ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

今日は〝六月尽〟です…が、いつも思うことは…?

2024年06月30日 | 俳句

 今日で6月が終り、明日から7月…ということは、半年が過ぎるということなんですよね。でも、どなたかのブログを読んだら、今年は閏年だったから366日。だからその半分は183日で…その日は7月1日なんですって。まあ、そういう細かいことはいいとして、とにかく今年も半分は終わったということ。

 歳時記に〝水無月尽(みなづきじん)〟という季語がありますが、それについては〝陰暦六月の尽きること。すなわち暦の上で夏が終わること。一年の半分が経過する節目であり、この日に身の穢れを祓う習慣が水無月祓(はらえ)あるいは夏越(なごし)の祓である〟と、小川軽舟氏が解説しています。

 私も以前この日に近くの神社へ行くと〝夏越の祓〟が行われていて、参詣者はみんな茅萱で作った〝茅の輪(ちのわ)〟を潜って穢れを祓い、無病息災を願っていましたものね。一年の半分を無事に過ごせたという感謝と、またこれからの半年も無事に過ごせて新しい年が迎えられますように…と神様に祈る気持ちには大いに納得です。しかし私は、これで〝夏が終わる〟という感覚にはどうしてもなれないんですよ。それはきっと陰暦の行事を陽暦の日にちで行うからなのでしょうがね。

 〝一年の半分が経過する節目〟というのはその通りで実感しますが、しかしそれはあくまで〝六月(ろくがつ)〟の終わりとしてですもの。〝水無月〟と言えば陰暦ですから、大体陽暦8月7日か8日ごろの立秋までの1ヶ月です。だから軽舟氏も、〝水無月の終わりといえばそうした信仰行事と結びついた季節感があったはずだが、現代においては実感しにくい〟と、解説の最後に書いておられます。

  草の戸や畳替へたる夏祓へ     炭太祇

 この句はやはり、陰暦の水無月尽での〝夏祓〟でしょう。ジメジメした梅雨の時期から暑苦しい真夏をやりすごして、明日からは空気の澄んだ秋の気候へと変わっていく…ならこの粗末な家もせめて畳ぐらいは替えてすっきりとして夏祓えを…という句意でしょうか。だとすれば今の六月の終わりではこのような感慨は絶対に生まれてこないでしょうからね。

 しかし、〈また雨の降つて来さうな茅の輪かな  星野麥丘人〉のような句になると、今の梅雨最中のどんよりした曇り空の下での茅の輪を想像してもいいでしょう。ということは、〝夏越〟や〝茅の輪〟という季語は、一応晩夏だからその季節感を厳密に守って伝えねばということよりも、内容の〝邪神を祓いなごめる〟ための行事という本意を理解して詠む方がいいのだと思います。

 下の写真は、以前〝夏越大祓〟に行って貰ったお守りと、中津瀬神社の〝茅の輪〟です。

 調べてみると、この行事を行っている神社では、陽暦の6月30日とか、または月遅れの7月31日などと様々なんですが、人というものはいつの世も健やかに元気で生きること、すなわち長寿を願うものだということ。これは古今東西普遍的なことでしょうからね。そういう民俗信仰に由来するような季語においては、特にその本意をしっかり理解して詠むことが最も大切なのではないでしょうか。

 ちなみに、〝水無月〟という意味は、一般的には炎暑のため水の無くなる月の意です。だから〝常夏月〟とか〝風待月〟などとも言いますから、陽暦の六月を指すのはおかしい。やはり梅雨が明けてからの小暑大暑のころが相応しいでしょう。だから次のような句も生まれるのですよ。

  水無月や風に吹かれに古里へ    上島鬼貫

 ついでに言えば、明日から7月ですが、それを〝文月(ふみづき)〟とは言ってほしくないです。歳時記にも〝文月〟とは〝語源は諸説あるが、「文披月(ふみひらきづき)」の転じたものとされてきた。短冊などを手向ける七夕の行事にちなむものである〟と。だから〝文月とは七夕の月と理解しておけば本意を外すことはない〟とも、軽舟氏が解説しています。ということは、〝文月〟も〝七夕〟も初秋の季語ということ。決してまだ梅雨も明けていないような陽暦の〝七月(しちがつ)〟には使ってほしくないのです。

  文月や六日も常の夜には似ず    松尾芭蕉

 有名な芭蕉の句ですが、これは〝やはり七夕月だなあ。前日の六日でさえ常日頃の夜空とは違って、こんなにも澄んでいるのだ〟と、夜空や星の美しさを讃えて詠んでいるんです。絶対に陽暦の七月ではありえませんからね。

 このことについては確か以前にも何度か書いています。陰暦の月の呼称を簡単に陽暦に当てはめてほしくないと…言葉を知っているからではなく、意味を理解して使ってほしい。言葉というものには必ずそう表現されるべき何らかの語源があるのですから。どうか皆様よろしくお願い致しますね。  

コメント (3)
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