G・K・チェスタトン=福田恆存+中村保男訳 1959年 創元推理文庫版
丸谷才一さんが、「大人の童話の最上のものの一つ」と評しているんで、読んでみようと思ったブラウン神父。
これは7月だったかな、地元の古本屋でそう思ったらさっそく買った文庫なんだけど、ちなみに1975年14版。
ところが、これは短編集の三番目ということを知って、やっぱ順番にと思って、「童心」と「知恵」を読むのを待ってから、最近やっと読んだ、これは旧版文庫なんだと、新版二つ見てから気づいた。
原題「THE INCREDULITY OF FATHER BROWN」は1926年の刊行、前作から12年経っていたんで、巻頭作の題名が「ブラウン神父の復活」なんだという。
扉のとこに、「全作品中の最高作「犬のお告げ」以下八作品を収録」なんて書いてあるんで、期待して「犬のお告げ」読んだりしたけど、べつにそんなに感心はしなかったな、罰当たりな私。
ホームズのように煙草の灰を観察するでもなく、スペンサーのように無駄口とピストルを撃ちまくるでもなく、関係者から話を聴いただけで論理的な解決に至る、というものなので、そういうの好きなひとは好きなんでしょう。
前作から時間があいたせいなのか、主人公がアメリカへ出かけてったりして、世界をまたにかける名探偵って新機軸なのかと思ったけど、出かけるのはあくまで本業の神父の仕事、でもちょっとアメリカ文明批判をしてみたかった作者の意図はあるのかもしれない。
アッとおどろくトリックといったって、どっちかっていうと、最後にいままでいなかった犯人が出てきてもかまわない、みたいなつくりに近いと思って、それで楽しくだまされて読めればいいような気がする、だから「童話」としてはおもしろい。
ふしぎなことに、登場人物の多くは奇怪な事件を前に、奇跡だとか呪いだとか超常的なものを感じて騒ぐんだけど、神に仕える神父さんのほうは軽々しく奇跡なんて言わないで合理的というか理性的に思考する。
神への信仰と、一見理解できない出来事を神の仕業と片づけることは、違うんだよと言いたいから、わざわざ神父というキャラクターを立てたのかなと本書を通して読んだらいまさらながら感じた。
コンテンツは以下のとおり。
ブラウン神父の復活
天の矢
犬のお告げ
ムーン・クレサントの奇跡
金の十字架の呪い
翼ある剣
ダーナウェイ家の呪い
ギデオン・ワイズの亡霊