碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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NEWSポストセブンで、「ムロツヨシ」について解説

2018年10月30日 | メディアでのコメント・論評


『大恋愛』で注目ムロツヨシ 
なぜ美女の相手役に選ばれる?

戸田恵梨香(30才)主演、その恋人役をムロツヨシ(42才)が演じるドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)が好調だ。平均視聴率は第1話10.4%、第2話10.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と2桁台をキープしている。

パナソニックリフォームのCMでは、石田ゆり子(49才)の夫役となったムロ。開設された“夫婦SNS”で日常生活を発信し、「本当の夫婦のようだ」と評判になった。ほかにも、9月から放送されているアサヒグループ食品『MINTIA W&C』の新CMでは、患者役として看護師役の松岡茉優(23才)と共演している。ムロはなぜ美女の相手役に選ばれるのか――。

上智大学文学部教授(メディア文化論)の碓井広義さんが分析する。

「美女と野獣とまではいきませんが、二枚目ではないからこそ、美女が引き立つという理由もあるでしょう。ですが、『大恋愛』を見ていても、ムロさんは戸田さんの演技をしっかりと受け止めているし、ムロさんだからこそ単純な“格差恋愛モノ”にとどまらない作品になっていると言えます」


ネットでも「ムロさんカッコイイ!」という声が多く投稿された。視聴者がこれまでコミカルな役どころが多かったムロの新たな魅力に引き込まれているのがわかる。

「俳優として分類するなら、ムロさんは個性派俳優にジャンルわけされていると思いますが、私はどこにも属さない“ムロツヨシブランド”を確立している気がします。黙っていても笑っていても、何を考えているかわからない顔立ちも含めて、ムロさんは何か起こしそうな雰囲気を持っているので、見る側としては心がざわめきます。相手役の女優にしてみても、自身のプラスアルファを出さないとムロさんの個性に対抗できないから、いつもと違う面が見せられるのだと思います」(碓井さん、以下「」内同)

『大恋愛』は、若年性アルツハイマーに冒された女医(戸田)と、彼女を支え続ける元小説家(ムロ)の王道ラブストーリー。ムロの役柄は、親に捨てられ、児童養護施設で育ったフリーターだ。

「元小説家の役は、いわゆるイケメン俳優でも成立します。でも、あの詩的な言葉を普通の二枚目俳優さんがやっていたら、嘘くさく見えてしまう。ムロさんだから、複雑な過去を背負うちょっと変わった男の役を自然に演じられている。しかも難病を抱えたヒロインの恋愛ドラマなんて、下手をしたら陳腐化しそうな題材を、“ムロツヨシブランド”が入ることによって新鮮に感じさせています」

ムロはコメディアン的なキャラもあることから、美人と絡んでもやっかみを受けないメリットもあると碓井さんは指摘する。

「第1話で、戸田さんとの濃厚なキスシーンが話題になりましたが、ムロさんは戸田さんファンから攻撃をされることもなく、ネットではむしろ好意的に受け止められていました。逆に言うと、美人女優さんだって二枚目俳優とラブシーンを演じると、やっかまれる可能性だってある。それがないというのも女優にとっては安心材料になります」


実際に、『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』(フジテレビ系)では、藤井流星(ジャニーズWEST)のファンが、「中山美穂とのラブシーンは見たくない!」と、悲痛な声をネットであげている。

「この秋ドラでムロさんは、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)でコメディタッチの役でも登場しています。『大恋愛』とのギャップはすさまじい。ムロさんの役者としての奥行きを再確認させられました。ムロさんの演技によって“新しい魅力を引き出してほしい”という女優は今後増えていくかもしれないですね」

黒木華(28才)、新垣結衣(30才)、芳根京子(21才)ら、女優の中にも実はファンの多いムロ。今年1月クールの連続ドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)で共演した吉岡里帆(25才)から「私の分岐点にムロさんが立っている」と役者として絶賛されたこともある。ムロと次にラブストーリーを演じる女優はいったい誰か?

(NEWSポストセブン 2018.10.28)