『岸辺の旅 』(2015)
監督:黒沢清
原作:湯本香樹実
脚本:宇治田隆史、黒沢清
音楽:大友良英、江藤直子
薮内優介 - 浅野忠信
薮内瑞希 - 深津絵里
松崎朋子 - 蒼井優
島影 - 小松政夫
星谷 - 柄本明
星谷薫 - 奥貫薫
【作品概要】
湯本香樹実が2010年に上梓した小説を映画化。3年間行方をくらましていた夫がふいに帰宅し、離れ離れだった夫婦が空白の時間を取り戻すように旅に出るさまを描く。(Yahoo!映画より)
【感想レビュー】
これまた、昨年逃し続けた1本。黒沢清監督作品の魅力にハマりまくりなので、未見の作品をとことん観る旅の再開でもあります
『岸辺の旅』。不覚にも(映画で泣くことはあまりない私が…)ボロボロと大粒の涙を流してしまいました
なんだろうなぁ…感じるところがあったのだろうな…ふむ。夫婦ものは、どこかパーソナルに引き寄せて観てしまう傾向にあるようです
家族がお互いのみの夫婦にとっての配偶者の死とは…。戸籍うんぬんではなくて、相手とはどこか気持ちだけで繋がっているのだというような心許なさを私自身は日々感じてしまうのですが。そこをパーソナルに引き寄せて観てしまったので不覚にも泣いてしまったのですねぇやれやれ…。
黒沢監督にとっては、人間を描く上での最小単位の一つに男女の関係性というのがあるのかもしれなくて、黒沢監督の作品はどんなにパッションのあるシーンでも、どこか冷静な視点が感じられるので、そこが私はたまらなくツボです
監督にとって、ウェットな男女の描写や人間描写というものは、ちょっと距離を置きたくなるような代物なのかもしれないなぁ…などと思ったりもします。
この作品では、彼岸と此岸の狭間、境界線で夫婦は再びは出会い、妻は夫の、夫は妻の、互いに知らない一面を垣間見る。相手が彼岸にいるから、解り合えないのか。いやいやお互いに此岸にいたとしても解らないことだらけではないか。…などと観ながら感じ入りつつ。
その狭間で過ごす時間がこの夫婦にとって、愛おしい時間になったことは間違いなさそうだ。
二人は岸辺の旅をするわけだけど、いくつかの旅先の中で、小松政夫さんのくだりがとてもグッときました。
それにまた、あの家の変化が…!黒沢作品といえば…!な素晴らしい廃墟で
また、境界線を表すのは川ばかりではなく、道もまた効果的に使われていました。この時の電線だっかなぁ、にゆらゆらする布とか、これまた素晴らしく…!
この作品のカーテンは、基本的には優しく優しく揺れるのが印象的でした。
いつも硬そうな素材のビニールカーテンが不気味に揺れるのが多いので、やはり異界が出てくるとはいえ、基本的には温かく描かれているのが、彼岸にも此岸にも寄り添っている感じで、なんだかほっこりしました。
ある旅先で、女の子が弾いていた“天使の合唱”は、ブルクミュラー25の練習曲という曲集に入っている曲で、最後がアヴェ・マリアのモチーフで終わるのですが、そういう選曲にも、なんだか温かさがさり気なく滲み出ていてじんわりきました
最新作『クリーピー』では重低音のオーケストラ音楽がとても効果的でしたが、『岸辺の旅』の時に既にオーケストラ音楽は試みられていたのだなぁと
思いました
原作は読んでないので比較はできないのですが、同作家の『夏の庭』は手元にあり何度も読み返してしまう一冊です。
基本的には、原作は原作、映画は映画と思っているので、映画を観た後に原作を読もうと思う作品は稀なのですが、本作は読みたいと思いました
監督:黒沢清
原作:湯本香樹実
脚本:宇治田隆史、黒沢清
音楽:大友良英、江藤直子
薮内優介 - 浅野忠信
薮内瑞希 - 深津絵里
松崎朋子 - 蒼井優
島影 - 小松政夫
星谷 - 柄本明
星谷薫 - 奥貫薫
【作品概要】
湯本香樹実が2010年に上梓した小説を映画化。3年間行方をくらましていた夫がふいに帰宅し、離れ離れだった夫婦が空白の時間を取り戻すように旅に出るさまを描く。(Yahoo!映画より)
【感想レビュー】
これまた、昨年逃し続けた1本。黒沢清監督作品の魅力にハマりまくりなので、未見の作品をとことん観る旅の再開でもあります
『岸辺の旅』。不覚にも(映画で泣くことはあまりない私が…)ボロボロと大粒の涙を流してしまいました
なんだろうなぁ…感じるところがあったのだろうな…ふむ。夫婦ものは、どこかパーソナルに引き寄せて観てしまう傾向にあるようです
家族がお互いのみの夫婦にとっての配偶者の死とは…。戸籍うんぬんではなくて、相手とはどこか気持ちだけで繋がっているのだというような心許なさを私自身は日々感じてしまうのですが。そこをパーソナルに引き寄せて観てしまったので不覚にも泣いてしまったのですねぇやれやれ…。
黒沢監督にとっては、人間を描く上での最小単位の一つに男女の関係性というのがあるのかもしれなくて、黒沢監督の作品はどんなにパッションのあるシーンでも、どこか冷静な視点が感じられるので、そこが私はたまらなくツボです
監督にとって、ウェットな男女の描写や人間描写というものは、ちょっと距離を置きたくなるような代物なのかもしれないなぁ…などと思ったりもします。
この作品では、彼岸と此岸の狭間、境界線で夫婦は再びは出会い、妻は夫の、夫は妻の、互いに知らない一面を垣間見る。相手が彼岸にいるから、解り合えないのか。いやいやお互いに此岸にいたとしても解らないことだらけではないか。…などと観ながら感じ入りつつ。
その狭間で過ごす時間がこの夫婦にとって、愛おしい時間になったことは間違いなさそうだ。
二人は岸辺の旅をするわけだけど、いくつかの旅先の中で、小松政夫さんのくだりがとてもグッときました。
それにまた、あの家の変化が…!黒沢作品といえば…!な素晴らしい廃墟で
また、境界線を表すのは川ばかりではなく、道もまた効果的に使われていました。この時の電線だっかなぁ、にゆらゆらする布とか、これまた素晴らしく…!
この作品のカーテンは、基本的には優しく優しく揺れるのが印象的でした。
いつも硬そうな素材のビニールカーテンが不気味に揺れるのが多いので、やはり異界が出てくるとはいえ、基本的には温かく描かれているのが、彼岸にも此岸にも寄り添っている感じで、なんだかほっこりしました。
ある旅先で、女の子が弾いていた“天使の合唱”は、ブルクミュラー25の練習曲という曲集に入っている曲で、最後がアヴェ・マリアのモチーフで終わるのですが、そういう選曲にも、なんだか温かさがさり気なく滲み出ていてじんわりきました
最新作『クリーピー』では重低音のオーケストラ音楽がとても効果的でしたが、『岸辺の旅』の時に既にオーケストラ音楽は試みられていたのだなぁと
思いました
原作は読んでないので比較はできないのですが、同作家の『夏の庭』は手元にあり何度も読み返してしまう一冊です。
基本的には、原作は原作、映画は映画と思っているので、映画を観た後に原作を読もうと思う作品は稀なのですが、本作は読みたいと思いました