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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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金曜ドラマ「クロサギ」 〈悪が悪を成敗する〉物語は令和版「必殺仕掛人」か

2022年12月01日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

TBS金曜ドラマ「クロサギ」

〈悪が悪を成敗する〉物語は

「必殺仕掛人」を思わせる

 

金曜ドラマ「クロサギ」(TBS系)の主人公は黒崎(平野紫耀)。詐欺に遭って絶望した父親が無理心中を図り、ただ一人生き残った。詐欺という行為と詐欺師を憎む黒崎は現在、詐欺師を騙す詐欺師「クロサギ」となっている。

物語の軸は家族の命を奪った者への復讐だ。これまでに父親を陥れた大物詐欺師、御木本(坂東彌十郎)を葬った。だが、更なる「仇」の存在を知った黒崎の闘いはまだ終わらない。平野が重い過去を背負った青年を好演している。

そして、ドラマの見どころはもう一つある。ストーリーの中でさまざまな詐欺の手口が明かされることだ。

これまで「起業セミナー詐欺」や「知的財産詐欺」などが登場したが、先週は「マンション投資詐欺」だった。不動産仲介業者に成りすまして手付金を騙し取る詐欺だ。黒崎は彼らに架空の優良物件を売りつけた上で、鮮やかに破滅させた。

しかし、黒崎は決して「正義の味方」ではない。いわばアンチヒーローであり、そこが魅力的なのだ。この〈悪が悪を成敗する〉物語は、往年の人気時代劇「必殺仕掛人」を思わせる。

黒崎が鍼医者の藤枝梅安(緒形拳)。黒崎の師匠で詐欺師業界のフィクサー・桂木(三浦友和)は、元締の音羽屋半右衛門(山村聡)か。この「クロサギ」、形を変えた令和版「必殺仕掛人」かもしれない。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.11.30)