碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】 日比谷で、ゴジラに遭遇

2018年05月18日 | 気まぐれ写真館




2018.05.17

テレ東「ヘッドハンター」は、手持ち資産活用の戦略商品

2018年05月17日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


テレ東「ヘッドハンター」は
手持ち資産を生かした戦略商品

自社の特色や強みを生かしたコンテンツ開発。テレビ東京が創設した新たな月曜22時枠「ドラマBiz」は、経済を軸に人間や社会を描くドラマという試みである。その第1弾が現在放送中の「ヘッドハンター」だ。

黒澤和樹(江口洋介)はサーチ会社「SAGASU」の社長であり、腕利きのスカウトマン。対象者や企業を徹底的に調査し、最良のマッチングを探っていく。タイトルだけ見ると、ヘッドハントの成功物語のような印象を受けるが、中身はもっと奥深い。

たとえば、第3話のターゲットは総合商社で数々の事業を成功させてきた熊谷瑤子(若村麻由美、好演)。黒澤が大企業への転職を勧めるが、当人の意思がはっきりしない。その背後には彼女が抱える大きな秘密があった。結局、このヘッドハントは不成立に終わるが、女性が企業社会で生き抜くことの難しさを浮き彫りにする出色の一本だった。

脚本は「ハゲタカ」(NHK)などで知られる林宏司のオリジナルだ。現実を巧みに取り込みながら、企業人が見ても納得のストーリーを構築している。また黒澤の片腕である灰谷哲也(杉本哲太)や、同業者のライバル・赤城響子(小池栄子)の存在も効果的だ。

全体として同局の「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」でおなじみの出演者が多い。手持ちの資産を生かした戦略商品であることがよくわかる。

(日刊ゲンダイ連載「TV見るべきものは!!」2018年05月16日)

岸井成格(きしい・しげただ)さんに、合掌

2018年05月16日 | テレビ・ラジオ・メディア


5月15日に岸井成格(きしい・しげただ)さんが亡くなったことが報じられました。享年73。

特定秘密保護法、安全保障関連法、さらに憲法改正など、この国のかたちを変えていこうとする政治の流れの中で、テレビを通じてその危うさを伝え続けたのが岸井さんです。

「NEWS23」(TBS系)のアンカーだった岸井さんが退任したのは、2016年3月25日でした。

「今、世界も日本も、歴史的な激動期に入りました。そんな中で、新しい秩序や枠組み作りの模索が続いています。それだけに報道は、変化に敏感であると同時に、極端な見方に偏らないで、世の中の人間の良識や常識を基本とする。そして何よりも真実を伝える。権力を監視する。そういうジャーナリズムの姿勢を貫くことが、ますます重要になっていると感じます」

岸井さんが、番組の最後で語った言葉は、メディアに対する切実なメッセージです。

合掌。

実習授業「視聴覚教育」構成会議

2018年05月16日 | 大学






2018.05.15

【気まぐれ写真館】 レッドキングがやって来た

2018年05月15日 | 気まぐれ写真館


高山良策さんのオリジナル造形に近い、限定モデル

書評した本: 中村実男 昭和浅草映画地図』ほか

2018年05月14日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。

中村実男 
『昭和浅草映画地図』

明治大学出版会 2700円

映画を「風景の記憶装置」と捉える明大教授が、浅草の歴史と変化をたどる。たとえば川島雄三が『とんかつ大将』で描いた戦後復興期の裏長屋。また大林宣彦が『異人たちとの夏』で見せてくれた昭和末期の六区。浅草には懐かしくて切ない物語がよく似合う。


神長幹雄 
『未完の巡礼~冒険者たちへのオマージュ』

山と渓谷社 1836円

元『山と溪谷』編集長が描く、還らなかった登山家、冒険家、写真家の肖像6編。彼らはなぜ命がけの挑戦を続けたのか。植村直己、長谷川恒男、星野道夫などの足跡を求めてアラスカやヒマラヤを歩き、その肉声を手記や生前のインタビューで甦らせている。

(週刊新潮 2018年4月26日号)

「実相寺昭雄研究会」例会

2018年05月13日 | テレビ・ラジオ・メディア
『名探偵コナン』アニメ監督・松園公さんが描いた実相寺昭雄監督


実相寺研の例会


松園監督がその場でスケッチした例会風景


『ブラックペアン』は、二宮和也版「ブラック・ジャック」!?

2018年05月12日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


現在、TBS系「日曜劇場」枠では、二宮和也さん主演『ブラックペアン』を放送中です。

二宮さんが演じる主人公・渡海征司郎は「手術成功率100%を誇る孤高の天才外科医」。その神技ともいえるスキルは、あの「ドクターX」こと大門未知子先生といい勝負かもしれません。


日曜の夜、腕をふるってきた「名医」たち

思えばこの10年、「日曜劇場」には何人もの名医が登場しました。

まず、産科だろうが脳外科だろうが、ジャンルに関係なくどんな手術もバシバシやっていたのが、『Tomorrow~陽はまたのぼる~』(08年)の森山航平先生(竹野内豊)です。

『JIN―仁―』(09年)の南方仁先生(大沢たかお)は、確か外科医でしたね。江戸時代にタイムスリップして大活躍。焼け火箸を電気メスの代用品にして止血を行ってみせたり、当時は死病だったコロリ(コレラ)とも戦っていくのですが、結構リアルで緊迫感のある医療ドラマでした。

次が『GM~踊れドクター』(10年)。総合診療科なるセクションの総合診療医(って言われてもよくわかんなかったけど)で、問診だけでも病名を言い当てていた名医が、後藤英雄先生(東山紀之)です。

翌11年の『JIN―仁―完結編』では、再び南方先生が登板し、大好評のうちに幕を閉じました。


日曜の夜、苦戦していた「名医」たち

標高2500メートルの山上にある診療所が舞台だったのは、『サマーレスキュー~天空の診療所~』(12年)です。

ただ、この時は山岳診療所という設定自体に、やや無理がありました。毎週毎週、登山客が病気やケガをする山って、一体どんな山なんだ? 呪われてるのか? 

また、速水圭吾先生(向井理)は心臓外科医でしたが、医療ドラマらしいダイナミックな見せ場も期待できませんでした。そもそも重病患者は山に来ません(笑)。

それにこの診療所の医療設備は最小限で、医師が出来ることは少ない。患者の命を救うにはヘリで町の病院まで搬送するのが一番で、速水先生の腕もあまり生かしようがなかったのです。

そして5年後、満を持してマウンドに上がったのが、『A LIFE~愛しき人~』(17年)の沖田一光先生(木村拓哉)でした。

「心臓血管と小児外科が専門の職人外科医」とのことでしたが、肝心の手術シーン全体は緊張感とか緊迫感とかが希薄。手術を終えても、「やったね!」という達成感とか勝利感とか爽快感とかが、ほとんどありません。

また木村さんは善戦していたものの、ドラマにおける「見せ場」が与えてくれる高揚感も、あまりありませんでした。このドラマでの手術シーンは、それなりにリアルチックだったのかもしれませんが、ドラマチックではなかったのです。


そして、「手術室の悪魔」渡海征司郎医師

『ブラックペアン』の主人公・渡海征司郎は、これまでの「日曜劇場」の先生たちとは明らかに違います。腕はとびきりいいけど、かなり傲慢。「オペ室の悪魔」というニックネームが象徴するように、デモーニッシュな、それもちょっとダークなオーラを身にまとっている点でユニークです。

先週の第3回でも、同時に難しい手術をしなくてはならなくなったとき、渡海が研修医の世良(竹内涼真)に向かって、こう言い放ちました。

「どっち、助ける? いや、どっち殺す?」。

さらに「俺なら両方助ける!」と。この自信と悪魔的スキルが渡海の魅力でしょう。

しかも、渡海は胸の内に重い「わだかまり」を抱えています。時々眺めている、一枚の胸部レントゲン写真。そこに映っている、大きなハサミのような「ペアン」に秘密があるようです。この謎の鬱屈からくる「陰り」が、渡海の人物像に奥行きを与えています。

そんな渡海を現出させているのは、二宮和也さんの俳優としての力量だと言っていい。たとえば、手術シーンではマスクを着用しているため、目だけで多くを表現しなくてはなりません。ドクターXこと大門未知子先生の場合は、ややもすれば「大きく見開く」ばかりが続きますが(笑)、渡海の目はより繊細に、感情だけでなく状況をも映し出していきます。


脚本家・倉本聰さんが語った「俳優・二宮和也」

先日、脚本家・倉本聰さんと行っている連続対談の席上で、二宮さんについてうかがいました。

碓井  『優しい時間』(05年、フジテレビ系)は親子、特に父と息子の物語でした。

倉本  そうですね。僕はニノ(二宮和也)っていう役者をそれまで全然知らなくて。フジテレビが連れてきたんですけど、これはいいと思いましたね。

碓井  どのあたりが一番ピンときたんですか。

倉本  繊細さですね。たとえば父親(寺尾聰)の働いてる姿を木の陰からそうっと見てるシーンがあったでしょう?

碓井  この父子の関係を象徴していました。

倉本  あそこは、「エデンの東」のジェームズ・ディーンが、実の母親をこっそり見に行ったところがヒントです。そんな雰囲気、気持ちの複雑さみたいなものをニノはとてもよく出していたと思う。

碓井  富良野のジェームズ・ディーンだ。とはいえ二宮さんはアイドルグループの一員で、いわゆる役者さんではなかった。そのあたりはどうお考えだったんですか。

倉本  あの頃になるとテレビ局が押さえてくるのはタレントだったり歌手だったり、極端に言ったらスポーツ選手まで連れて来ちゃったでしょう? 有名ならいいっていう感じで。

碓井  役者じゃない人をドラマで起用した場合、当たりハズレも大きい。

倉本  だからそれに関しては一種の諦めがあったんです。ただ、ニノに会ってみて、この子はちゃんとしてるなって思いました。あいつは物おじしないんですよ。僕のことを「聰ちゃん!」って呼ぶしね。クリント・イーストウッドにも使われてた。

碓井  そうでした。映画『硫黄島からの手紙』(06年)ですね。

倉本  あいつ、イーストウッドのことを「クリントは……」って言うんですよ。生意気なんだけど、失礼な感じにならない。ナイーブさも持ってるし、あの子の才能ですね。(日刊ゲンダイ連載「倉本聰 ドラマへの遺言」2018.05.11より)

生意気ながら礼節あり。繊細にしてナイーブな和製ジェームズ・ディーン。さすが倉本先生ですね。「俳優・二宮和也」のキモを、しっかりおさえていらっしゃいました。


『ブラックペアン』は、二宮版「ブラック・ジャック」!?

さて、『ブラックペアン』です。原作は、『チーム・バチスタの栄光』などで知られる海堂尊さんの長編小説『ブラックペアン1988』(講談社刊)。

この原作では、高階権太医師(ドラマでは小泉孝太郎)が駆使する「スナイプAZ1988」は食道の自動吻合器でした。しかし、ドラマの最新医療用機器「スナイプ」は、心臓手術に使われています。

心臓ということで、より生死に関わる場面が多くなり、医療ドラマとしてのダイナミックな展開を可能にしています。この「ダイナミックな展開」は、やはり福澤克雄ディレクターをはじめとする「チーム半沢直樹」ならではの力技と言えるでしょう。

渡海は、手術を次々と成功させて患者の命を救っていますが、相変わらず、しっかり「大金」も受け取っています。このあたり、手塚治虫先生の名作『ブラック・ジャック』を想起させますよね。

そういえば、このドラマの伊與田英徳プロデューサーは、かつて『ブラックジャックによろしく』(03年)を手がけたことがありました。研修医である斉藤英二郎(妻夫木聡)が主人公でしたが、『ブラックペアン』の研修医・世良(竹内)は、いわば狂言回しといった役割です。

今後、世良の無垢なる目に、渡海は、そして高階はどう映っていくのか。あの体内の「ペアン鉗子」は、誰の、何をつかむことになるのか。まだまだ先が読めない楽しみがあります。

週刊朝日で、「半分、青い。」についてコメント

2018年05月11日 | メディアでのコメント・論評


インスタも好調!
NHK朝ドラ「半分、青い。」はなぜウケるのか?

4月からスタートした連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK)が好調だ。女優の永野芽郁(18)がヒロインを務める同作は、岐阜と東京を舞台に、病気で左耳を失聴した楡野鈴愛(にれのすずめ)が、少女漫画家を目指して上京し、挫折や結婚・出産・離婚を経験しながら、高度経済成長期の終わりから現代まで、およそ半世紀を描く。

脚本は、「ロングバケーション」(フジテレビ)や「ビューティフルライフ」(TBS)などの恋愛ドラマヒット作で知られる北川悦吏子氏(56)。初回視聴率は21.8%でスタートし、前3作の「べっぴんさん」(21.6%)、「ひよっこ」(19.5%)、「わろてんか」(20.8%)を上回る好発進で、第1週=20.1%、第2週=20.0%と2週連続で大台をキープしている(数字はすべてビデオリサーチ調べ、関東地区)。

「朝ドラ史上初の、障害を持ったヒロインが生き生きと描かれている期待作」

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)はこう力説する。


実は、左耳の失聴という設定は、脚本家の北川氏自身の実体験を踏まえたもの。北川氏は病気により3年前に左耳の聴覚を失い、その経験を脚本に生かしたという。

「ちょっとショックではあったんですが、傘をさすと左側だけ雨音が聞こえず、雨が降っていないかのように感じるのがおもしろくて、“これはドラマになる”と思いました」(北川氏)

ヒロインの鈴愛は、自身の聞こえない耳を「耳の中で小人が歌って踊ってる」と話し、不快なノイズであるはずの耳鳴りを「海の音。潮騒」だと表現する。

「障害を個性と捉え、ユニークな女の子として描かれている。ドラマ全体がとにかく明るくて、久しぶりに“本気で見たい朝ドラが帰ってきた”とワクワクしています」(碓井教授)

「赤チン」に「ねるとん番組」、ボディコンや「レナウン」のCMなど、70~80年代の懐かしさが随所にちりばめられているのも特徴の一つ。北川氏は制作決定発表後、自身のツイッターで、鈴愛と同じ「1971年前後生まれの人」に向け、当時の流行についてアンケート。参加型の脚本構成でファンのハートをつかんだ。

制作段階からのこうした積み重ねが功を奏し、放送開始時点での公式インスタグラムのフォロワー数が16万超と異例の注目度。現在SNS上では、視聴者間での“懐かしさ談議”が活発に繰り広げられている。(本誌・松岡かすみ)

(週刊朝日 2018年5月18日号)

「長澤まさみ」たちの怪演 フジ月9「コンフィデンスマンJP」 

2018年05月10日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


長澤まさみら怪演
ドラマを支える脚本と“仕掛け”の面白さ

コンフィデンスマン、もしくはコンマン。その意味は詐欺師とかペテン師で、相手を信用させて詐欺を働くことを指すのが「コンゲーム」だ。

コンゲーム映画なら、懐かしいところではポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの「スティング」(73年)。最近ならジョージ・クルーニー主演「オーシャンズ11」シリーズがある。フジ月9「コンフィデンスマンJP」は、まさにコンゲームドラマだ。

チームはボスのダー子(長澤まさみ)、人のいい青年詐欺師ボクちゃん(東出昌大)、そして変装名人リチャード(小日向文世)の3人である。

これまでにターゲットとなったのは裏の顔を持つ公益財団会長(江口洋介)、ホテルチェーンの強欲経営者(吉瀬美智子)など。先週は食品偽装で儲けている社長(佐野史郎)だったが、彼の映画好きを利用した「映画製作詐欺」ともいうべき仕掛けが見ものだった。

そう、コンゲームドラマの醍醐味は一にも二にも「仕掛け」の面白さにある。脚本は「鈴木先生」(テレビ東京系)や「リーガル・ハイ」(フジテレビ系)を手掛けてきた古沢良太のオリジナル。ハリウッド並みのスケールは無理だが、3人のキャラクターを生かした「だまし技」の連打が痛快だ。加えて長澤の異様なテンションと、吹っ切れたようなコスプレショーも一見の価値がある。

今期ドラマの怪演大賞だ。

(日刊ゲンダイ 2018.05.09)

テレビ65年の歴史の中から選ばれた「日本一のテレビドラマ」とは!?

2018年05月08日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


これまでに放送されてきたドラマの中から、何と「日本一のテレビドラマ」を選ぶ。そんな暴挙とも蛮行ともいえる(笑)、「週刊現代」の特集に参加させていただきました。

ちなみに、この特集における「選者」は以下のような皆さんです。

<日本一のテレビドラマ選者>50音順、敬称略

碓井広義(上智大学文学部教授)/柏田道夫(脚本家)/倉田真由美(漫画家)/黒田昭彦(All Aboutテレビドラマ)/中町綾子(日本大学芸術学部教授)/成馬零一(ドラマ評論家)/桧山珠美(テレビライター)/古崎康成(テレビドラマ研究家)/ペリー荻野(コラムニスト)/森永卓郎(経済評論家)/山田美保子(コラムニスト)

また、選考方法としては、これらの選者11名が、これまでのドラマの中から1位~15位までをランク付けする形で投票。1位を15点、2位を14点・・15位を1点として、合計点数でランキングが作成されています。


「日本一のテレビドラマ」ベスト30

誌面には、結果発表として「ベスト100」がズラリと並んでいますが、さすがに全部記すには多いので(笑)、ここでは「トップ30」を挙げておきます。「歴代テレビドラマベスト30」と呼んでもいいでしょう。

31位から100位までは、発売中の「週刊現代」5月11日増刊号をご覧いただけたらと思います。

1位 「あまちゃん」13年、NHK

2位 「傷だらけの天使」74年、日本テレビ

3位 「俺たちの旅」75年、日本テレビ

4位 「北の国から」81年、フジテレビ

5位 「淋しいのはお前だけじゃない」82年、TBS

6位 「すいか」03年、日本テレビ

7位 「早春スケッチブック」83年、フジテレビ

8位 「高校教師」93年、TBS

9位 「東京ラブストーリー」91年、フジテレビ

10位 「寺内貫太郎一家」74年、TBS

11位 「半沢直樹」13年、TBS

12位 「天下御免」71年、NHK

13位 「あ・うん」80年、NHK

14位 「岸辺のアルバム」77年、TBS

15位 「夢千代日記」81年、NHK

16位 「阿修羅のごとく」79年、NHK

17位 「木枯し紋次郎」72年、フジテレビ

18位 「カルテット」17年、TBS

19位 「時間ですよ」70年、TBS

20位 「必殺シリーズ」72年、TBS

21位 「ふぞろいの林檎たち」83年、TBS

22位 「男たちの旅路」76年、NHK

23位 「お荷物小荷物」70年、TBS

24位 「西遊記」78年、日本テレビ

25位 「細うで繁盛記」70年、日本テレビ

26位 「思い出づくり。」81年、TBS

27位 「逃げるは恥だが役に立つ」16年、TBS

28位 「不良少女とよばれて」84年、TBS

29位 「どてらい男」73年、フジテレビ

30位 「ドクターX~外科医・大門未知子~」12年、テレビ朝日

(週刊現代 2018年5月11日増刊号

「ドラマ好きが本気で選んだ 日本一のテレビドラマ ベスト100」より)


30本を局別に数えてみると・・・

NHK   6本

日本テレビ 5本

TBS   13本

フジテレビ 5本

テレビ朝日 1本

NHK、日テレ、フジはほぼ横並びで、TBSの圧倒的な強さが目立ちます。かつて「ドラマのTBS」といわれていたことを思い出しました。

また年代別では・・・

70年代  14本

80年代   8本

90年代   2本

00年代   1本

10年代   5本

ベスト30の約半数が70年代に集中していました。70年代というのが、いわば「ドラマの黄金時代」だったことがわかりますね。


私が選んだテレビドラマベスト15

週刊現代編集部の要請にしたがって、私が選んだ15作品とその理由は、以下の通りです。掲載された集計結果と比べてみるのも一興かもしれません。

1位 「北の国から」 フジテレビ 1981年

ドラマの成否は脚本にかかっていることを、あらためて実感します。倉本聰さんの脚本は、約20年にわたって「ドラマの登場人物たちと同時代を生きる」という稀有な体験をさせてくれました。北海道の四季を取り込んだドラマ自体が前代未聞で、しかも内容がまた重層的でした。家族の物語というだけでなく、仕事、子育て、高齢化社会、地域格差といった多様なテーマが盛り込まれている。多面体というか、立体的なドラマでした。特に視聴者が無意識の中で感じていた「家族」の危機と再生への願いを、苦味も伴う物語として具現化していました。まさに“社会の合わせ鏡”としてのドラマだったのです。

2位 「あまちゃん」 NHK 2013年

ドラマの場合、作品の骨格であり設計図である脚本、登場人物たちを演じるキャスト、そして映像表現としての演出の3つが成否の鍵となります。「あまちゃん」では脚本家の宮藤官九郎、能年玲奈をはじめとする出演者、秀作ドラマ「ハゲタカ」を生んだ訓覇圭プロデューサーと井上剛ディレクターという絶妙の組み合わせでした。それぞれが能力を最大限に発揮した結果、1 前代未聞のアイドル物語、2 80年代カルチャーの取り込み、3 時間軸と物語の舞台を自在にあやつる異例の脚本、4 脇役まで目配りの効いた秀逸なキャスティングといった特色を持つ名作が生まれました。

3位 「岸辺のアルバム」 TBS 1977年

企業人としての父。女としての母。家族は皆、家の中とは違った顔を隠し持っています。それは切なく、また愛すべき顔でした。洪水の多摩川を流れていく家々の映像と、ジャニス・イアンが歌う「ウィルユー・ダンス」が忘れられません。脚本、山田太一。

4位 「半沢直樹」 TBS 2013年

注目ポイントは2つです。まず主人公が大量採用の“バブル世代”だったこと。企業内では、「楽をして禄をはむ」など負のイメージで語られることの多い彼らにスポットを当てたストーリーが新鮮でした。池井戸潤さんの原作「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」は、優れた企業小説の例にもれず、内部(ここでは銀行)にいる人間の生態を巧みに描いています。福澤克雄ディレクター(「華麗なる一族」など)の演出は、この原作を相手に、正攻法で真っ向勝負していました。第2のポイントは主演の堺雅人さんです。前年、「リーガル・ハイ」(フジ)と「大奥」(TBS)の演技により、ギャラクシー賞テレビ部門の個人賞を受賞しましたが、「半沢」ではシリアスとユーモアの絶妙なバランス、そして目ヂカラが群を抜いていました。

5位 「俺たちの旅」 日本テレビ 1975年

フリーターという言葉もなかったこの時代、組織になじめない若者たちの彷徨を描いて秀逸でした。オンエア当時、ちょうど大学生だったこともあり、劇中の彼らに共感したり、反発したりしながら見ていました。カースケ(中村雅俊)、オメダ(田中健)、グズ六(津坂まさあき )の3人が当時の年齢のまま、今もこの国のどこかで生きているような気がします。脚本、鎌田敏夫ほか。

6位 「カルテット」 TBS 2017年

主要人物4人が、鬱屈や葛藤を押し隠し、また時には露呈させながら、互いに交わす会話が何ともスリリングで、見る側にとっては、まさに“行間を読む”面白さがありました。ふとした瞬間、舞台劇を見ているような、緊張感あふれる言葉の応酬は、脚本家・坂元裕二さんの本領発揮です。そして、台詞の一つ一つがもつ「ニュアンス」を、絶妙な間(ま)と表情で見せてくれた、4人の役者たちにも拍手です。

7位 「ふぞろいの林檎たち」 TBS 1983年

やがて自分が大学のセンセイになることなど思ってもいなかった頃、“フツーの大学生”の実態を、残酷かつユーモラスに見せてくれました。サザンが歌った「いとしのエリー」も、ドラマのテーマ曲ベスト10に入ります。脚本、山田太一。

8位 「傷だらけの天使」 日本テレビ 1974年

オープニング映像のカッコよさにぶっ飛びました。ショーケン(萩原健一)、水谷豊、岸田今日子、そして怪優・岸田森などの出演者。また市川森一や鎌田敏夫といった脚本家たち。深作欣二や工藤栄一などの監督陣。カメラは木村大作ほか。これで面白くないはずがありません。

9位 「ひよっこ」 NHK 2017年

東京オリンピックにはじまり、ビートルズの来日、テレビの普及とクイズ番組、ツイッギーとミニスカートブーム、そしてヒット曲の数々。同時代を過ごした人には懐かしく、知らない世代にとっては新鮮なエピソードが並びました。ヒロインのみね子は「何者」でもないかもしれませんが、家族や故郷、そして友だちを大切に思いながら、働くことが大好きな、明るい女性でした。市井に生きる私たちと変わらない、いわば等身大のヒロイン。いや、だからこそ応援したくなったのです。

10位 「金曜日の妻たちへ」 TBS 1983年

日常の中にあるエロスを再発見し、日本人の恋愛観を変えたシリーズの1本目です。特に、女性の不倫に対するハードルを下げた功績(?)は大きいのではないでしょうか。ちなみに、大ヒット曲となった小林明子「恋におちてーFall in loveー」が主題歌だったのは、85年の「金曜日の妻たちへIII  恋におちて」でした。「ダイヤル回して手を止めた」の歌詞が懐かしい。脚本、鎌田敏夫。

11位 「下町ロケット」 TBS 2015年

普段スポットの当たらない技術者たち、モノを作る人たちの思いを代弁してくれたドラマでした。俺たちの言いたいことを言ってくれた。そう快哉を叫んだ人も多いんじゃないでしょうか。立川談春、吉川晃司、池畑慎之介など重厚さと意外性を組み合わせたキャスティングが絶妙で、俳優の好演が目立ちました。

12位 「それぞれの秋」 TBS 1973年

最も身近な存在でありながら、家族の素顔や本心をどれだけ知っているのか。それまでのホームドラマでは見ることのできなかった家族の実像をクールに、そして優しく描ききっていました。脚本、山田太一。

13位 「時間ですよ」 TBS 1970年

「ドラマの黄金時代」ともいうべき70年代の幕開けを告げた1本。「松の湯」の脱衣所にドキドキし、堺正章と悠木千帆(現・樹木希林)の掛け合いに笑いました。天地真理が登場したのは翌年の第2シリーズでしたが、当時、確かに可愛かったです。脚本、向田邦子ほか。

14位 「バラ色の人生」 TBS 1974年

自分は何がしたいのか。何ができるのか。モラトリアムの時間を生きる若者たち(主演、寺尾聰)の姿が、ジョルジュ・ムスタキ「私の孤独」の歌声と共に記憶に残ります。松方弘樹さんにさらわれる(笑)前の仁科明子さんが可憐でした。脚本、高橋玄洋ほか。

15位 「七人の孫」 TBS 1964年

少子化社会とは無縁の元祖「大家族ドラマ」です。高橋幸治、いしだあゆみ、島かおり、勝呂誉などの孫たちもよかったのですが、一家の象徴ともいうべき森繁久彌のジイサマが最高でした。脚本、向田邦子ほか。

さて、皆さんなら、テレビ65年の歴史の中から「日本一のテレビドラマ」として何を選びますか!?

母校・松本深志高校について、朝日中高生新聞で・・・

2018年05月07日 | メディアでのコメント・論評




深志の同期、田中晃(WOWOW社長)

テレ朝『未解決の女』は、女性版『相棒』になれるのか!?

2018年05月06日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


『未解決の女 警視庁文書捜査官』は、
女性版『相棒』になれるのか!?

主演が波瑠さんで、脚本が大森美香さん。この組み合わせといえば、NHK朝ドラ『あさが来た』(2015年)を思い出します。

それが今回は刑事ドラマ『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系)です。しかも主役たちが所属するのは未解決事件の文書捜査を担当する「文書解読係」というのですから、ちょっと異色の刑事物なのです。

「文書解読」のエキスパート

ヒロインの矢代朋(波瑠)は体育会系の熱血刑事。体を張った捜査で負傷してしまい、復帰してみると「特命捜査対策室第6係」への異動が待っていたという次第です。

地下にある、かつて文書保管倉庫と呼ばれていた部屋に行ってみると、そこにいたのは「文書解読」のエキスパート、鳴海理沙刑事(鈴木京香)でした。他には定時退庁が決まりの係長・財津(高田純次)や、コワモテの刑事・草加(遠藤憲一)などがいます。

第1回(4月19日放送)では、若い女性の連続変死事件が発生。彼女たちの部屋に、10年前に殺害されたミステリー作家・嶋野泉水(中山美穂)の著作があったことから再捜査が始まります。

事件の捜査においては、同じ捜査1課の第3行班などが主役であり、「文書解読」が専門の6係はあくまでサポート部隊であり、脇役です。しかし、そんな脇役が主役を食うような活躍を見せるところが、このドラマの醍醐味なのです。

特に「倉庫番の魔女」と呼ばれる鳴海理沙が展開する、文章心理学をベースにした推論が冴えています。何と言っても、この鳴海が面白い。そもそも「文字フェチ」なんですよね。文字からその人の性格を想像していきます。断片的なメモも暗号みたいに見えてくる。

確かに、文章を書くときって、無意識のうちに、その人の考えていることが現われていたりするものです。それに文字は紙に残るために、後で分析することも可能で、それが証拠品になったりもします。

女性版『相棒』の試み!?

また第2話(4月26日放送)は、12年前に起きた幼女誘拐事件と、新たに発生した社長令嬢誘拐事件がリンクする展開でした。鳴海は誘拐犯と被害者の家族との会話を分析し、小さなキーワードから真犯人へと通じる糸口を見つけます。頭脳の鳴海と体力の朋。朋のほうは重いバッグを背負って疾走していました。

鳴海の一見とっぴな推測も、それを重ねることで隠れていた真相が明らかになっていく。捜査のプロセスで、鳴海が朋を自在に動かしていく様子はかなりの見ものです。その意味では、本当の主役は波瑠さんではなく、鈴木京香さんなのかもしれません。

実際、麻見和史さんの原作小説(『警視庁文書捜査官』シリーズ)の主人公は、鳴海理沙です。波瑠さんが演じている矢代朋は、原作の中では矢代朋彦という男性刑事で、鳴海にこき使われる、ややゆる目のキャラです。

しかしドラマのほうでは、波瑠さんにもちゃんと見せ場を作り、いわゆる「バディ物」として成立させているわけです。テレ朝的には「波瑠主演」。見た目的には「ダブル主演」。そして実質的には「鈴木京香主演」のドラマってところでしょうか。

とはいえ、あまり堅いことは言わず(笑)、まずはこの女性版『相棒』の試みを楽しめばいいと思います。

秀作ドキュメンタリー HTBノンフィクション「聞こえない声」

2018年05月05日 | 「北海道新聞」連載の放送時評



北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、HTBノンフィクション「聞こえない声」について書きました。


ドキュメンタリーならではのアイヌ遺骨問題
HTBノンフィクション「聞こえない声」

4月23日の深夜、HTBノンフィクション「聞こえない声~アイヌ遺骨問題 もう一つの150年~」(北海道テレビ)が放送された。アイヌ民族の遺骨問題と現在まで続く差別をテーマにしたドキュメンタリーだ。撮影・演出は制作会社アウンビジョン代表の藤島保志ディレクター(以下、藤島D)である。

明治以降、大学の研究者などがアイヌ民族の墓地を掘り起こすなどして収集した、いわゆるアイヌ遺骨。全国12大学で保管されてきた遺骨は1600体以上(14年、内閣府調べ)だ。そのうちの1000体が放置されていた北海道大学に対し、子孫たちは返還を求めて提訴してきた。一部は和解の成立で戻されたが、頭蓋骨と手足が揃わないものも多い。

番組には道内各地に暮らすアイヌの人たちが多数登場し、遺骨問題や差別について率直に語っていた。「アイヌの魂がさまよっていて神の国に行けない」(旭川・川村兼一さん)。「とりあえず掘ったところに還せやって、それだけだ」(静内・葛野次雄さん)。「遺骨には尊厳がある。自分のじいちゃん、ばあちゃんの墓を外国人が来てあばいたら、どういう気持ちになるか」(平取・萱野志朗さん)。「北大は嘘ばっかり言うんだわ、嘘ばっかりだ」(浦河・小川隆吉さん)。

これだけの方々が一つのテレビ番組の中で証言していることに驚く。なぜならアイヌの人たちも決して一枚岩ではない。遺骨問題についての考え方や対応にも差異があるからだ。10年以上も手弁当で取材を続けてきた藤島Dへの信頼感が語らせていると言っていい。

一方、藤島Dは北大だけでなく、200体の遺骨を保管する東大、さらに国に対しても「今後、アイヌ民族の遺骨をどうするのか」と何度も取材を申し込んできた。しかし「ナーバスな問題だから」と一切拒否される。マイクを向けられた内閣官房アイヌ総合政策室の担当参事官が、無言のまま逃げるように立ち去る姿が象徴的だった。

この番組の特色は、遺骨や差別の問題をアイヌの人たちの目線で描いていることだ。ドキュメンタリーには署名性があり、制作者の「私はこう見る」という意思がそこにある。藤島Dは敢えてアイヌ民族の側に立つことで、私たちに聞こえない声、私たちが聞こうとしない声に耳を傾けるよう促しているのだ。

最後に、まさに「ナーバスな問題」を扱った番組を放送したHTBに敬意を表すると共に、午前1時すぎではなく、もう少し視聴しやすい時間帯での再放送をお願いしたい。

(北海道新聞 2018.05.04)

【気まぐれ写真館】 祝い事あって、横浜中華街

2018年05月04日 | 気まぐれ写真館
photo by HARU


2018.05.03