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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

日曜劇場「グッドワイフ」は、ダブルの復活劇

2019年03月02日 | 「北海道新聞」連載の放送時評


<碓井広義の放送時評>
ダブルの復活劇に注目 
日曜劇場「グッドワイフ」

刑事物や医療物など、同じジャンルのドラマが横並びになることは珍しくない。今期は弁護士物が競い合っている。「イノセンス~冤罪(えんざい)弁護士~」(日本テレビ-STV)、「スキャンダル専門弁護士QUEEN」(フジテレビ-UHB)、そして日曜劇場「グッドワイフ」(TBS-HBC)の3本だ。

この中では「グッドワイフ」が最も見応えがある。ヒロインの蓮見杏子(きょうこ)(常盤貴子)は主婦から16年ぶりに現役復帰した女性弁護士。戻ってきた最大の理由は、東京地検特捜部長だった夫の蓮見壮一郎(唐沢寿明)が汚職容疑で逮捕されたからだ。杏子は、司法修習生時代の同期である多田(小泉孝太郎)の助けで、彼が共同代表を務める法律事務所に仮雇用となり、弁護士業を再開した。

最初の案件はネット配信番組のキャスター、日下部(武田鉄矢)が相手だった。彼は幼い娘が行方不明になった事件に関して、母親が犯人だと決めつける。その影響を受けた風評に追い詰められ、母親は自殺。父親が日下部を名誉棄損(きそん)で訴えると、日下部も同じ名誉棄損で逆告訴してきた。

法廷で最初はおずおずしていた杏子だが、途中からは堂々の弁護ぶりを見せる。徐々に変化する様子も含め、緩急をつけた常盤の演技が光っていた。主演女優としての貫禄だ。しかもそんな杏子の姿が、「Beautiful Life~ふたりでいた日々~」以来19年ぶりで「日曜劇場」の主演に復帰した常盤本人と重なり、ダブルの復活劇という効果も生んでいる。

現在、物語は中盤に差しかかってきた。たとえば往年のロックスター東城数矢(宇崎竜童)の離婚訴訟では、杏子は長年連れ添ってきた妻(銀粉蝶)の代理人として、若い恋人とその弁護士に向き合った。しかも単なる資産をめぐる争いではない。そこに夫と離婚すべきか悩む杏子と、その夫を陥れたと思われる東京地検の脇坂部長(吉田鋼太郎)の離婚協議もからめて、見る側に「夫婦とは何か」を問いかける展開となっていた。

このドラマ、原作はアメリカの同名シリーズだ。脚本の篠崎絵里子は、ヒロインの繊細な心の動きをより重視しながらアレンジを行っている。またチーフ・ディレクターは「アンナチュラル」の塚原あゆ子であり、夫や子供たちとの関係はもちろん、杏子への思いを抱える多田(小泉)との微妙な距離感も丁寧に描かれているのだ。夫の汚職事件も政治がらみの背景が少しずつ見えてきた。後半戦、一層の盛り上がりが期待できそうだ。

(北海道新聞 2019.03.02)

巨匠の「ドラマ渡世」をぜんぶ聞く

2019年03月02日 | メディアでのコメント・論評



巨匠の「ドラマ渡世」をぜんぶ聞く
倉本聰・碓井広義『ドラマへの遺言』

脚本家・倉本聰は言わずと知れたドラマ界の巨匠である。80歳を越えてから書いた、久々の連ドラ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)が話題を呼んだことは記憶に新しいが、『北の国から』(フジテレビ系)や『前略おふくろ様』(日本テレビ系)といった、後々まで語られる作品を数多く手がけてきた。

しかも、『北の国から』シリーズでは約20年間も視聴者と時代を共有し、『やすらぎの郷』では平日の昼間に「帯ドラマ劇場」という新たな価値を創出するなど、常にドラマの常識を覆してきた。

その一方で、自身の信念に従って大河ドラマでさえも降板し、キャスティングにも積極的に関わっていく。また役者が読む台本の一字一句にもこだわるという”伝説”を持つ。歯に衣着せず物を言い、テレビ局上層部にも遠慮はしない頑固者だ。こんな脚本家、他にはいない。

そんな倉本を、私は“師匠”と仰いでいる。普段は“倉本先生”と呼んでいるが、ここはぐっとこらえて敬称は略す。

私は現在、大学の教壇に立っているが、元々は20年にわたってテレビ界にいた。テレビマンユニオンでプロデューサー修業をしていた36年前、スペシャルドラマ『波の盆』(日本テレビ系)の制作現場で倉本聰に出会った。主演は笠智衆、監督が実相寺昭雄。明治期にハワイへと渡った、日系移民一世の波乱の人生を描いたこの作品は、1983年の芸術祭大賞を受賞した。

鮮やかな作劇術と心に沁みるセリフの数々。何より、若僧である私にも理想とするドラマ像を伝授しようとする熱意やその人柄に惚れ込んだ。

『ドラマへの遺言』は、さまざまな風評に彩られた師匠に、不肖の弟子が過去と現在の一切合切について聞き取りを行った一冊である。テーマは“遺言”。倉本が80代にさしかかった頃から、師匠の無尽蔵の創造力に感嘆する一方で、突然目の前からいなくなってしまうことへの脅えを感じるようになった。そこで師匠に、仕事と人生のあらいざらいを活字として公開することを提案したのだ。

富良野や東京でのロングインタビューは9回、のべ30時間に及んだ。84年前の東京に生まれた山谷馨(やまやかおる)はいかにして脚本家・倉本聰になったのかに始まり、デビュー作から最新作『やすらぎの刻(とき)~道』まで、「創作の秘密」60年分をぜんぶ聞いている。

企画の発想。人物像の造形。物語の構築。さらに大物俳優や女優たちとの知られざる交遊も。倉本は何度も「ここだけの話だけどね」と声を潜めたが、もちろん丸ごと書かせてもらった。

本書は脚本家としての「総括」というだけでなく、同時代を一緒に歩んだ人々、そして次代を生きる人たちに送る、人間・倉本聰からの「ラストメッセージ」でもある。一人でも多くの皆さんの心に届くことを祈るばかりだ。

(新潮社「波」 2019年3月号)






ドラマへの遺言 (新潮新書)
倉本聰、碓井広義
新潮社



間もなく、1000万PV

2019年03月02日 | テレビ・ラジオ・メディア

ショッピングセンターで遭遇したピカチュー



このブログの閲覧数ですが、本日段階で、999万1525PV。

間もなく、1000万ということになりそうです。

なんだか、ちょっと、ドキドキしますね(笑)。


女性アナウンサーの動向をめぐって・・・

2019年03月02日 | メディアでのコメント・論評



元乃木坂46斎藤ちはるを抜擢するテレ朝、
中堅アナウンサーはどこへ消えたのか

小川彩佳アナや宇賀なつみアナ、報道を担ってきた中堅アナウンサーの退社が相次ぎ、さらには弘中綾香アナの退社疑惑まで浮上しているテレビ朝日。一方で、今年4月には元乃木坂46の斎藤ちはるが入社し、さっそく“朝の顔”をつとめる異例の抜擢が発表された。

元乃木坂46で昨年グループを卒業した斎藤ちはるは、この4月からテレビ朝日に入社することが決定しているが、入社直後の4月から早速、朝の帯番組『羽鳥慎一モーニングショー』のアシスタントに起用される。今月いっぱいをもって退社する宇賀なつみアナの後任をつとめることになるが、研修もなしにいきなり現場に出る異例人事に驚きの声が上がっている。

テレビ局の新人アナウンサーは通常、入社後に数カ月間の研修期間を経てから現場に出る。しかし元芸能人はアナウンサーとしての経験や技量がなくとも即戦力とみなしているのだろうか、日本テレビも昨年10月、元乃木坂46メンバーの市来玲奈アナを入社半年で看板番組『行列のできる法律相談所』のアシスタントに抜擢した。

こうした流れについて「NEWSポストセブン」は、『相次ぐ入社1年目女子アナ抜擢、「30歳定年説」早める可能性』と報じた。

記事では上智大学文学部教授(メディア文化論)の碓井広義氏が、<以前はタレント性のある人を選んでアナウンサーに育てていましたが、近年はタレントをアナウンサーにしているというのが採用の傾向>としたうえで、<逆に言えば、テレビ局側は新人教育に時間をかける余裕がない><テレビ離れが指摘され始めたころから、即戦力を採用しようという動きが俄然強まってきました>と分析している。

弘中綾香アナにも退社の噂が……テレ朝の人事に不満?

一方で、テレ朝では中堅アナの退社が続出している。2009年入社の宇賀なつみアナは3月いっぱいで、2007年入社の小川彩佳アナも時期は「調整中」としながら退社を発表しており、両者とも会社を辞めてフリーアナウンサーに転身する。

テレ朝の報道を支えてきた看板アナたちの退社について、25日付の「デイリー新潮」がその背景にある問題を伝えている。テレ朝では報道番組のうち3本のメインキャスターが局アナではなくフリーアナとなっているが、<テレ朝では上層部が、番組の知名度上昇や話題作りを狙い、『他局で人気になり、フリーに転身したアナを起用しろ!』とトップダウンで指令を出す>のだという。業界内では<テレビ朝日が番組制作の方針を変えない限り、退社する女性アナは増える>と囁かれているとのことだ。

人材流出が止まらないテレ朝だが、次世代エースと評される弘中綾香アナの退社説まで浮上している。これは「FLASH」3月5日号(光文社)に詳しい。弘中アナは昨年10月に動画配信サイト「Tiktok」のアカウントを開設。セーラー服やナース服姿で撮影した動画を投稿していたが、現在は更新がストップしている。同誌によれば、<番組制作の担当部長が『アナウンサーをアイドル扱いするな』というTikTok禁止令が下り、企画が急遽中止になった。すでに撮影を終えた動画もあった弘中アナは『やれって言われたから、やっていたのに!』と怒っていた>とのことだ。

たったこれだけのことで弘中アナが退社するというのも考えづらいが、この報道後の26日、弘中アナはInstagramを開設。アカウントのトップページに<管理人さん(上司)が管理しています>と断り書きしたうえで、その意図について<『激レアさんを連れてきた。』の放送時間のお引越し“4月から土曜10時10分”を沢山の人に知ってもらう!! ><若い人たち(年齢・気持ちどちらか若ければオッケーです)と繋がる><弘中がこんな人だよと知ってもらう>と説明している。

Instagramは弘中アナなりの広報活動のひとつで会社公認のようであるが、もしテレ朝の上層部に「アナウンサーをアイドル扱い」しないとの意向があるとするなら、矛盾も生じる。もっとも、テレ朝では竹内由恵アナや田中萌アナもインスタアカウントでPR活動をしてはいるのだが。

かつて「女子アナ30歳定年説」というものがあった。女性アナウンサーは若く美しい番組アシスタントであり、30代を過ぎれば異動を促されるため20代のうちに寿退社するのが良いとされていた時代だ。しかし今時、こんな時代錯誤は通らない。20代で積んだ経験を活かし30代を過ぎても最前線で活躍する女性はもはや異端の存在ではないのだ。

だがテレ朝が報道畑の小川アナや宇賀アナを冷遇し、またバラエティで頭角を現した弘中アナを持て余しているのだとしたら、その人事は適材適所といえるのか疑問が残る。新人起用でのテコ入れは奏功するのだろうか。

(WEBマガジン「wezzy」 2019.03.01)