名作ドラマの再放送
6月下旬から3週にわたって、NHKBSプレミアムとBS4Kで、ドラマ「ハゲタカ」(全6話)が再放送された。最初の放送は2007年。企業買収劇と人間ドラマを描いた名作である。
タイトルのハゲタカは、弱い企業を安く買収して企業価値を高め、株価が上昇した時点で売却する、企業買収ファンドを指す経済用語だ。
物語の始まりは1998年。米国投資ファンドの敏腕マネージャー・鷲津政彦(大森南朋)が、バブル経済崩壊後、不良債権処理で青息吐息の日本に帰国する。目的は「日本買い」だ。かつて自分が勤めていた三葉銀行が所有する、不良債権を買い叩いていく。
その後、老舗旅館や玩具メーカーなどに債権者として乗り込み、会社の売却を目論む鷲津。それを阻止して、企業再生の道を探ろうとするのが、鷲津の銀行時代の上司・芝野健夫(柴田恭兵)だ。ドラマは因縁の2人の攻防戦を軸に展開する。
起伏に富んだストーリー。俳優陣の迫真の演技。そして的確な演出と力のある映像。経済ドラマというジャンルを超え、ドラマならではの醍醐味を堪能できる作品だった。
原作は真山仁の小説だ。脚本は「医龍」(フジテレビ系)などの林宏司。プロデューサーが「あまちゃん」の訓覇圭。演出陣には「龍馬伝」の大友啓史や「ちゅらさん」の堀切園健太郎がいる。最強の布陣と言っていい。
また今年の4月から6月にかけては、松本清張原作の名作ドラマも総合テレビで再放送された。「けものみち」「天城越え」「ザ・商社」だ。3本とも、演出を手掛けたのは鬼才と呼ばれた和田勉であり、見る価値のある好企画だった。
現在、NHKオンデマンドなどで、過去のドラマを視聴することが可能だ。とはいえ、見たい作品を自分で探し出さなくてはならない。年齢層によってはハードルが高い。その点、再放送は普段の視聴スタイルのままで名作と出会うことができる。難点は再放送が不定期であることだ。
たとえば、「名作ドラマ枠」の定時番組があれば、多くの支持を得るのではないだろうか。外部の専門家たちを「キュレーター(学芸員)」として、放送する名作を選んでもらうのも悪くない。
(しんぶん赤旗「波動」2022.07.04)