碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「ひよっこ」たちがスタートを切る季節

2024年04月02日 | メディアでのコメント・論評

 

 

4月になりました。

街で、新入生や新入社員の姿を見かけます。

新人たちがスタートを切る季節。

今から12年前の4月、「東京新聞」に寄稿したコラムがあったことを思い出しました。

当時は大学の教員だったこともあり、自分のゼミの卒業生を含め、新たに社会に出る皆さんへのエールのつもりで書いたものです。

ちょっと懐かしさもあり、再録してみますね。

 

 

新入社員の皆さんへ


毎年、この時期に読み返すのが、山口瞳さんの『新入社員諸君!』だ。

今、手元にあるのは、社会人になった昭和五十三(1978)年の春に購入した角川文庫版。かなりよれよれだが、今年もページを開いた。

どんなに時代が変っても、変わらない真理みたいなものが、ここにはあるからだ。

山口師曰く、

「まず、会社へはいったら、学校とちがっていろんな人間がいることを知っておいてください」

そう、キツネもタヌキも、オオカミだって生息するのが会社だ。でも、だからこそ一人ではできない仕事も可能になる面白さがある。

また師曰く、

「誠心誠意ではたらき有能な社員になってください。有能な社員とは、役に立つ社員のことです。役に立つ社員とは、何か自分のものを持っている社員のことです」

これも至言だ。いま“自分のもの”として何を、どれだけ持っているのか。新人じゃなくても、常に再点検すべきなのだ。

さらに山口さんは言う。

「新入社員よ、ボヤキなさんなよ。ブウブウいうなよ。キミタチは新人なんだよ。一所懸命やれよ。勉強しなさいよ。勉強といってもいろんな勉強があるんだよ。それを知るのが勉強なんだ」

社会に出ると、自分が、いかに無知であるかがわかってくる。そんな時、この言葉に励まされた。

新入社員の皆さん、しばらくは大変だけど、まずは一人前を目指そう。 

(東京新聞 2012.04.04)


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