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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

邪魅の雫

2020-03-15 19:28:33 | 読んだ本

京極夏彦 2009年 講談社文庫版
出てるだけ読んでみようと思った京極堂シリーズ、去年のうちに買っといたんだけど、最近やっと読んだ。
読み始めたらサクサク進めるんだけど、厚いから実際に手に取って開くまでがなんか躊躇しちゃうようなとこある。
例によって妖怪に魅入られたかのように人を殺そうかというまがまがしい予感のような感じで始まるんだが。
物語の幕が開いてすぐの2章目で、薔薇十字探偵社に場面が移る、ここが早く出てくるとは意外な展開。
榎木津探偵の従兄というひとが調査の依頼に来たんだが、なんでも探偵に身を固めろと言ってるらしい。
榎木津礼二郎に縁談って、めちゃくちゃ面白そうなんだが、変なことに相手方から断ってくるという事態が続いていると。
それって何かの陰謀があるかもしれないから調べろというんだが、そんなこと探偵の下僕に依頼したら、「徹頭徹尾非常識で傲岸不遜で大胆不敵で粗暴で支離滅裂(p.64)」な探偵が激怒して出てくるんぢゃと期待したけど、探偵は姿を現さない(寝てる)。
やっと探偵が登場するのは、なんと705ページなんだから、気を持たせるったらありゃしない。
出てきたにしても、何故かいつもよりおとなしくて、「面白くないのか君は」とかセリフに過激さがない、ちゃんとそのあとで「この馬鹿者め」って一喝してるけど。
それにしても、見ず知らずのひとを道端で糾弾するって、さすが榎木津礼二郎。
探偵事務所に持ち込まれた案件とはべつに、警察を右往左往させているのは「大磯平塚連続毒殺事件」である。
連続とあるように、たしかに複数が殺されてるんだけど、名前を偽ってる登場人物などがいて、誰が殺されてんだかわかりにくい。
一見関係なさそうな被害者同士だったりすんのに、連続と断定されるのは犯行に使われてる毒薬が同じだと考えられるからで。
この毒が普通ではないので、警視庁の公安が捜査に出張ってくるんだけど、これが戦時中イヤな仕事に手を染めていた京極堂によれば、日本軍が開発した特殊な青酸化合物らしいと。
かくしてゴチャゴチャした事件を、例によって黒ずくめのなりで登場した京極堂が整然と話をまとめて解き明かすんだが。
いつもより榎木津探偵が元気がないのは、誰にも依頼されたわけでもないのに、湘南地方までやってきたのは、個人的な用事のためで、その心配事は他人には話したくないことだかららしい。
事件解決する気なんかないし、殺人事件は自分には関係ないことだってことなんだろうが、うーん、チトらしさが無くて残念。
それにしても、あいかわらず長い小説なんだが、なんで長いんだろうかと思ったら、たとえば第7章では榎木津のことを訊きに京極堂を訪ねていったのに、その話題になるのは最後の4ページくらいで、そのまえの40ページくらいは京極堂と作家の関口のあいだで、「小説は読まれるために書かれるものだし、読んだ者の解釈は凡て正解だ」とか延々と書評の議論なんかをして本題に入らなかったりすからではないかと。
でも、そうやって語られてることが、後々で効いてくるんで、ただ脱線しているわけではないところが油断ならないのがおもしろい。

コメント
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