碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ユニークな感性 「半分、青い。」ヒロインのキャラ

2018年05月03日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


ユニークな感性
「半分、青い。」永野芽郁のキャラに好感

NHK朝ドラ「半分、青い。」が始まって約1カ月。前作「わろてんか」はストーリー自体が精彩を欠き、モチーフだという吉本せいのこともよくわからなかった。安易な実録路線の結果だが、今回は安心して見ていられる。何より永野芽郁(18)が演じるヒロイン、楡野鈴愛のキャラクターに好感ありだ。

少女時代に左耳の聴力を亡くした、朝ドラ史上初の「ハンディキャップを持つヒロイン」だが、「私の左耳は面白い。中で小人が踊ってる」と笑顔で語る感性がすてきだ。

これによって鈴愛は「障害のある女の子」ではなく、「個性的でユニークな女の子」となった。

鈴愛が生まれたのは1971年。両親(滝藤賢一、松雪泰子)は団塊世代だ。ここまでの物語の中には70~80年代文化が随所に盛り込まれてきた。松田聖子の歌から温水洗浄便座まで、ちょっと懐かしいアイテムが時代を感じさせてくれる。

現在、鈴愛は高校3年生だ。幼なじみの律(佐藤健)たちとの日常、初デート騒動、家族に助けられた就職活動などがあった。しかし先週、今後の人生を左右することになる天才少女漫画家、秋風羽織(豊川悦司)と出会った。脚本の北川悦吏子によって、豊川の濃厚キャラもフル稼働だ。

気持ちのいい青春ドラマとして、また良質なファミリードラマとして、いい出来栄えの一本となっている。

(日刊ゲンダイ 2018年05月02日)

ミツカンCMの風吹ジュンさん

2018年05月02日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム



日経MJ(日経流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回は、ミツカン「八方だし」CMの風吹ジュンさんについて書きました。


同世代くぎ付け
大人の美で魅了

このところ風吹ジュンさんの「写真」をよく見かける。昨年のドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)では、石坂浩二さんが演じた主人公の亡き妻だったが、写真立ての中でやさしく微笑んでいた。

また現在放送中のNHK朝ドラ「半分、青い。」でも、ヒロインの亡くなった祖母という役柄だ。夫の中村雅俊さんが手を合わせる仏壇の遺影と、温もりのあるナレーションを担当している。

1973年、風吹さんは初代ユニチカマスコットガールとして衝撃的なデビューを果たした。そのポスター写真を撮影したのは、巨匠デイヴィッド・ハミルトンだった。昔も今も、同時代の男たちにとって“憧れの女性”なのである。

PIN印はミツカンの新ブランド。その第1弾「八方だし」のCMで、娘(本仮屋ユイカさん)や孫のために料理の腕をふるうのが風吹さんだ。美少女から大人の美女へ。さらに愛らしい熟年女性へと進化を続ける一人の女優がそこにいる。

(日経MJ 2018.04.30)

週刊朝日で、「女優カトパン」についてコメント

2018年05月01日 | メディアでのコメント・論評


ドラマ進出果たしたカトパンの本気度 
MCの座はタレントに奪われ…

自身の誕生日を迎える前日の4月22日、元フジテレビアナウンサーの加藤綾子(33)が、華々しく連続ドラマにデビューした。嵐の二宮和也主演の「ブラックペアン」(TBS)、朝の連続テレビ小説「半分、青い。」への出演を果たしたのだ。前者は「半沢直樹」に代表される高視聴率の人気枠で、後者は言わずと知れた国民的ドラマ枠だ。

“女優”として最高の滑り出しを見せた加藤だが、本格的な“転身”はあるのか。上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)はこう釘を刺す。

「人気ドラマへの立て続けの出演で順風満帆に見えますが、視聴者は滑っても転んでも、どこから見ても“フジテレビの看板を背負っていたカトパン”として見ています。もしこれで女優としての自信を深めているとしたら、びっくりな勘違いですね」

主要キャストではなく、“限定された”役だからこそ許されていると元テレビプロデューサーの碓井教授は手厳しい。

「演技が多少ひどいとしても、ゲスト出演的な露出だからこそ視聴者は笑って見ていられる。同世代の女優さんはいくらでもいるわけで、彼女である必要はないんです。あくまで話題作りでにぎやかし。朝ドラではアナウンサー役ですし、極端に言ってしまえば、演技を求められていないんです」


一方で、女優業を好意的に見る向きもある。芸能評論家の三杉武氏は加藤の本気度を感じるという。

「出演作が古巣のフジテレビのドラマではなく、所属事務所の先輩のバーターとしての出演でもない。アナウンサーとしての色を避けたかのような選択に、カトパンの本気度を感じます」

その背景には女子アナの仕事が減りつつあることも関係がありそうだ。

「かつて番組MCのアシスタントは主に女子アナの仕事でしたが、最近は小島瑠璃子さんや指原莉乃さんなどのタレントが務めることが多くなってきた。仕事の幅を広げる意味での挑戦とも考えられます」(三杉氏)

女優としては、かつて「スーパー綾子」とも言われた如才なさと好感度の高さが武器になると指摘する。

「女子アナは傾向として、同性から『ぶりっ子』とか『鼻につく』と、支持されないことも多いですが、カトパンは『美貌が完璧すぎて嫉妬する気も起きない』と同性からの支持も高い。転身するなら、印象的な演技で視聴者を納得させられるかが今後の肝です」

華麗なる転身は見られるのか。そのスーパーぶりに期待したい。(本誌・秦正理)


(週刊朝日オンライン 2018.4.30)