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☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『くちびるに歌を』(2014)

2016年05月04日 | 邦画(1990年以降)
『くちびるに歌を』(2014)

監督:三木孝浩
新垣結衣
木村文乃
桐谷健太
恒松祐里
井川比佐志

【作品概要】
シンガー・ソングライター、アンジェラ・アキの名曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を題材にしたテレビドキュメントから着想を得た中田永一の小説を実写化。輝かしい才能を持つピアニストだった臨時教員の女性が、生まれ故郷の中学校の合唱部顧問として生徒たちと心を通わせていく。オールロケを敢行した長崎の風景も見もの。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】
WOWOW放送の録画を何となく観ていたのですが、、少しずつ引き込まれていきました

なんといってもまず、舞台が長崎の離島というところが良かったです。土地柄、教会があって、生活に根付いた宗教があるわけで。聖歌隊が歌う賛美歌の響きはきっと、地元の人々の耳に、心に、全身に、自然に溶け込んでいるであろうその土壌が、説得力をもって物語に奥行きを感じさせてくれます。

そういう意味で、どこが舞台なのかはとても重要なのだなぁと改めて思いました。そういえば、『ペコロスの母に会いに行く』も長崎が舞台でしたけど、その歴史的背景がとても生かされていて胸を打ちました

話しは戻って、『くちびるに歌を』ですが。

島という閉鎖的な社会の描写がとても繊細に、決して説明過多になることなく、断片的であるにも関わらず(‼)伝わってきて本当に素晴らしかったです

新垣結衣さん演じる先生のバックボーンは…正直ちょっと物足りなさを感じたけれど…、そこはメインではないのでこんなものかなぁとも思います

でも、歌うことで救われていく魂があるというのは実感をもって理解できます。

私も学生に合唱指導した経験や委託伴奏員で県大会の高校生合唱の伴奏をしたことがあります。
指導する方も受ける方も、それぞれの時間が流れていて、それぞれの気持ちがもちろんあるわけで。。でも、その瞬間瞬間に、一つのハーモニーを創りあげていくこと、それだけに専念する時間。合唱。音楽で繋がっているという実感。響き。エネルギー。
それを一緒に味わった仲間は、やはり特別なのだと思います。そういったことが、押し付けがましくなくほのかに香る映画でした

海に囲まれた島でのあれこれや歌の特訓。木下惠介監督の『二十四の瞳』を思い出しました。

閉鎖的な島の空気とそれを打ち破る真っ直ぐな歌声。希望。

心が洗われる映画でした




『断食芸人』(2015)

2016年03月17日 | 邦画(1990年以降)
『断食芸人』(2015)

監督:足立正生/出演:山本浩司、桜井大造、流山児祥
2015年/日本/カラー/104分/DCP/配給:太秦

【作品概要】
さまざまな解釈を可能とするカフカの著作「断食芸人」を1960年代に“アングラの旗手”として知られ、後にパレスチナ革命に身を投じた伝説的映画監督・足立正生が原作から1世紀の時を経て映像化!『幽閉者 テロリスト』以来の約10年ぶりの監督作品となる。

残酷で不条理な国で見世物にされる一人の男。人々は勝手に「断食芸人」を創りあげ、過熱してゆく。やがてその男の周りはグロテスクに膨張して不穏で禍々しい異様な世界へと姿を変えていく。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
待ちに待った最新作!やっと観て参りました
上映前に目に飛び込んできたのは、なんと足立監督ご本人…‼
あれ⁉今日はトークショーあったっけ?と狐につままれつつ慌てて劇場へ。上映後に、短いながらトークショーがありました なんて幸運なんだ…‼

…と、まぁ、トークショーについては感想の後においおいと。

奇妙さ、不可思議さ、そしてそれらと生々しさが同居する面白さ。ほぼ時系列通りに進んでいくようなタイプの映画には無い面白さです。

冒頭、3.11の津波の映像が流れ、思わず息を呑みます。現在の日本を語る上で、3.11は切っても切り離せない出来事。これ以前と以後では大きな意識の変化があると思うし、そこから始めるのだなと思いました。

作品から浮かびあがるのは、近代以降の積み重ねにより、たまりに溜まった膿まみれの現在の日本。マイノリティからマジョリティなものまで、あらゆる問題のイメージが列挙されていく。監督はこれを紙芝居って仰っていたのだと思うけど、まさにそう感じました。

アイヌ民族、琉球民族。不況。新興宗教。自殺志願者。強姦。報道。IS。国境なき医師団。昭和天皇。他にもたくさん、たくさん。

檻の中の、ものを言わぬ断食芸人に向けて、たくさんのイメージが繰り広げられる。どっちが見世物なのかあべこべになっていくのです。

こうして、たくさんの問題を目の当たりにすると、何一つ解決してはいないことに改めて気付く。知識として知っていたとしても、その本質はどうだろうか?
あらゆる問題が無数に点在している世の中で、私たちは生きている。解決してもしていなくても、報道されなくなると、それはやがて気の抜けた炭酸みたいになって、一見ひっそりとする。けれど、SNSの進化でマイノリティはマジョリティへの活路を見出した。けれどそれも、時間が経つとまたひっそりとしてしまう。今の日本で、人々の興味が一定の場所に留まることは難しく、過熱したかと思うとやがて空中分解してしまう…そんなことを映画を観て感じました。

檻の中の断食芸人は喋らない。発言しないと言葉による失敗はない。そうすると、一見、賢くはみえるかもしれない。

断食芸人の彼は、断食の後、悟りを開くのか?…はたまた既に開いているのか…?…と僧侶は慄く。この僧侶の台詞の、あらゆる宗教は意味をなさなくなってきているっていうくだり、そうだよなぁ…と頷いてしまった。。

檻の中の断食芸人の存在は、サイレント・マジョリティへの痛烈な批判にも感じました。

こうして膿ばかりの日本を目の当たりにさせられるけれど、不思議なことに、虚しくはならない。足立監督のイメージ!イメージ!イメージ‼…の怒濤の連続を体感していると、なにか逆境に向かっていくエネルギーさえ湧き上がってきます。
そこらじゅうに在る問題を直視せず、薄目でなんとなく生きていくことは、本当に自由なのだろうか、と観た後にあれこれ考えてしまう映画でした

トークショーでは、英語字幕の担当者とタイトル訳をめぐって半年?もケンカしていたとか、内々のお話しも聞けました
他にもお話しされていたけれど映画の衝撃で頭がボーッとしていました あしからず…


『恋人たち』(2015)

2016年02月04日 | 邦画(1990年以降)
『恋人たち』(2015)

監督・脚本:橋口亮輔/出演:篠原篤、成嶋瞳子、池田良
2015年/日本/140分/ビスタ/5.1ch/配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ 

【作品概要】
不条理に満ちたこの世界を、それでも慈しみ肯定する―
今を生きるすべての人に贈る絶望と再生の物語。
通り魔殺人事件によって妻を失った男。退屈な日常に突如現れた男に心が揺れ動く主婦。同性愛者で、完璧主義のエリート弁護士。不器用だがひたむきに日々を生きる3人の“恋人たち”が、もがき苦しみながらも、人と人とのつながりをとおして、ありふれた日常のかけがえのなさに気づいていく姿を、『ぐるりのこと。』『ハッシュ!』で知られる稀代の才能・橋口亮輔が、時折笑いをまじえながら繊細に丁寧に描きだす。(ユーロスペースHPより)

【感想レビュー】@theater
昨年、話題になっていたので気になっていた作品です

不条理に満ちた世界を描いているというだけあって、なかなかに抑圧された空気感…。じわじわと苦しくなっていきます。。

やり場のない怒りは、一体どこへ向かうのだろう。

妻を無差別殺人事件で亡くし、先の見えないやり場のない怒りに、打ちのめされている男性。

また、一見するとごく普通の家庭を築いているかのように見える夫婦の、ある種の不自由さ。姑と同居する嫁の蓄積していく不満。化粧っ気のない女性の渇いた日常と生々しい性。

また、身体と心の性が一致しておらず、自身がそうだと気付いた時から生じたある種の生きにくさを、エリートの仮面を被ることで抑圧してきた男性。(話し方がアンガールズの田中さんにちょっと似ていてツボだった…)

メインの3人だけでも、かなりお腹いっぱいの内容です

あぁ…だからこういう心の機微に目を向ける映画は苦手なのだ…そこに幸せはないのだから…と思いつつもスクリーンからは目が離せない

何でしょうかね。。
なんか、セットといい、役者さんのあえてのだらしない身体つきといい、生々しい生活臭がしてきそうな描写といい、リアルな力強さがありました
音や声も生っぽくて、臨場感がありました。無名な俳優陣の存在感も光る。

お笑いで、いがちな人物を誇張して模倣するネタがありますが、そのさらに模倣のような演技があって、他がリアルだから、妙に浮くそのシーンの間はなんともいたたまれない。。浮いた存在にしたかったのかもしれないから、狙っているのかもしれない…

シュールで笑えるところがちょこちょこあるのだけど、劇場で笑っている人がいないので、なんとなく堪えるのが大変でした…

かなり現代社会を抉る内容でした。たくさんの登場人物の吹き溜まりのような日常が、ラストは少しずつ流れ始める。それはちょっと急な展開な気もしたけど、映画を終らせないとならないので、仕方ないのかな…と思いつつ。

みんながかなり吹き溜まっていたので、そこは、みんなしてきっと星のめぐりが悪かったのだな…と思うことにして…
でも、首都高の下の川を船で行くくだりは、スムーズな流れを感じさせるもので、希望のあるラストで良かったと思いました


あ、それから光石さんと女性が鶏を原っぱで追うシーンはすっごい良かったです…‼あのシーンは展開も含め、音楽も、何もかもが震えるほど良かったです

『東京の日』(2015)

2015年11月07日 | 邦画(1990年以降)
『東京の日』(2015)

2015年/日本/102分/カラー/1:1.85/DCP/配給:マジックアワー
監督・脚本:池田千尋/出演:趣里、佐々木大介、浅野千鶴、渡辺真起子、香川京子

【作品概要】
孤独と人情が交差する東京の片隅で、二人は愛を見つけることができるのか?痛くて情けなくてリアルで、すべての瞬間が愛おしいラブストーリーの誕生!(HPより)

【感想レビュー】@theater
今回は、『東南角部屋二階の女』の監督・脚本や黒沢清監督の新作『クリーピー』の脚本を手掛ける池田千尋さんの作品ということなので、是非観ることにしました~

渡辺真起子さんと香川京子さんに惹かれたのもあります
若手俳優陣は存じ上げない方ばかりだったけど、そういうのも東京という街の匿名性が出ていて私は好きでした
ストーリーはふわふわと展開していくのだけど、とある日からとある日までを切り取った日常の、でも少しずつズレていく感じが面白かったです。
三叉路?だったかの角にある、味のある民家に面した道を来る日も来る日も通る。出掛けたり、戻ってきたり、その日中には戻ってこなかったり。。

同じ道、同じ階段、同じ住まい。でも少しずつズレていく。ふわふわとたゆたうような日常にも小さなドラマがある。突然ポンと現れた女性の視点によって、自分の日常がつまらないものに感じたり、そんなに捨てたものでないことに気付いたりする。
面倒をみているのだかみられているのだか

タイトルの『東京の日』、香川京子さん、少しずつズレていく日常、住まいの屋上から眺める東京。それらから小津安二郎監督の『東京物語』へのオマージュが感じられるのだけど、なんだかとっても良かった。
『東京物語』で若者を演じていた香川京子さんが『東京の日』では素敵なマダムですから。。そのシーンはとっても素敵な時間でした


『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(2014)

2015年10月23日 | 邦画(1990年以降)
『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(2014)
スタッフ
監督:行定勲
原作:西加奈子
脚本:伊藤ちひろ
音楽:めいなCo.
出演者:芦田愛菜、伊藤秀優、青山美郷
入江甚儀、八嶋智人、羽野晶紀、丸山隆平(関ジャニ∞)、いしだあゆみ、平幹二朗

【作品概要】
大阪の団地で大家族と暮らすちょっぴり偏屈な小学3年生の少女のひと夏の成長を、ユーモラスに描いた感動作。大阪の団地で祖父母と両親、そして三つ子の姉たちと暮らす小学3年生の渦原琴子、通称こっこ(芦田愛菜)は、大家族の温かな愛情に包まれながらいつも不満だらけで、孤独に憧れていた。家と学校という限定された世界の中でいろいろなことに悩み、考えるこっこは、祖父・石太(平幹二朗)が教えてくれたイマジンという言葉を胸に少しずつ成長していく。(Wikipediaより)

【感想レビュー】
あぁ、なんて素晴らしい映画なのでしょう…‼
最近の邦画で、久方ぶりに感激したかもしれません
あれ、芦田愛菜ちゃん?と見紛う表情が多数。“こっこ”はエキセントリックな少女だし、主役だし、特別な存在感でなくてはならないのですが、もう本当に圧巻でした
円卓を囲む家族+たまに彼氏とか、お料理の数々とか、他愛のないお喋りに温かさが滲む。
エキセントリックな“こっこ”は、自分が発言すると、場の空気が変わってしまう事があると悩む。
でもみんながみんなある事柄について、同じような反応だったら、、、世の中は息苦しくて生きにくい社会に違いない。人と違う感性や発言は貴重で、かえってそれで救われる人も沢山いるのだ。でもそれには、他者の気持ちを想像し、その人の心の痛みを思った上で発言しないとなりません…というわけで、“こっこ”のひと夏のイマジン
そんな“こっこ”を、家族や幼なじみや周りの温かくて優しい眼差しが包む。

細部に至るあれこれを大好きになってしまう、そんな映画でした
原作を思わず買ってしまった…!