を多用するなど、周囲からは「卑怯(ひきょう)」とののしられます。

しかも、監督に直訴して、決勝戦では自分たちの思うプレーをしたのですが、試合に負けて甲子園出場を逃したのです。

大学へはスポーツ推薦で進学しましたが、ケガのために中退。

このあたり、高校野球の「ある側面」に触れるだけでなく、主人公に適度な「陰影」を与えています。

南雲はスポーツトレーナーをしていましたが、教員の資格を得るため再び大学に入り、36歳で教職に就きました。

当初は野球部の監督を拒んでいましたが、部長である家庭科教師・山住香南子(黒木華)の熱意や、プレーする部員たちに接し、気持ちが変わっていきます。

鈴木さんは、そんな南雲を丁寧に演じており、いわゆる熱血監督とは異なる人物像が魅力的です。

背負っている「十字架」

驚いたのは、南雲は入り直した大学を、単位不足で卒業していなかったことです。

つまり、「教員免許」を取得していません。

それでも教員になりたかった南雲は、教員免許を偽造して提出し、教壇に立ちました。

そのため注目が集まる監督を固辞していたし、この先は教員自体を辞めようとも思っています。

これは原案にはない要素であり、かなり強烈なドラマ的「設定」です。

南雲は、前述の「適度な陰影」を超える、「重い十字架」を背負っていることになります。

なぜなら、教員免許を持たずに、教員免許を偽造して公立高校の教員になっているとしたら、それは「犯罪」にあたるからです。

たとえば、次のような「罪」が考えられます。

大学が発行する教員免許状の偽造は、「有印公文書偽造罪」。

また、偽造した教員免許状を教育委員会などに提出するのは、「有印公文書行使罪」です。

そして、偽造した教員免許状を使って教職に就き、教員としての給与や待遇を得ていたわけですから、「詐欺罪」にもなるでしょう。

南雲先生、かなりヤバい状態なのです。

しかも甲子園の予選が始まります。

表向きは横田先生(生瀬勝久)に監督となってもらい、自分は副部長という立場で、実質的にチームの指揮を執ろうとしています。

しかし、試合はともかく、自身が抱えた資格問題には、どう対処していくのか。

手塚治虫が生み出した、医師免許を持たない「天才外科医」ブラック・ジャック。

教員免許を持たないだけでなく、偽造までしてしまった、「なりすまし教師」南雲脩司。

そんな南雲が、どのようにして「下剋上監督」となっていくのか。

見る側も納得のいく物語展開を期待します。