人間とは
ただ雑多なものが流れて通る
暗渠(あんきょ)であり、
くさぐさの車が轍(わだち)を残してすぎる
四辻(よつつじ)の甃(いしだたみ)に
すぎないやうに思はれる。
暗渠は朽ち、
甃はすりへる。
しかし一度はそれも
祭りの日の四辻であったのだ。
(暗渠=地下に埋まった水路)
三島由紀夫 『宴(うたげ)のあと』