数日前、何気なくNHKの「Eテレ」にチャンネルを変えた。画面いっぱいに「紙折り」の光景が眼に入り、二人の女性の手元だけが映し出されていた。ナレーションからして、「唐紙(とうがみ)」を用いて「箸袋」を折っているようだ。画面は二人の女性の指先と、折り上がって行く箸袋をアップでとらえていた。
そこに《KYOTOのハンサムウーマン》というタイトルが流れ、番組が終りに近いことを告げた。そのとき眼に留まったのは、一人の女性の色鮮やかな「ブルーのマニュキア」だった。その瞬間、筆者の頭の中を一つの “懸念”がよぎった。
ーー『NHKも配慮が足りなかったのでは? 指先のアップ撮影が必然であるのに、あのように派手なマニュキアをした女性を出すなど……。「唐紙」の模様や色合いの繊細な美しさを損ないかねない。人一倍 “美意識” や “こまやかな感性” が求められる仕事であるはずなのに……そしてそれに携わる人の「唐紙」や「仕事」にかける思いに対し、礼を失することにならないだろうか』
……と、懸念した “時間” は “ほんの数秒” だった。
次の瞬間、画面は一人の女性の顔のアップに代わり、すぐに「二人の女性」の「ツーショット」へと移った。「主役の女性」は「唐紙師」の女性であり、「聞き役の女性」は、女優の「とよた真帆」さんだった。
☆
「ブルーのマニュキア」をしていたのは、何と「唐紙師」の女性の方だった。筆者は少なからぬ衝撃を受け、しばしその意味と紛れもないその事実とにとまどった。
彼女は「アラフォー世代」の人だろうか。番組の終了間際に、「唐紙」についてのまとめの言葉を述べていた。だが筆者の耳には、まったく入って来なかった。
筆者が唯一記憶していることは、とよた真帆さんの黒髪と、その指先に微かに光った透明マニュキアのささやかな輝きだった。それだけに、筆者にはとよた真帆という女優がいっそう魅力的に感じられた。
それから「番組」が終了するのに、2分とはかからなかった。筆者の脳裏に「ブルーのマニュキア」と「透明のマニュキア」とが、鮮やかな対比となって残った。そのため、肝心の「唐紙」のデザインや色合いその他について、ほとんど思い起こすことができない。
☆
それにしても、最近テレビでよく見かける「色鮮やかなカラーのマニュキア」や「数々のネイルアートグッズ」――。芸能タレントやお笑い芸人、それに演劇やCMでの使用であれば、それはそれで意味があるのだろう。
だがそうではあっても、「とき」と「ところ」を弁えて欲しい。ことに報道番組のキャスターやアナウンサー、それに文化番組の出演者については。
清新な「朝のニュース」を読みあげるとき……、新鮮な海産物を手にしたり、何か口に入れたりするとき……。派手なネイルカラーやネイルアートは控えて欲しいとしみじみ思う。……もっともそれが「きゃりーぱみゅぱみゅ」という女の子であれば、 “それなりの趣き” があるような気がするのだが。
★★★★★★★ きゃりーぱみゅぱみゅ ★★★★★★★
――すご~いことだわ! あなたの口から「きゃりーぱみゅぱみゅ」の名前が出るなんて……。
あの子の本名は「桐子ちゃん」って言うの。「きりこ」が「きゃりこ」……そして「きゃりー」になったのよ。高校時代に「金髪」のウィッグをつけていたので、アメリカの女の子らしく「キャリー」になったみたい。
知ってる? 「ぱみゅぱみゅ」の「ぱみゅ」はギャグなんですって。でも「きゃりーぱみゅぱみゅ」って、実は略称なの。正式にはず~っと長いのよ。「きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ」ですって。
ねえ? 噛まないでおっしゃってみて? ……………聞いてる? ね~え? あれっ? 眠ちゃったの?