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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

昨日(22日)の「読売新聞」朝刊でのコメント

2008年07月23日 | テレビ・ラジオ・メディア
昨日(22日)の「読売新聞」朝刊、番組面の記者コラム「モニター」に、コメントが掲載された。この日のタイトルは「テレビ通販の危うい傾向」。

コラムでは、公正取引委員会が、乗馬型フィットネス器具を扱っていた通販番組に関して、テレビ朝日に「警告」したことに始まり、放送局がCM収入の落ち込みを埋めるべく通販事業などにまい進する状況を説明。さらにBPO(放送倫理・番組向上機構)でも、生活情報番組の一部として商品の通販をしていることについては「区別が明確でないのではないか」と疑問視する声が出たことを伝えている。

そして、特にテレビ局が直接制作にかかわっている通販番組では、視聴者に誤解を与えて商品を購入させた場合の責任は重いとした後、私のコメントが出てくる。もちろん、例によって、かなりの量を話した中から抽出されたものだ。

  「通販番組はテレビ局が発信元だけに、視聴者に訴えかける力が強い。
   視聴者を消費者と見なし、直接の商売相手とする傾向の危うさを自覚
   しなければならない」

このコラムが書くように、テレビ各局は、広告収入減少への対策として、放送以外の事業を大きく展開している。フジテレビも昨日、「ブライダル事業」への参入を発表した。営利事業者としては当然なのかもしれないが、一般企業との違いも多々あるのが「放送という事業」であり、その在り方については今後も議論が必要だ。

テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0
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本好きが「これが出るのを待っていた」と言える本

2008年07月23日 | 本・新聞・雑誌・活字

「これが出るのを待っていた」と言える本を手にした時の嬉しさといったら・・・。

倉本四郎さんが「週刊ポスト」で書いてきた書評をまとめた『ポスト・ブックレビューの時代~倉本四郎書評集 上巻 1976-1985』(渡邉裕之:編、右文書院)が出た。

あらためて知って驚くのは、あの「ポスト」の書評が1976年から97年まで、21年間も続けられたということだ。

毎週毎週、何冊もの本を読んだ上で、取り上げる1冊を決定し、著者にインタビューを行い、またはその本に関心をもつ人物たちと会話をして、1本の原稿としてまとめる。それを21年! 

上・下2巻本となる予定の1冊目であるこの本には、約1000本の書評原稿から100本が選ばれ、年代順に並んでいる。冒頭76年のページの、1冊目は、梶山季之さんの『小説GHQ』、2冊目が植草甚一さんの『いい映画を見に行こう』である。もう、これだけで嬉しい。

梶山さんは、この頃、すでに亡くなっていて、「架空インタビュー」という形になっている。もちろん、勝手な想像で書かれてはいない。梶山さんを知る方々への取材を経ての「架空」である。まさに倉本さんの”芸”。

植草さんの本は、当時刊行が始まった『植草甚一スクラップブック全41巻』の中の一冊だ。インタビューに答えているのは、紀田順一郎さんや久保田二郎さんたち。これまたゼイタクだ。

他にも、『怪しい来客簿』について語る色川武大さん。『死の棘』をめぐって冷静に(?)振り返る島尾敏雄・ミホ夫妻。まだ「知る人ぞ知るの時代」の荒俣宏さんと『図鑑の博物誌』などなど。

書き出すとキリがないが、倉本さん自身が「会いたい」と思った著者、「話したい」と思った書き手は、いずれも一筋縄ではいかない人たちであり、それを文章という縄で、見事に捕らえてしまう。やはり、倉本さんも只者ではないのだ。

また、倉本さんが選らんだ本を見ていると、いわゆるベストセラー系はほとんどない。巻末の解説で、松山巌さんが述べているように、「職人仕事、芸、技についての著作が多い」。私自身も、倉本さんの書評を読まなかったら、手にしなかったかもしれない「いい本」に何冊も出会えた。

これも松山さんがズバリと書いている。倉本さんの書評からは「人生の秘密が垣間見える」と。そうか、そうだったのかと、今さらながら、倉本書評の魅力が理解できた。

うーん、下巻の出版も待ち遠しい。上下併せることで、広大な<倉本ブックワールド>が少しは見てくるはずだ。

ポスト・ブックレビューの時代 上 1976-1985―倉本四郎書評集 (1)
倉本 四郎
右文書院

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