『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

囲碁のこだわり―後編②(最終回)/桂盤と栗碁笥と硝子の碁石

2019年03月10日 17時50分07秒 | ■囲碁・将棋

  ルビコン川の向こうに   

 賽は投げられた! あとは《ルビコン川を渡る》=《囲碁3点セットとの対面》のみである。それがすべての始まりであり、また終わりでもある。

 その夜ーー。我が「カイサル(=シーザー)」は、5,000 yen」なる「貨幣」と〝交換〟可能な〝商品の価値〟について、密かに〝経済(観念欠落)学〟的分析を試みていた。

 言うまでもなく、ここでの「商品」とは「碁盤」一つに凝縮されるものであり、それがはたして「厚さ4寸(12㎝)以上の無垢榧盤」であるか否かということに尽きる。そのため彼は、「ジモティー」に掲載された「碁盤」の「写真3様」について、以下の「3点」を中心に検証を重ねた。

 ①碁盤の「樹種」は「材」or「材」。またはそれ以外なのか。

 ②その碁盤は「無垢材」or「加工材」。

 ③その碁盤の「厚み」は「何寸(㎝)」なのか。

 「写真」を縮小・拡大しながら、特に「盤面」の「木理(もくり=木目)」と「断面」を見極めようとした。結論として「樹種」の断定はできないまでも、明らかに「無垢材」であり、「厚み」も〝4寸2分ほど〟あることが判明した。その「数値」は、写真の「長径」と「厚み」の〝縮尺率〟から割り出したもの。カイサルは沈着冷静に、科学的合理性に富む対応を遺憾なく発揮したのだ。

 その結果、この時点すなわち〝ルビコン川を渡る以前〟に彼は早くも確信した。少なくとも《負けはない ❢ 》=《一応、購入か否かの対象にはなる》=《門前払いではない》。

 ※なお「掲示板」を通した「X氏」との「Q&A」のメールによって、「碁笥」は「栗」、「碁石」は「ガラス」ということが判明。しかし「碁盤」の樹種については判断が付かないとのこと。

            ★

 そして翌12月29日土曜日午後2時ちょっと前、カイサルは、予定通りスーパー駐車場のX氏」の車にあった「碁盤」と対面した。すなわち《ルビコン川を渡った》のだ。見事なシルバーヘアのX氏の推定年齢は、おそらくカエサルと同じ〝団塊の世代〟か年上の方だろうか。

 「囲碁はなさらないのですか?」 と言うカイサルの問いに、X氏は答える。

 「ええ。まったくしません」 そして〝ひと呼吸〟おいたX氏は、カエサルが「碁盤」の表面にそっと手を置いたのを確かめると、遠慮がちではあっても自信をもって〝さりげなく〟言った。

 「10,000円はするようですね」 ※注:もちろん「碁盤」だけの価格を意味する

 ……カエサルは、その〝ひと言〟に小さく頷きながらも、「碁盤」と「碁笥」の〝商品価値〟を〝超高速回転の脳髄〟で検証した。……「碁盤」には木質の汚損や欠損はなく、使用された痕跡も感じられない。「碁盤」は「榧盤」ではなかったが無垢」の「桂盤。カエサルは、その厚みが間違いなく「4寸2分あることを〝視覚〟と〝手触り〟で確認し、次に「碁笥」の独特な「目模様確認した。

 ……両確認タイムの合計=《only 10 seconds》……そして〝超々高速の最終決断〟を下す。言うまでもなく、あの

 (われ) 来た! 見た! 買った!

 ……である……その瞬間、カエサルは自らの気持ちに区切りをつけるかのように、

 「いただきましょう」……そう言うとブレザーの内ポケットから、事前に用意しておいた「封筒入り」の「5千円のピン札」をX氏に確認してもらうと、再びすみやかにそれを封筒に戻し、X氏に渡した。〝超々高速の手際よさ〟であり、〝円熟の境地〟に近づきつつある〝さりげなさ〟だった。

             ★   ★

 その夜の「掲示板」のX氏のメッセージはーー、

 『おかげで、とても良い取引ができました』(原文のまま)

 であり、無論、我がカエサルも、長文のメッセージを「掲示板」に返した。

 ……とここで〝一部の読者氏は〝疑念〟を持たれたに相違ない。前回記事の「X氏」による「掲示板のメール」では―ー、

 【……価格はあくまでも参考にしてます、希望価格の問い合わせをお待ちしてます】となっていたのでは? ……そうであれば当然そこに、

 A:価格交渉の余地〟があったのでは? 

 そしてこの〝疑念:A〟により、また〝別の一部の読者氏〟は、次のような新たな〝疑念〟を抱かれたに相違ない。カイサルが「5千円のピン札」を〝わざわざ封筒に入れてブレザーの内ポケットに準備完了〟していたという事実に対し、

 B:彼はルビコン川を渡る以前、すでに価格の〝引下げ交渉〟をする意志〟など毛頭なかったのでは

 結論を急ごう。……そうなのである。すなわちカエサルは、X氏の提示価格「5,000 yen」が、当初予算below 10 thousand yenを大きく下回ったことにより、あえて「価格引き下げ交渉」をする必要を感じなかったのではなかろうか。

 それに加えて、目の前の「碁盤」も「碁笥」も想像以上に品物がよく、しかもX氏はどうやら「目上の方」。さらに〝あと2日半〟で「新たなる年」を迎えようとしている〝時〟。……加えて、取引価格が「50,000 yen」というのであれば、多少の交渉の余地はあったかもしれない。……が、たかだか「5,000 yen」ではないか。

 ……そう。我が「ユーティリタリアン」カイサルは、彼なりの〝最大多数の最大幸福〟を自らに言い聞かせていたのかもしれない……。というより、生来の〝経済観念欠落性価格交渉不適応症状〟にすぎなかったのだろうか。ともあれ、これ以上詮索することは控えよう。

            ★

 硝子の碁石を洗う

 かくして、年も押し詰まった2018年12月29日 pm5:00。「桂の碁盤」と「栗の碁笥」と「硝子の碁石」を手に入れたカイサルは、まず「桂盤」と「栗碁笥」をじっくりとタオルで〝空拭き〟した。次に「バスユニット」にて「硝子製の白黒の碁石」を洗面器に入れ、そこに洗剤と水を入れた。

 それを終えたカエサルは、以下のような〝予定〟を〝瞬時に起案〟した。

 ①きっかり2時間経過後に「硝子の碁石」の「洗浄/拭上げ」を完了。

 ②上記①の完了後、直ちに「バスユニット」全体の「洗浄/洗出し/拭上げ」に着手及び完了。

 ③上記②の完了後、直ちに「部屋全体の本格的な整理整頓/清掃」に着手及び完了。

 すなわち彼は、「硝子碁石」の〝洗浄〟を機に「年末恒例の大規模な片付けと大掃除」をやろうというのだ。

            ★   ★   ★

 結論を急ごうーー。カエサルは上記①について、手際よく確実に作業を進めた。素材が「硝子」ゆえ、限りなく慎重かつ丁寧に〝洗浄〟し、その「ひとつずつ」を愛情深く慈しむような優しさで〝拭き上げ〟た。

 ……だが……上記①の作業完了後、カエサルがその後②の作業を完了し、③の作業に着手したという形跡は一切見られない。カエサルは①の作業終了後、ロフトに「碁盤・碁笥・碁石」を持ち込み、32年と1か月ぶりに触れた「碁石」と「碁盤」の感触にいたく感激したようだ。そして「名局」と言われた名人戦や本因坊戦をはじめとする「ネット上の棋譜」をひたすら並べ、それ以降のほぼ1週間、読書すら中断するほど没頭しきっていた。(了)


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする