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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

プロレスが死んだ日。

2018-05-05 18:11:11 | 読んだ本
近藤隆夫 2017年 集英社インターナショナル
なんか最近出版ブームっぽくて、それにまんまとのせられて読んでる、あのころのプロレス系の本。
UWF関係のを二冊読んだあとに、次読んでみたのは、これ、今年になってから買ったんだったけど。
副題は「ヒクソン・グレイシーVS高田延彦 20年目の真実」。いいねえ。
1997年の、8月にヒクソンと高田がやるという話が持ち上がったけど流れて、でもやっぱ10月に「PRIDE」が起ち上げられて、対戦が実現したところから、翌年の再戦、2000年の船木戦くらいまでのことが書かれてる。
著者はプロレスが好きで、大学に入ると編集部に押しかけるかたちで「週刊ゴング」に最初アルバイトで雇われ、以降もその道を進んだひとらしい。「ゴン格」の編集長とか。
なんつってもすごいのは、ヒクソンと親しくて、高田戦のために来日して2週間以上も山籠もりしてるところへ、訪ねていくのを平気で許されちゃうとこである。身内なみってことでしょ、それ。
タイトルにあるとおり、ヒクソン・高田戦で、プロレスのそれまでの歴史っつーか、持ってた意味みたいのが終わっちゃって、総合格闘技に比べてプロレスが下火になっちゃったいきさつみたいなのがテーマのひとつではある。
>ヒクソン×高田戦は誰のための闘いだったのか?
>「プロレス体験者」のための闘いだったのである。(p.73)
みたいに言ってて、自身も「プロレス体験者」だといい、「プロレス体験者」ってのは何かっていうと、
>子どもの頃にプロレスに出会い魅せられ、叶うことならプロレスラーになりたいと思い、プロレスラーこそが最強だと信じ、また、それはリアルファイト(真剣勝負)であり、それに対してアンチテーゼを唱える者からプロレスを守りたい……そう考えたことがある者が、「プロレス体験者」である。(p.53)
と定義している。うん、あるある。
で、いまの時代は、プロレスがリアルファイトかどうかってのは議論が済んぢゃってんで、そういうひとはいない、昭和のプロレス見てたひとのなかにしかいないって。うん、そうでしょう。
で、まあ、高田が負けたことによって、当時のプロレス関係者もべつに高田が最強だと認めてたわけでもないが、プロレスが最強だみたいなものが崩壊しちゃったと。
どうでもいいけど、ウラ話として、PRIDE1の開催が決まったとき、プロレス担当記者たちは、主催者は何者なんだとかかなり激しく聞いてきたってこと書かれてるのが、興味深かったりする。
プロレスって団体以外にも、マスコミまで含めて、共同体みたいな意識があって、よそものが勝手にイベント仕切ってんぢゃねえよって、排他的な感情がはたらいちゃうらしい。
それはおいといて、どうも、とにかく著者が、プロレス体験者の先鋒が、いちばんガッカリしたのは、高田が腕極められて、タップして負けたってことらしい。
勝つとは思ってなかったし、誌上での予想でもヒクソンのTKO勝ちって書いてたけど、それはレフェリーストップかセコンドのタオルでって意味で、あっさり参ったしてしまっては、プロレス最強を信じてたひとたちは、みんな裏切られちゃった、みたいな。
まあ、しかたないけどねえ。
それに比べて、ヒクソンからは、試合や場合によっては道場破りとの対戦に際して、どういう心構えで臨んでるかってことを、直接いろいろ聞いているんで、覚悟がちがうんぢゃないの、みたいに結論づけせざるをえないようだ、そこがプロレス体験者としてはツライとこなんでしょう。
実際、ヒクソンは、試合の2か月後の取材において、
>もし自分が、そんなピンチの場面に遭遇したらば、タップを拒むだろう。右腕を折られれば左腕で闘えばいい。そう思っている。(p.182)
みたいに答えたという。
常に真剣勝負に向き合ってきたヒクソンに対して、高田のほうは「ヒクソンとやりたい」っていうのは、ホントにリアルでって意味だったのかって疑問も呈している。仕事で、ってつもりはなかったのかと。
ついでに、その後のPRIDE5でのマーク・コールマン戦の高田の勝ちって、リアルぢゃないのでは、ってことも堂々と言ってる。黒歴史は消せないよ、とまでも。
章立ては以下のとおり。
第1章 嵐の船出
第2章 「プロレス体験者」
第3章 1988 リオ・デ・ジャネイロ
第4章 グレイシー VS UWFインター
第5章 山籠り
第6章 「冷たい雨」
第7章 再戦
第8章 フェイク
第9章 息子の死を乗り越えて

んー、私自身は、プロレスラーは好きだけど、プロレスは好きぢゃない、くらいの態度を表明して長いんだけど。
それでもなんでも、最近またプロレスの人気があるらしいのは、いいんぢゃないかと思ってる。
全然、レスラーの名前とか技とか詳しくないし、時の流れについていけないけど。
ただひとつ、中邑真輔がWWEで活躍してるってのは、えらいことだと思う。
これはけっこう話題になってるみたいなんで、試合の映像とか見てないけど、かなりいいとこまでいってるという認識でいる。
誰が正確に何と言ったかはしらないけど、その活躍をさして「あれ、真剣にやってるのか」といった意見のひともいるらしいが。
それはそっちのほうが愚であって、もし中邑真輔がWWEのベルトを獲ったら快挙なのにまちがいはない。
それに対して「真剣勝負で勝ったのかよ」みたいなこと言うひとは、たとえば映画とか音楽の世界的な賞をとった日本人に「それ、ガチでとったんですか」みたいなこと言うようなもんだと、私は思うんだけどねえ。
コメント
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