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☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『オリーブの林をぬけて』(1994)

2016年11月05日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『オリーブの林をぬけて』(1994)

監督・脚本: アッバス・キアロスタミ
撮影: ホセイン・ジャファリアン
出演: ホセイン・レザイ/タヘレ・ラダニアン/モハマッド=アリ・ケシャヴァーズ/ザリフェ・シヴァ

【作品概要】
「友だちのうちはどこ?」「そして人生はつづく」と続いた“ジグザグ道三部作”最終篇。「そして人生はつづく」の中に、大地震の翌日に式を挙げたという新婚夫婦の挿話があり、それがきっかけとなり生まれた作品。大地震に見舞われ、瓦礫と化したイラン北部の村。映画の撮影を手伝っていた地元の青年ホセインは、この夫役に抜擢される。ホセインは妻役の女性を本当に恋していて、一度は文盲だという理由でフラれた現実と役柄を混同して再度アタックするが……。

【感想レビュー】@theater
ブログにUPするのが遅くなりましたが、特集“キアロスタミ全仕事”で、最後に観た作品の感想。

“ジグザグ道三部作”の最終篇です。
『そして人生はつづく』の撮影時のアナザーストーリー的な感じです。

……ややこしいです


監督役は二人出てきて、それらを撮っているのがキアロスタミ監督ってことで合ってるのかな…

『そして人生はつづく』の監督役が出てくるシーンを撮影する監督役(この方もキアロスタミご自身でないと思う…風貌も違ったし…)。

大地震の前に映画に出てくれた少年を探しに行く『映画』で、大地震後に、その地で再び映画を撮る様子が『映画』になる。

どこからどこまでが真実で、どこからどこまでが脚色なのかさえよく分からず黙々と観る。

その複合的な視点は、この映画を画一的に捉えることを拒む。

その地に住む撮影に関わった方達の人生も、監督の人生も、粛々と続いていくようだった。


娘に熱烈に結婚を迫るホセインという青年が出てきて、あまりの粘着ぶりに日本だったらストーカーと言われそうだ…と半ば心配になりつつ…

同じようなくだりが延々と続く撮影シーン。
その合間に娘を延々と口説くホセイン。

この延々と続く我慢の時間を経て、映画は大きなカタルシスへ…!!!

ラストの抜け感ある画をスクリーンで観る醍醐味


あの瞬間、なんかすごい心の中で拍手👏していました

映画の始めと終わりで、こんなにも観ている側の気持ちが変化している点に、なんだか映画が時間芸術であることを改めて感じ入りました


“ジグザグ道三部作”コンプできて大満足でした







『そして人生はつづく』(1992)

2016年10月29日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『そして人生はつづく』(1992)

監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ
製作:アリ・レザ・ザリン
出演者:ファルハッド・ケラドマンド、プーヤ・パイヴァール
撮影:ホマユン・パイヴァール
編集:アッバス・キアロスタミ、シャンギズ・サヤード

【作品概要】
「友だちのうちはどこ?」(1987)に始まり、「オリーブの林をぬけて」(1994)で完結するアッバス・キアロスタミの“ジグザグ三部作”の二作目。イラン北部を襲った大地震により崩壊した村を舞台に、「友だちのうちはどこ?」の出演者兄弟を、キアロスタミ監督とその息子が訪ね歩くという設定の中、村の人々の姿をドキュメンタリー・タッチで映し出していく。

【感想レビュー】@theater
1990年のイラン大地震の直後が舞台。ドキュメンタリー風だけど、物語なんです。
『友だちのうちはどこ?』に出演していた職業俳優ではない子役の少年が無事なのか、監督とその息子が会いに行くというストーリー。

テヘランから地方の村コケルまで、その道中に色々ありながらも車で移動する物語

でも、監督役はご本人ではなく俳優さんが演じています。

テヘランからは遠く、道も地震で寸断されていたり、その道のりは遠い。
息子を演じる少年の無垢さがとても良かったです
被災地に行くのに運転する父の後ろから、無邪気にサッカーの話をしたり、トイレに立ったらバッタを捕まえてきたり。微笑まし過ぎる

父も、わきまえなさいなどとは言わず、淡々とドライブは続きます。

やがて車は被災地を走る。

壊れた家。

物が散乱した家屋。

分断された道路。

テントで生活する人もいれば、散乱した家を片付けながら暮らす人もいる。

そんな被災地に住む人々。

しかし大変な変化がありながらも、日常を淡々と生きている人々。

こういう描写、3.11以降は敏感になってしまいます…。

それでも。

車は走っていきます。

『そのルートは道が壊れているから通れないよ』

幾度も行き方を尋ね、幾度もこう言われる監督…

ネバーギブアップなのだ。淡々と。


そして、じわっ…とくる辺りで、“これはあくまで撮影なのです。事実でもあるけど、虚構なのです”
といわんばかりに、演者がカメラの後ろにいるスタッフに呼び掛け、さらに応答の声が差し込まれる…

い、今じわってきてたのに…

こんな調子で、キアロスタミ監督に観ている方はしてやられっぱなしなのであります

映画が虚構であるという考えの最たるものですね

しかしこれ、このテイストで突然されるとビビる…。でも、だからこそ誠実なのですよね。ふむ。


急な斜面のジグザグ道を、懸命に車は上っていく。

上っては、上りきれなくて落っこちてきて(‼︎)、それでも懸命に。


壊れた家の向こうにオリーブの林が見える。


美しいオリーブの林。


説教臭くもなければ、お涙頂戴でもなく、時に映画の表と裏を映し出し、ふいに胸を熱くさせられる。

そんな映画でした


観れて良かったー





『トスカーナの贋作』(2010)

2016年10月25日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『トスカーナの贋作』2010年/フランス・イタリア/カラー/106分

監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ、マスメ・ラヒジ(脚色)
撮影:ルカ・ビガッツィ
出演者:彼女 - ジュリエット・ビノシュ、ジェームズ - ウィリアム・シメル

【作品概要】
イタリアの南トスカーナ地方で出会った男女が、夫婦に間違われたことから始まるラブストーリー。『桜桃の味』で第50回カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたアッバス・キアロスタミ監督が初めてイラン国外で撮影した本作は、本物の夫婦のふりをしているうちに互いの心情も変化していく一組のカップルの恋物語を映し出す。妻を、本作で初のカンヌ映画祭女優賞を受賞したジュリエット・ビノシュが、夫をイギリスのオペラ界を代表するバリトン歌手のウィリアム・シメルが好演。名匠ルカ・ビガッツィによるトスカーナの絶景も見ものだ。

【感想レビュー】@theater
こんなに台詞が多くて、感情の起伏も激しくて、そしてなんといっても美男美女が出てくるキアロスタミ監督の作品もあったのですねぇ…!
衝撃…

少し人生にくたびれた中年の悲哀と、でも、まだまだ生々しい男女の空気を感じさせる二人。

とっても面白かったです

畳み掛けるように場面が変化していき、息つく暇もありません


タイトルの“贋作”のように、知らない間柄のはずの二人は、いつの間にか倦怠期の夫婦のように振る舞い始める。
このスピーディーさ…!😳

二人のドライブは延々と続き、ハンドルを右に切り左に切り、車は進む。そして行く先々でワーワーと口論するのだ
もうエゲツないほど…!

道や車や、人生の描写は他の作品にも共通するものかと思いますが、男女や夫婦という設定が新鮮でした

ウィリアム・シメル氏が渋くてカッコよかった

トスカーナの街並みは美しく、なんかもう観ていて惚れ惚れとしました



『桜桃の味』(1997)

2016年10月24日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『桜桃の味』1997年/イラン/カラー/98分

監督:脚本:製作アッバス・キアロスタミ
撮影:ホマユン・パイヴァール
出演者:ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ、アフシン・バクタリ

【作品概要】
“自殺”を通して生きることの意味を語る傑作。


【感想レビュー】@theater
キアロスタミ監督の追悼上映特集、『キアロスタミの全仕事』に行って参りました。
平日なのにとても混んでいました。
ソフト化されている作品も多くはないので、上映の機会があるとやはり混むのですね📽

『桜桃の味』
時間が経つにつれて、じわじわと感じ入るものがあります。
98分間一貫していて、死にたい男がそのちょっとした(‼︎…本人はそんな感じでお願いする)手伝いをしてくれる者、を探すというシンプルなストーリーなのです。
キアロスタミ監督ならではの、“ジグザグ道”はもちろん健在
緩やかに見えたけども。

もう、うんざりするほど、行ったり来たりです。

“道”も。“人生も”…


クルド人も出てくるし、アフガニスタンやトルコなど、周辺の国から来てイランに暮らす人々も出てきます。それは、イランに暮らす人々にとっての日常なのだろうなぁ。

周辺の国で起きる事があまりにナチュラルに入り込んでくる環境に思いを馳せつつ。

でも、彼らとの出会いは主人公にとっては大した意味を持たないようでいて、いや、でも段々と変化していくようでもありました…

骨太で簡潔なテーマの一貫性と、豊かな描写のグラデーションに舌を巻きます。

動いていないようで、確実に動いているような。

こうして、強い一貫性を保った映画を観ると、数日経っても消えない侵し難いイメージが確立されていくのですね

確実に人生は続いていくのだ…という普遍的なメッセージを受け取りました。主人公の表情と、ラストの演出と。


ふと現実に心を配ると、果実は甘く、夕景は美しく、人は温かい。

何処でも、彼処でも。


キアロスタミ監督作品の必修(‼︎)ようやく観れました




『裸足の季節』(2015)

2016年08月18日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『裸足の季節』(2015)

(2015年/フランス=トルコ=ドイツ/97分)
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
音楽:ウォーレン・エリス
出演:ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシル、トゥーバ・スングルオウル、エリット・イシジャン、イライダ・アクドアン、ニハル・コルダシュ、アイベルク・ペキジャン
原題:MUSTANG
提供:ビターズ・エンド、サードストリート
配給:ビターズ・エンド

【作品概要】
自由を奪われた美しい5人姉妹の、甘美でほろ苦い反逆の物語。首都イスタンブールから1000km離れたトルコの小さな村に住む、美しい5人姉妹の末っ子ラーレは13歳。10年前に両親を事故で亡くし、いまは祖母の家で叔父とともに暮らしている。学校生活を謳歌していた姉妹たちは、ある日、古い慣習と封建的な思想のもと一切の外出を禁じられてしまう。電話を隠され扉には鍵がかけられ「カゴの鳥」となった彼女たちは、自由を取り戻すべく奮闘するが、一人また一人と祖母たちが決めた相手と結婚させられていく。そんななか、ラーレは秘かにある計画をたてる……。(アップリンクHPより)

【感想レビュー】@theater
圧巻…‼

何が圧巻かって。
娘たちみんな、脚長い!とにかく長くて真っ直ぐな脚‼
そしてみんな、髪長い!とにかく長くて豊かな髪‼
それを観ているだけでかなりのエネルギーチャージだった

あっという間に駆け抜ける娘時代の刹那。刹那だから眩しいんです。放たれる強烈な輝きをこんなに素敵な映像で観れるなんてっ

政教分離原則のトルコだし、娘たちは一見、今時のカラフルでカジュアルな服装で、手脚なんかも服から出放題なんです。イスラム世界だけど世俗主義国家だし、地方でもそうなんだふむふむ、と観ていたのですが…。

でも。

都市から遠く離れた小さな村に残る慣習は、政治とはまた別次元で彼女たちを蝕む。。

彼女たちが、眩しく描かれれば描かれるほど、その対比で胸が押しつぶされそうになるのだ。

冒頭の海のシーン、凄かったな…
なんか青春爆発でした!
まさに青春賛歌
陽に透ける栗色の豊かな髪が風になびく。ずっと観ていられる…と思いながら観てました

映画館がアットホームなところなのですが、末娘のキュートな発想に思わず笑いが起きたり、しんみりしたり、一体感があって、そういういのも良かったです



また、最近はトルコの物騒なニュースをよく目にするのでなんとも言えない気持ちになりつつ…。

そして、トルコ映画は幾つも観たわけではないですが、こんなにお洒落な映画もあるのだなとびっくりもしました