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☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『ラサへの歩き方~祈りの2400km』(2015)

2016年08月04日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ラサへの歩き方~祈りの2400km』(2015)

監督:チャン・ヤン
2015/中国
原題:PATHS OF THE SOUL

【作品概要】
チベットの村からチベット仏教の聖地であるラサとカイラス山を目指し、五体投地という礼拝法を行いながら1年かけて旅をする様子を描いたロードムービー。合掌、両手・両膝・額を地面に付け、うつぶせになった後に立ち上がるという動作でひたすら進み続ける11人の姿を映す。メガホンを取るのは、『こころの湯』『胡同(フートン)のひまわり』などのチャン・ヤン。一般の村人が自身の役を演じる。チベットの人たちの信仰心や、シンプルな生き方が胸を打つ。

チベット東部のカム地方。父親を亡くしたニマは、父の弟ヤンペルの死ぬ前にチベット仏教の聖地へ行きたいという願いをかなえるため、ラサと聖山カイラスへ巡礼に行くことを決める。同行したいと願い出てきた村人らも合わせて11人が村を出発し、五体投地をしながらラサへ向かう。途中、妊婦のツェリンの出産や、ジグメが落石で脚をけがするなどの出来事もあったが、そのたびに助け合いながら聖地を目指す。(ヤフー!映画より)

【感想レビュー】@theater
時間と空間の隔たりを感じさせるスケールの大きい映画でした

生活に根付く信仰。巡礼に出ることは、村人達にとって、なかなか叶わない特別なことのようだ。
長期間に渡る家の留守は、一家の働き手が減るし、どんなに質素にしても旅にはお金がかかる。

ある一家の数人が行くことにしたと言うと、たちまち他の家からも参加希望者が出てくる。
羊の毛と皮で作ったおくるみ。五体投地用の前掛け作り。巡礼の準備に勤しむ姿。過酷な自然と共生しながらも淡々とした日々を送る彼らが、ほのかに高揚している感じが伝わってきて、なんだか私まで嬉しくなってしまった。いざ始まってみると、五体投地の過酷さといったらないのだけども…。

また、巡礼の一行を俯瞰で映したカットが素晴らしくて…
雄大な自然とアスファルトの山道。スクリーンの端から端まで、見切れるほど遠くから映された道。地平線を感じさせるスケールの大きさでした。


舗装された道路。大型トラックとのすれ違い。新型普通乗用車。出産時の近代的な病院風景。
それらは普遍的な巡礼の精神となんともちぐはぐな印象をもたらすが、そこには二つの視点があるように思う。

一つは、近代化していくチベットの街と村の格差。
もう一つは、原風景を保つ国や地域における近代化に対して、素朴なのが良いのに…といったような第三者、もっといえば先進国の住人のエゴイズムさ。
観ている側が、そのちぐはぐさに自覚的になればなるほど、映画の温かいトーンとは裏腹に抉られる面があると思う。。

そして巡礼は続く。様々な人との触れ合いは、時に温かく、時に突風のような衝撃をもたらす。…が、彼らは動じない。“ここまで五体投地した”の印に道路脇に石を積み、寝床のテントを皆で張る。
夜、皆で火を囲んで捧げる祈りは、ゴスペルのように重厚な響きをもって空気を震わせるようだった。
エンドロール、目を瞑って聴くとその響きに包まれ不思議な安心感に満ち溢れました。


温かい笑いもありつつ、ほのかな恋のトキメキもありつつ。

観たあとに、静かで、そして豊かな気持ちになれる映画でした
観て良かった