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☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『恋物語』(2015)@東京フィルメックス

2016年11月30日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『恋物語』(2015)

【作品詳細】
韓国 / 2015 / 99分 / 監督:イ・ヒョンジュ(LEE Hyun-ju)

美術大学院生のユンジュは、修了制作展のための素材を探すために入った店でジスに出会う。その後、コンビニで偶然再会した二人はつき合い始める。やがて、ユンジュはすっかりジスに魅了されてしまう。それは男性との付き合いでは感じられなかった感情だった……。イ・ヒョンジュが韓国国立映画アカデミー(KAFA)の卒業制作として監督したこの長編第1作は、女性二人の間に展開されるラブ・ストーリーを奇を衒うことなく真正面から描いた作品だ。二人のヒロインの微妙な感情の動きを見事にとらえる手腕はイ・ヒョンジュの才能を十分に感じさせる。チョンジュ映画祭の韓国映画コンペ部門で最優秀賞を受賞。サン・セバスチャン映画祭でも上映された。

【感想レビュー】@東京フィルメックス
11/24(木)、コンペティション部門の1本。

この日は雪☃️でしたが、もちろん楽しみに出掛けました

前日の初回上映と同様に韓国映画。『私たち』が子ども達を描いた作品なのに対し、こちらは大人の女性を描いたかなりアダルトな内容でした👀

Q&Aで監督は、女性同士の同性愛の作品は、韓国ではまだまだ…と仰っていましたけど、日本もまだまだです…と内心思いました。

それだけに、かなり真正面から描かれた内容に驚くと同時に、監督すごいなぁ…とも思いました。
また、とても丁寧な描写から、二人の間の愛情がいわゆる一般的な男女の恋愛と変わらないのだというメッセージや、同性愛ならではの周囲の理解を得難いという問題も、シンプルに受け取ることができました。
ジスは父親に打ち明けられず、周囲にも公言してはいないような描写がある。ユンジュの方は、男友達に打ち明け、彼はその事を驚きはするもののごく普通に受け入れるなど、周囲の受け取り方も、様々な立場で様々な温度があり、リアルに描かれていました。


美術大学院生ユンジュの目を伏せて微笑む控えめな表情が印象的で、一方、呑み屋で働いているジスの意志の強い眼差しも魅力的でした
メインの二人の女優の表情のグラデーションが素晴らしくて、グイグイ引き込まれました。

全般から中盤にかけての恋のホクホク期は特に楽しかったです


また、監督もチラリとご出演されていたと思います


Q&Aの様子



『ザーヤンデルードの夜』 (2016)@東京フィルメックス

2016年11月29日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『ザーヤンデルードの夜』 (2016)

【作品詳細】
イラン / 2016 / 63分 / 監督:モフセン・マフマルバフ(Mohsen MAKHMALBAF)

人類学者の父親と救急病棟で働くその娘のたどる運命をイスラム革命前、イスラム革命中、そしてイスラム革命後の3つの時代にわたって描き、マフマルバフ本人もその一端を担った1978年のイスラム革命の意味を鋭く問う作品。検閲によって25分間カットされた後、1990年のテヘラン・ファジル映画祭で上映されたものの、再度の検閲で上映自体が禁止となってネガが当局に没収されたため、それ以降イラン国内外を問わず全く見ることのできなかった幻の映画。近年、何らかの形でネガがイラン国外に持ち出されてロンドンで復元作業が行われ、本年のヴェネチア映画祭クラシック部門のオープニングを飾った。検閲前のオリジナル版は100分であったと言われる。

【感想レビュー】@東京フィルメックス
11/23(水・祝)の4本目。
特別招待作品フィルメックス・クラシックの1本です。

オリジナル版の100分から37分も検閲によりカットされているとのことで、さらに上映されている部分でも、音声が無音にされている箇所が幾つもありました。

逆に、このシーンはなぜ検閲に引っ掛からなかったのだろう…⁈⁈と思う部分も…。

でも、カットされている部分は反体制の言動をしているわけで、無声であるということ、それこそが、まさに体制からすると皮肉ながら監督のメッセージになってしまっているのですが。

革命前、革命中、革命後の3つの時代を経て、人々の考えが変化していきます。
もっと自らの頭で考えなければならないのではないか。映画はそんなメッセージを投げかけてきます。

とりわけ、夜のシーンが美しかったです。白々しい昼間と打って変わり、闇に紛れて真実が垣間見えるようでした。


【Q&A フィルメックス公式HPより抜粋】
17才の時、体制への反対運動で逮捕された監督は、その5年後に人々の考えが変化し、同じ広場で革命の暴動が起きたことに驚く。さらに10年後、同じ場所で交通事故に遭った人を皆が素通りする光景を目にした。「なぜ革命では助け合ったイラン人が、事故では助け合わないのか。その心の変化はどこにあるのか。それがこの映画の問いです」。作中では、革命前と革命後のイランの体制の変化も説明されている。「もし政治に1つの問題があれば、その背景にある文化には10の問題があると思った方が良い」とマフマルバフ監督は警告する。「私はこの映画をイラン人の姿を映す〝鏡〟として作りました。彼らに〝自分たちの姿を見てみろ〟と言いたかったのです」と作品の狙いを語った。


映画が人々の考えを変え、社会に変化作用をもたらすことについても言及されました。

それにしても検閲とは…恐ろしい。

そして、それでも諦めずに立ち向かって行くマフマルバフ監督の情熱に畏怖の念をおぼえます。
上映後のQ&Aでは、優しいお声のトーンで比較的ゆっくりな英語でお話しになられていました。

ゆったりとした雰囲気ながらも、力強くて熱くて、大きな大きなお人柄を感じました。
会場に居た人達を包み込むような温かさが印象的でした。

映画から感じたことを、監督ご自身からも感じました。不屈の精神。信念の人。
アミール・ナデリ監督にも感じることだけれど

壇上から、客席にいたアミール・ナデリ監督を『イラン映画の父』と紹介し、会場からまた温かな拍手が起きました

上映後は、とても清々しい気持ちになりました

手元にあるマフマルバフ監督の本、読まねばー!!
ぬおぉぉぉ

『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』という書籍です。



この日は、4本を観賞したところで会場を後にしました。


同日に、こんなに豊かな映画体験ができるとは…。
恐るべしフィルメックス…!!








『よみがえりの樹』(2016)@東京フィルメックス

2016年11月29日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『よみがえりの樹』(2016)

【作品詳細】
中国 / 2016 / 85分 / 監督:チャン・ハンイ(ZHANG Hanyi)

舞台は中国陜西省の山間の村。映画は、数年前に亡くなった女性シュウインの魂がその息子レイレイに憑依した、という設定から始まる。レイレイの姿を借りたシュウインは、レイレイの父、つまり自分の夫に対し、自分の願いを伝える。それは、結婚当時に植えた木を別の場所に移植してほしい、というものだった……。チャン・ハンイの監督デビュー作である本作は、一種の幽霊譚とも言うべき作品だ。映画の中では幾つかの不可思議な出来事が起こるが、そういった出来事が奇異なものではなく、ごく当たり前のように描かれている点が興味深い。ジャ・ジャンクーが若手監督作品をプロデュースする「添翼計画」の最新作。ベルリン映画祭フォーラム部門で上映。

【感想レビュー】@東京フィルメックス
11/23(水・祝)、この日に観たコンペティション部門の3本目。

最優秀作品賞に輝いた作品です。

亡くなった妻の魂が、息子の体を借りて、夫の前に現れる。思春期を迎え父親に反抗的な息子が、とたんに声は高くなり落ち着いた物腰の妻になる…!
息子役の男の子が、可愛らしい顔立ちなので、なんかものっすごく馴染んでました
それでまたその状況をナチュラルに受け入れる夫や両親達。

葉の落ちた木々が、枯れた山間の村の実情を無言のうちに語る。限界集落だ。ほとんどなす術もなく、ただただ村の運命を受け入れている。

家の前の木を別の場所に移したい、という願いを叶えるため、息子の体に降りてきた妻をトラックの荷台に乗せ、あっちへこっちへと夫が走らせる。
輪廻転生をシュールに描いた寓話であると同時に、夫婦の静かなロードムービーでもありました

所々、緩慢に感じる時間帯はあったけど、これまた所々、吹き出しそうになる所もありました。

高い木の上に登った山羊達の抵抗とか


Q&Aで、本作の舞台、黄土高原地帯は監督が子ども時代に過ごしていた故郷なのだと仰っていました。監督曰く、冬は娯楽もなく、何もすることがない土地、だそうで。

Q&Aを聞きながら、監督は、そのような土地で過ごしながら、いつ、どのようなタイミングで映画の勉強をしようと思ったのかしら、とふと思いました。






『私たち』(2015)@東京フィルメックス

2016年11月26日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『私たち』(仮題)(2015)

The World of Us / 韓国 / 2015 / 95分 / 監督:ユン・ガウン(YOON Ga-eun)
【作品解説】
ソンは、友だちを作りたくても上手く振る舞うことができず、学校でも仲間外れにされがちな10歳の少女。そんなソンは、夏休みに近くに越してきた同い年の少女、ジアと知り合う。お互いの家を訪ねるうち、友情を築いてゆく二人。だが、新学期が近づくにつれ、家庭環境の格差が二人の友情に影を落とす。多忙な父親、母親が働きに出ているソンは、母親に代わって弟の面倒を見なければならない。一方、一見幸せに見えるジアも、自分なりの問題を抱えていた……。子供たちの生き生きとした表情が鮮烈な印象を残すユン・ガウンの監督デビュー作。社会問題がさり気なく盛り込まれている点も興味深い。ベルリン映画祭ジェネレーション部門で上映。

© 2015 CJ E&M CORPORATION. And ATO Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
(フィルメックス公式HPより)

【感想レビュー】@東京フィルメックス
コンペティション部門の1本。
今日行われた閉会式で、スペシャル・メンションと観客賞を受賞されたようです

とにかく完成度の高さにびっくりしました

10歳時分、学校という場所にいた女子になら、まさにあるあるネタの連発です

子どもたち、特に主役の子の顔のクローズアップは素晴らしくて引き込まれました。周囲の彼女に対する不穏な言動を鏡のように映し出します。
学校と家とがほとんど彼女の世界のすべて。
視野の狭さを感じさせる描写にもなっていました。
そして、これだけ彼女を観ているわけなので、
思わず感情移入してしまいました。私はあまり映画に出てくるキャラクターに感情移入して観る方でないのですが、思わず

また、幼い弟の瑞々しさにも心が洗われるようでした。
弟の台詞が秀逸で、はっ…と一本取られてみたり…

ミサンガ。

ホウセンカの爪染め。

胡瓜の巻き物。

キムチチャーハン。

扇風機。

小さなエピソードやアイテムの重なりが、映画に奥行きをもたせ、豊かな世界を構築していきます。

少女時代、その渦中にいる時はもちろん大変なのだけど、ノスタルジーを感じさせる映画で、祝日の朝からなんだかとっても心に染み入りました





『The NET 網に囚われた男』(2016)@東京フィルメックス

2016年11月20日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『The NET 網に囚われた男』(2016)
@東京フィルメックス オープニング作品

【作品解説】
韓国 / 2016 / 112分 / 監督:キム・ギドク (KIM Ki-duk)
提供:キングレコード 配給:クレストインターナショナル

妻子と平穏な日々を送っていた北朝鮮の漁師・ナムは、網がエンジンに巻き込まれたトラブルにより、意に反して水上の韓国との国境を越えてしまう。韓国の警察に捉えられたナムは、スパイと疑われて拷問を受け、更には韓国への亡命を強要される。妻子の元にただ戻りたいだけのナムは自らの意思を貫き、ついに北朝鮮に戻ることになる。表面的には資本主義の誘惑に打ち勝った英雄として北朝鮮に迎えられたナムだったが、彼を待っていたのは更に過酷な運命だった……。キム・ギドク作品のトレードマークであった極端なバイオレンスは本作では封印され、体制に翻弄される一人の男の姿が重厚に描かれた傑作。ナムを演じたリュ・スンボムの熱演も見どころだ。
© 2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
(東京フィルメックス公式HPより引用)

【感想レビュー】@東京フィルメックス
今年も開会式+オープニング上映へ行って参りました
会場に熱気があって、映画祭に来たなぁ…としみじみ嬉しくなります。


上映前にギドク監督のご登壇もあって、こんなチャーミングな方だったんだとビックリしました。

『嘆きのピエタ』しかギドク監督作品は観てないと思う…ので、なんとも言えないのですが、なぜか勝手に、グロさやどこか少し土臭いイメージを持っていたので、今回の作品を観て、これまたビックリしました。

朝鮮統一問題がテーマなので、大筋が非常に分かりやすかったです。
長きに渡るこの大きな問題の最先端に、個人がどんどん絡みとられていってしまう様は、まさに、“網”でした。

主人公の男ナムは、漁師をして生計を立てている。貧しくても、家族が身を寄せ合って暮らす北朝鮮での暮らし。愛のある生活に妻も娘の顔も明るい。

一方、資本主義の韓国は、物は溢れ豊かで人々はさぞ幸せだろうと男は考えるが、貧富の格差が激しく、その暗部が計り知れないことを知る。

同民族間で血を流した朝鮮戦争。その憎しみ、その哀しみを持ち続けている人々。
そして南北のどちらにも、家族や親戚と分断され、会えないまま辛い日々を送っている人々。

そういった双方どちらにも内在する問題を、映画は、ごく自然な物語運びで滑らかに展開していく。凄く心地よくて引き込まれました。


私は、韓国は、北朝鮮を思想面で言っても、経済面で言っても、もはや別の国だと思いたいし、思っている人が多いのではないか、と考えていたので、上映前の監督も仰っていたし、劇中でもそういう台詞に託されていたと思うけれど、“南北統一”という理念を、新鮮に感じました。もはやそれは、非現実的にも思えるし、ドイツのように統一されることなんてあるのかしら…とさえ思うのです。

でも、“南北統一”は劇中の会話で度々交わされます。ユートピアのような、そんなことが現実になるのかしら…と思う次の瞬間、劇中の世界にも巨大な黒い染みが拡がっていくようで、たちまち意気消沈してしまうのですが…。

いや、でも…それでも。。北朝鮮の恐怖政治が終焉を迎え、朝鮮戦争を直接知らず、世代が移り変わって意識が変わっていった時に、そんな日が来るのかもしれないなぁ…とも思いました。問題山積みなのだけども。。

それは、主人公を警護するお役目の青年に表れていて、彼の誠実さだけが救いでした。


また、これはストーリーとは関係ないのですが、主人公のナムを演じた俳優さんが、ちょっと格好良くて
それは顔が、とかではなくて(←失礼…)、北朝鮮で暮らしている男性の役としては、髪が長髪だし…むむむ。
とか、筋肉のバランスが良過ぎてクールな肉体だったのも、肉体仕事でついた筋肉というよりも、トレーニングでついた洗練された筋肉の感じがして、ちょっと違和感に思っていたら、上映後のQ&Aで監督が、彼は今ヨーロッパで暮らしていて〜と仰っていたので、なんだか妙に納得したのでした…

監督のお人柄に少しだけ触れる機会というのは映画祭ならではですが、ギドク監督がなんだかもっのすごくニコニコ、ニコニコされていて、とってもチャーミングだったので、作風とのギャップにも驚きでしたけれど、お話しを聞いてから観たので、なんだか温かい気持ちになって、安心しながら観ました。

アクションシーン、格好良かったな.