goo blog サービス終了のお知らせ 

many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

未確認尾行物体

2010-12-26 20:48:36 | 読んだ本
島田雅彦 昭和62年 文藝春秋
こないだ、ひさしぶりに島田雅彦を読んで、また昔のものを引っ張り出して再読してみた。
1987年の出版だけど、小説の舞台は、そこからすごい近い未来の1994年。
で、物語のテーマは、エイズ。
1987年に、エイズが世のなかで、どんな存在だったか忘れちゃったけど、90年代に起こるであろう、エイズを媒介とした人間の生き方についてって感じの小説。
当時もそういうテーマは珍しかっただろうけど、今もあんまり無いか、そういうの。
医者で、学生んときは成績トップで、皇太子の御学友っていう主人公が、謎の人物につきまとわれて、とうとうエイズに感染しちゃう。感染したあと、恐怖、否定、怒り、受諾の四段階を経て、さらにその先、世界と自分の間の境目がなくなっちゃってもかまわないという悟りの境地に達しちゃって、“人間以外のもの”に変わることまでをも受け容れるっつー話。
エイズとかって題材使うと妙にセンセーショナルな感じするけど、島田雅彦って、よくこういう自分って何だ、人間って何だ、みたいなことは書いてたような気がする。
表題作「未確認尾行物体」の英題「Unidentified Shadowing Object」は、もちろん「ウソ」のシャレ。小説とはウソを書くこと。
ほかに続編の短編「ビデオ・イコン」「エイズ友の会」「ウイルスの奇蹟」の3編と一緒に単行本になってます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする