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☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『闇の子供たち』(2008)

2013年11月12日 | 邦画(1990年以降)
『闇の子供たち』(2008)

阪本順治監督、江口洋介さん(南部浩行)、宮崎あおいさん(音羽恵子)、妻夫木聡さん(与田博明)出演。


【STORY】
タイの裏社会で日常的に行なわれている幼児売買春、人身売買という衝撃的なテーマに挑んだ阪本順治監督の新作。臓器売買という非人道的な問題に迫る新聞記者を江口洋介が熱演。

【感想レビュー】
原作は、同タイトルの梁石日の小説です。
ずいぶん以前に読んだのですが、フィクションとはいえ、近い事実がある事を示唆する内容です。

映画は、原作よりはかなりオブラートに包んだ内容でしたが、それでも、買春目的の人身売買や、臓器移植目的の人身売買が行われている現実を、知らしめるものでした。

他国やタイの国境、山岳地帯の貧しい村からから…、都心のスラム街から…。
人知れず子どもたちは連れてこられます。

そこで問題視されるのは、幼児買春を目的に訪れる先進国の大人が居るという現実。
そのニーズに応える為に、人身売買はなくならないのだというニワトリと卵の関係…。

臓器移植の順番を待ってなどいられないから、何としてでも移植手術を受けさせたいという親心…。

臓器提供をするのは、“生きたまま”麻酔をかけられ、手術され死んでいく年端もいかない子どもなのです…。

原作を映画にするには、時間的な制約もあるでしょうから、難しいと思いますが、もうちょっと描かれても良かったかなぁ…と思います。

例えば、タイ警察のマフィアとの癒着による腐敗。
日本人観光客は、外貨を落としてくれる為、タイ政府によって守られているという現実。
しかし一方で、活動するNGOやジャーナリストが裏社会に深入りすると、命の保証など無いという現実、などなど…。
時間が足りな過ぎますね…

その時は、そういえばジャパンマネーが強い事もあって、海外の日本人活動家が亡くなるニュースって聞かないなぁ、などと悠長に思っていましたが、2007年、日本人映像ジャーナリストの長井健司さんが、ビルマのヤンゴン市内で銃撃された事や2012年のシリアでの取材中、政府軍の銃撃により殺害された山本美香さんなど、その後、日本人が海外で亡くなるニュースを聞くたびに、この小説の事を考えていました。


映画は、集約され、ストーリーも異なる箇所が沢山ありますが、少なくとも人身売買の現実やそれを目的に訪れる先進国の大人がいる限り、終わらない闇を伝えたのだと思いました。


『お茶漬けの味』(1952)

2013年11月11日 | 邦画(クラシック)
『お茶漬けの味』(1952)

小津安二郎監督、佐分利信さん、木暮実千代さん、笠智衆さん、津島恵子さん、鶴田浩二さん出演。


【STORY】
『麦秋』に続いて小津安二郎と野田高梧が共同で脚本を執筆し、映画化した作品。地方出身の素朴な夫と夫にうんざりする上流階級出身の妻、二人のすれ違いと和解が描かれる。

【感想レビュー】
これもまた、愛おしい作品でした

仕事がバリバリ出来て、物静かで芯の強い夫と、家に使用人が居て、料理どころか台所にも入った事がないような妻とのお話し。

妻は、いつもいつも夫に不満を持っていて、友人や姪の前で夫の悪口を言う事を憚らず…

悪口ばかり言っているから、余計に増幅されて、益々、夫の事が厭になっていくようです。

自由気ままで奔放で、気位の高い妻を木暮実千代さんが演じていますが、本当に、憎たらしいほど可愛げのない妻で!

それがあるきっかけで、ほろほろと溶けて、夫婦は結婚して初めて、心が通ったのでした

そのモチーフにお茶漬けを使うなんて、なんて温かくて、なんて素敵なのでしょう


『晩春』の笠智衆さんの台詞に、結婚する事が幸せなのではない、何年かかるか分からないけれど、幸せは二人で作っていくものだ、のようなくだりがありましたけど、このテーマ、繋がっていました

普遍的ですね

それでもたまに、この価値観は半世紀以上経っても、まだ変わらないのか⁈…という事もあれば、むしろ後退している⁈…という事もあって、面白かったです


また笠智衆さんが、パチンコ屋の店主で、先に観た3本と雰囲気が違うのも見どころで、嬉しくなるポイントでした



『晩春』(1949)

2013年11月11日 | 邦画(クラシック)
『晩春』(1949)

小津安二郎監督、笠智衆さん、原節子さん出演。


小津監督が娘の結婚を巡るホームドラマを初めて描いた作品。
その後の小津映画のスタイルを決定した。小津監督が原節子と初めてコンビを組んだ作品でもある。なお、本作の他『麦秋』(1951年)、『東京物語』(1953年)で原節子が演じたヒロインはすべて「紀子」という名前であり、この3作品をまとめて「紀子三部作」と呼ぶこともある。(Wikipediaより)

【STORY】
結婚をめぐる父親と娘を題材にした感動作。

【感想レビュー】
これは…

もう無条件に泣いてしまうではないですか…

この作品をもって、「紀子三部作」をすべて観た事になりますが、笠智衆さんは今度は56歳の父役でした。

朗らかだけど、ちょっとだけムキになったり、威厳があったり…

笠智衆さんの、座った時に丸くなる背中が、ずっとツボです

背中から、色々な想いが伝わってくるなぁと生意気ながら思います。

『東京物語』でも、妻の危篤の時に座った背中が、それまでよりシュッと小さく見えて、思わず目を凝らしたのですが…。


そして、親娘だけれど、そこにきちんと礼儀があって、でも温かくて、思っている事を伝え合えたり、お互いに思いやる気持ちに、本当に心が洗われました

『晩春』には、普遍的な想いが沢山詰まっていて、やっぱりとっても癒されました



『光の雨』(2001)

2013年11月10日 | 邦画(1990年以降)
『光の雨』(2001)

高橋伴明監督、萩原聖人さん、裕木奈江さん、山本太郎さん、池内万作さん、大杉漣さん、塩見三省さん出演。


【STORY】
連合赤軍による14名もの同志殺人事件の実態に迫る衝撃のドラマ。立松和平の同名小説を劇中劇として描き、当事者を演じる俳優たちの苦悩を通して“事件”を検証する。(movie Walkerより)

【感想レビュー】
何だかとっても哀しくなってしまいました。
映画に、ではなく、総括という名の粛清に…。

若松監督の『実録・連合赤軍~』を観た時は、閉鎖された世界で起こる、先細りの思考停止状態に憤りと恐怖を感じましたけれども…。

『光の雨』は、演じる役者達が、役の中で、それぞれ等身大の自分と演じる役を行ったり来たりする作りなので、この時代を知らない世代でも、その時何が起きていたのか…、どういう状況下だったのか…、何を感じていたのか…、などの疑問を一緒になぞって観る事ができます。

一人ずつの心理描写が素晴らしくて、引き込まれました。

山本太郎さんは、連合赤軍のリーダーを演じていましたが、とても嵌り役でした!
また、裕木奈江さんは、あの可愛い童顔なお顔立ちで…かえって怖かったです…

大杉漣さんや塩見三省さんが、当時、学生運動を経験した世代として出てきますが、彼らの台詞は、私が一番知りたい事でもありました。


そして、当時の若者と今の若者の違いなども描かれていて、でもだんだんと本質的に実は変わらないところもあるんだ、という部分も描かれていて、観ていてとっても、合点がいきました!





『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(2012)

2013年11月09日 | 邦画(1990年以降)
『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(2012)

若松孝二監督、井浦新さん、満島真之介さん、寺島しのぶさん出演。


【STORY】
『仮面の告白』『潮騒』『金閣寺』『サド公爵夫人』『憂国』……数々の名作を著し三島由紀夫(井浦新)はノーベル賞候補と目される文豪になっていた。
その一方で、学生運動全盛期の1968年、三島は民族派の学生らとともに楯の会を結成。三島の見つめてきた二・二六事件、浅沼稲次郎社会党委員長刺殺事件、安田講堂事件をはじめとする学生運動、戦後の日本とは。
(movie Walkerより)

【感想レビュー】
戦後の日本に対して、理屈ではなく興味がつきません。

祖父母や両親が生きてきた時代です。
けれども身近なようでいて、ちっとも分かっていないからだと思います。

それで、最近この頃の映画や学生運動をモチーフにした作品を観ているので、続けて観ることにしました。

三島由紀夫の小説は、仮面の告白や潮騒や愛の渇き、などしか確か読んでいませんが…。
かなり遠くに感じるお方です…

有名なバルコニーの演説のシーンは、ほんのちょっとだけ何度かテレビで観た事がある程度ですが、とても異様な光景なので、脳裏に焼き付いています。

整ったお顔立ちと、謎の軍服(←と思っていたのですね)。

楯の会結成の動機も、死をもって体現する精神も、後世に生きる私からすると、もうこれは、戦後日本で起きたことなのか…??!と、戸惑っていました。
どう理解したら良いか分からないレベルで…

けれど、いくつかのこの頃の時代を反映する映画に触れて、学生運動やその後の連合赤軍なども含めて、政治に関心をもって活動する人が、大なり小なりいた時代背景をだんだんに感じてきたので、以前よりはいくらか寄り添って観る事が出来たと思います。

井浦新さん、どうしても最初は井浦さんと思ってしまいましたが、バルコニー演説のシーンでは、三島由紀夫氏に見えました。

瀟洒な洋館?のような三島邸と日本刀が何とも言えないマッチングでした…。

ラストのカットは、あぁ、深いなぁ!と思わず唸りました。
色々な解釈が出来そうです。

私は、虚しさを感じましたけれども
…。

若松孝二監督の作品は、『キャタピラー』といい、『実録・連合赤軍~』といい、私の観たい!!っと思うモチーフやテーマです

何か、自分の好きとか苦手とか、そういうものを超越する次元で、観なきゃ!という感覚になります

遺作も借りてこようと思います。