碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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綾瀬はるかの大奮闘アクション「精霊の守り人」

2016年03月23日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、NHK「精霊の守り人(もりびと)」を取り上げました。


NHK「精霊の守り人」
魅力的な世界観を提示できるかどうか

先週から、“放送90年大河ファンタジー”と銘打つ「精霊の守り人」が始まった。

事前のPRで、主演が綾瀬はるかであることは分かったが、「ファンタジーって何?」と思った視聴者は多かったのではないか。ざっくり言えば、「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」などのような、架空の世界での物語だ。

「精霊」の舞台となるのは新ヨゴ国。「太古、南の大陸にあったヨゴ国から、トルガル帝が民を率いて北の緑豊かな土地に移り、建国した」と言われて、ついていけないという人がいるはずで、決して万人向けのドラマではない。

綾瀬が演じるバルサは短槍使いの女用心棒。新ヨゴ国の第二王妃(木村文乃)が生んだ王子(小林颯)を、息子の命を狙う王様(藤原竜也)から守るために戦う。

綾瀬のアクションシーンはなかなか見事で、かつて女座頭市を演じた映画「ICHI」を思わせる。いや、むしろスローモーションを多用しない分、こちらのほうがキレがある。

架空の世界での物語で重要なのが「世界観」だ。登場人物たちの人間像はもちろん、時代や場所、国家の歴史、人びとの生活や風俗といった無数の「設定」があり、その総体が「世界観」と呼ばれる。

今後、どれだけの奥行きと広がりをもつ、魅力的な世界観が提示されるのか。成否の分かれ目はそこにある。

(日刊ゲンダイ 2016.03.22)