碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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漫画好きには堪えられないディープな時間 「浦沢直樹の漫勉」

2016年03月16日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、Eテレ「浦沢直樹の漫勉」について書きました。


NHK Eテレ「浦沢直樹の漫勉」
漫画好きには堪えられないディープな時間

東京・世田谷文学館で開催中の「浦沢直樹展・描いて描いて描きまくる」(今月31日まで)を見た。迷路のような壁面を埋めつくす、膨大な量の原稿。しかもその一枚一枚が、当たり前だが、手で描かれた一本ずつの「線」で出来ているのだ。「YAWARA!」も「20世紀少年」も、こうして生み出されたかと思うと感動すら覚えた。

そんな浦沢が、これぞという漫画家たちの“創作の秘密”に迫っているのが、「浦沢直樹の漫勉」である。4日間ほど、漫画家の仕事場に複数の定点カメラを設置し、ペンの動きからつぶやきまでを記録。1ヶ月後、その映像を見ながら、本人と浦沢が語り合うのだ。

14年のシーズン0では「沈黙の艦隊」のかわぐちかいじ、昨年のシーズン1では「ゴルゴ13」のさいとう・たかをなどが登場した。そして今期の初回は、「ポーの一族」や「11人いる!」の萩尾望都だった。

鉛筆の下書きをインクで引き直していくペン入れのシーンなど、つい見入ってしまう。何たる繊細さ。納得いくまで手を止めない集中力と執念。特にセリフ以上に登場人物の心情を語る、萩尾独特の「目」の描写が圧巻だ。

また、浦沢の質問に答える形で、萩尾が「問題に直面している大人を描くのが、面白い」などと自己分析。漫画好きには堪(こた)えられない、ディープな時間が過ぎていく。

(日刊ゲンダイ 2016.03.15)



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2016年03月16日 | 気まぐれ写真館