碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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週刊朝日で、有村架純主演「中学聖日記」について解説

2018年10月22日 | メディアでのコメント・論評


有村架純が「中学聖日記」で
40代女性の”敵”になってしまったワケ

秋の連続ドラマが次々とスタートしたが、大苦戦しているのが「中学聖日記」(TBS系、火曜午後10時)。有村架純演じる中学校教師と男子生徒の“禁断の恋”を描くストーリーだが、視聴者のターゲット層でもあり、中学生の息子を抱える40代女性は違和感を覚え、むしろ有村を「敵」と見なす傾向があるようだ。

有村架純が演じる中学校教師の聖が、年上の婚約者と遠距離生活を送りながら、担任を務める3年1組の生徒である晶(岡田健史)にひかれていく……というストーリーで、原作はかわかみじゅんこ氏による同名漫画。
 
しかし、この設定に、ネット上では「気持ち悪い」「ありえない」などと、不満の声が噴出している。前クールでは“ぎぼむす”こと「義母と娘のブルース」が話題を呼んだ火曜午後10時枠だけに、なんとも痛々しい。

この理由は何だろうか。上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、女性教師の恋愛相手が男子中学生である設定への「無理やり感」と指摘する。

TBSの番組ホームページでは、堂々と「禁断×純愛ヒューマンラブストーリー」と掲げているが、碓井教授は「今までにない、新しいことをやる。そんな話題を集めるために、テーマとして『中学生』を設定したように見えます。『女性教師が男子中学生に恋をする』ことで、視聴者が感じているのは、2次元だから成立する原作の世界を、実写で表現されたことによる違和感や嫌悪感なんじゃないでしょうか」と話す。

実写化の違和感は恋愛の設定だけでなく、キャストにも及ぶ。晶役の岡田健史はこのドラマが初仕事となる正真正銘の新人なのだが、年齢は19歳。瞳に力があり、初恋の相手である晶に真っすぐに思いをぶつけるキャラクターは、初々しい演技にマッチしているが……。

「役者としてはいいと思うけど、中学生に見えない。大人っぽい中学生と呼ぶことにも、視聴者は無理やり感を覚えるでしょう」(碓井教授)


TBS系列ではこれまで、真田広之主演の「高校教師」(1993年)や、松嶋菜々子と滝沢秀明の「魔女の条件」(99年)を放送してきており、教師と生徒の恋愛ストーリーには実績がある印象がある。

ドラマの視聴者は40代の女性が中心。前出の2作に見入った人も多いだろうが、自分の恋愛体験を振り返っても、「中学生で、しかも教師相手に」というのは、まったく想像がつかない人もいるに違いない。「『高校教師』を見ていた視聴者は、『2人に幸せになってほしい、でもどうなる?』という“見守り型”でストーリーについていった。でも今回は違う」と碓井教授は言い切る。

「ましてや、40代女性には中学生の息子がいる人も多いでしょう。その人たちからすると、聖は敵です」(同)


むしろ共感できる役がいるとすれば、晶の母・愛子ということか。

さらに碓井教授は「原作漫画と同じタイトルにしたのは失敗ではないでしょうか」と、タイトルにも言及する。「中学聖日記」というタイトルは、「中学“生”日記」や「中学“性”日記」を連想させる。現に、編集部のおじさん記者たちは、タイトルの響きで「中学“性”日記とは……」と絶句していた。

「私のゼミの女子学生たちは、お母さんと一緒にドラマを見る子が多いんです。ただ、このドラマに関しては、親子の会話が成立しにくいんです。お母さん、『中学聖日記』見ようとか、娘に対して、今夜は『中学聖日記』ね、とか。タイトルからして垣根があります」(同)


舞台となる片田舎の町・子星平の風景は美しいし、婚約者の上司である律役の吉田羊が演じるバイセクシュアルの役柄も魅力的だ。番組スタッフ陣を見ても、演出とプロデューサーは、第55回ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞を受賞した「アンナチュラル」の最強タッグだ。同作を見て期待を寄せていた視聴者もいるだろう。

「こうした条件があるのに、もったいなくて仕方がない。禁断と純愛のヒューマンラブストーリーである以上、このドラマはこれから先、女性教師が男子中学生に手を出した、ではなく、なんとか純愛にしなきゃならない」(同)

後半はドラマオリジナルストーリーにしていくと表明している。巻き返しの見込みはあるのだろうか……。(本誌・緒方麦)

(週刊朝日 2018.10.20)

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