ゲッチョのコラム

カマキリ広報パートⅡからゲッチョのコラムにタイトル変更しました。再開します。よろしくお願いします。

お知らせ

2013-11-08 22:57:11 | 出版情報


丸善出版から、どうぶつ社で刊行していた『冬虫夏草の謎』が復刊されました
1800円です

『カマキリ通信』・・ゲッチョの個人的理科通信カマキリ通信の100号ずつの合本です
第22集が発刊されました
(注:これまでの1~21集については在庫がありません)
お読みになりたい方は、A4サイズの返信用封筒に290円切手を貼りご自分の住所を書いて、本代(実費です)1000円分の少額切手(10円~100円)とともに、下記住所までお送りください。
なお、100冊しか印刷していないので、在庫がなくなりしだい終了です。
今回は、2008年12月9日~09年6月3日分の通信の合本です

<送り先> 〒902-8521
沖縄県那覇市字国場555番地  沖縄大学 盛口 満
      TEL:098(832)3240 
     

『屋久島ヒトメクリ』の最新刊(12号 500円)に、連載しているゲッチョの屋久島日記に、「どんぐりの道」という記事を書いています。
屋久島ヒトメクリは屋久島町宮之浦2467-86 ArBor出版 0997(42)2772

朝日新聞11月5日号に、オーサービジットで京都の田辺小学校に行った時の記事がでました。

12月21日、北九州大で、自森卒業生のミカコが主催する、人と自然の関係を考えるシンポジウムに、講演者として参加する予定です。一緒に山口県立大学のアンケイ先生も登壇します。



雨乞い

石垣島白保で、おじい、おばあの昔語りを聞き書きしてきた。
その中で、雨乞いの話を聞く。
これまで、西表島のおばあから、若いころに参加した雨乞いの儀式の話について聞いたことはあった。これは、ツカサと呼ばれる神女として儀式に参加したという話だったが、今回は、子ども時代に、一人の村人として儀式に参加したというおじいの昔語りであった。
といっても、話の中核は山の上で火をもやし空に黒煙を送って……というところではなく、その翌日におこなわれたという、村中総出のササ流し(魚毒を使っての、川での漁)に参加した話だった。なにせ、娯楽の少ない昔である。雨乞いをするほどの干ばつは4年に一度ぐらいしかない……というのだから、70歳を超えるおじいにしてから、3度ほどしか経験がない(おじいが中学生頃を期にすたれてしまった)という話だった。それでもササ流しには鮮烈な印象が残っているようだった。
この話を聞いて、ああと思う。
ときどき、ひもとく本に、『岩崎卓爾一巻全集』という本がある。明治から昭和初期にかけて活躍した石垣島測候所の名物測候所長、岩崎卓爾が残した文章をまとめた本だ。僕が沖縄に移住したきっかけや理由はひとつではないが、そのひとつが、卓爾について調べたいということであった(その成果が『ゲッチョ昆虫記』となった)。明治から昭和という、渡航すること自体さえ難しいような時代に、石垣島に住み着き、その地の自然を見続けた卓爾になぜかひかれた。この卓爾の書き残したものの中に、白保でのこのササ流しの話が少しだけ紹介されている。
しかし、雨乞いのときに、なぜ、川に毒を流し魚を捕るのか?
おじいは、リクレーションの意味があったんじゃないかなあと僕に言う。
卓爾の本を見返してみる。
川に毒を流し、その毒や死んだ魚でとりこぼしたものは、海へと流れ下る。「穢水海に注ぎ海神の祟りを以て雨を降らすものとし俗に”スサ、イレ”と言ふ」と卓爾の本にはあった。
どちらの意味もあったのかもしれない。
かつての意味が変容したのかもしれない。
それでもまだ、間に合ったという思いはある。
たとえ片鱗であったとしても、時を隔てて、卓爾が見聞きした話と同じ話を聞いている。その思いで、ぼくは静かに、ああと思ったのだ。