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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

参考にならない ~ MDシステムの実効性

2009-04-06 07:28:36 | 政治
北朝鮮のロケットが、5日午前11時30分に発射された。

防衛省は、アメリカの早期警戒情報から、発射後1分で、その事実を確認した。さらに、イージス艦や地上レーダーによって、ロケットの軌道を追尾することに成功した。

ミサイルの発射や弾道など、少なくとも、情報収集の面では、ミサイル防衛システムが、上手く機能したように見える。

しかし、果たしてそうだろうか?

このロケット打ち上げは、北朝鮮のムスダンリから、4日から8日までの天気の良い日で、午前11時から午後4時に実行されることが、あらかじめ分かっていた。

加えて、その飛行コースも、北朝鮮が国際機関に事前通告していたので、大体の見当はついている。

だからこそ、「不測の事態」に備えて、PAC3を、秋田市や岩手県滝沢村に配備していた。

つまり、今回の情報収集は、例えて言えば、種子島宇宙センターから打ち上げられるH2Aロケットについて、自衛隊と米軍が、宇宙開発機構と連絡を取らない状態で、その発射を1分以内に確認して、弾道を追尾したのと、さほど変わらない。

1兆円に迫る値段のシステムである。

これだけの事前情報があって、探知出来なかったとすれば、それはお話にならない。

そして、現実をよく見ると、問題点の方が多い。

4日には、高性能レーダーに映った未確認飛行物体を、北朝鮮のロケットと信じ込んだ上に、規則に定められている確認手順を怠って、「発射」の誤情報を発信してしまった。

また、ロケットが日本上空を通過する際、部品などが落下していたとしても、軌道から考えて、それはPAC3の射程圏外で、結局、撃墜は不可能だったことも判明した。

このように、ある程度、発射日時や飛行ルートがあらかじめ分かっていても、それを正確に探知して、有効な迎撃態勢を取るのは難しい。

もし本当に、北朝鮮が日本に向けてノドンミサイルを発射するならば、何日も前から、屋外に発射台を設置したりはしない。

闇夜に紛れて、移動式の発射台、あるいは、地下基地から撃つだろう。

しかも、同時に複数撃つ可能性が高い。

当たり前だが、ミサイルの飛行ルートも教えてくれない(笑)。

その場合、早期警戒衛星の赤外線データから、発射位置やミサイル総数などを特定し、さらに、レーダーを使って、すべてのミサイルを捕捉して、軌道や着弾場所を割り出すのに、どのくらい時間が掛かるだろうか?

あるいは、何発までなら、対応可能だろうか?

タイムリミットは7分である。

また、それらが上手く行ったとしても、イージス艦のSM-3やPAC-3によって迎撃出来るかどうかは、まったく別の問題だ。

そして、こちらも見通しは悲観的である。

SM-3は、事前情報がないケースでの迎撃実験には、成功していない。PAC-3の射程は20km程度で、守れる範囲がとても狭い。

日本は、アメリカの進めるミサイル防衛構想に、どっぷり追随する唯一の国であるが、実効性に疑問符がつく、この超高額システムを、今後も購入し続けるべきかどうか、十分に検証する必要がある。

昨日行われた、北朝鮮のミサイル発射実験は、日米のMDシステムにとって、人工衛星搭載ロケットが、事前の予告どおり、日本上空を通過した以上の意味は持っていない。

おまけに、問題なのは、二百発の実戦配備が噂されている、準中距離弾道ミサイルのノドンである。こんなに射程の長いテポドンではない。

従って、この数日間の出来事は、MDシステムの実効性を考える上で、何の参考にもならないが、どういうわけか、与党から、その強化を求める声が出ているらしい。

不思議な話である。

「迎撃出来ない」と「迎撃しない」を混同しているのかもしれない。


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迎撃にまつわる憂鬱な事情

2009-04-04 02:51:01 | 政治
北朝鮮が、自称「人工衛星」を、日本上空に向けて、打ち上げようとしている。

日本政府は、このロケットが日本に落下する場合、迎撃システムで撃ち落とすと、繰り返し表明している。

しかし、迎撃ミサイルが実際に発射される可能性は、低いと思う。

理由は二つである。

一つは、技術的理由から。

かつて湾岸戦争のとき、サウジアラビアの首都リヤドに飛来したイラクのスカッドミサイルを、米軍のパトリオットが撃ち落とした映像は、衝撃的だった。

しかし、この場合、スカッドが、リヤドを狙っているのは、はっきりしていた。だからこそ、リヤド近郊に、パトリオット部隊は展開していたし、弾道もまだ予測しやすかったはずだ。

一方、どこに向かっているのか、はっきりしない北朝鮮の高速ロケットに、迎撃ミサイルをぶつけるのは、大変に難しいだろう。

アメリカは、高速で飛ぶミサイルに対する迎撃実験の成功を強調するが、それは、撃ち落とす側が、何処から、何時、どの方向に、どのようなスピードで、目標物が発射されるのか、あらかじめ分かっている場合に限る。

しかも、それが分かっていても、決して百発百中とはいかない。風の影響を読むのも難しいし、飛翔体はとても小さい。少しの誤差でも、失敗につながるからである。

もちろん、北朝鮮の打ち上げるロケットである。彼らが情報を与えてくれるわけがない。

さらに、日本に落ちてくるのは、ロケットの空中分解など、不測の事態が起こった場合で、その軌道を読むのは、絶望的に難しい。

そして、もし、イージス艦やPAC3の展開場所から、かなり離れたところに落ちた場合は、命中精度は一層小さくなる。射程圏外であれば、何も出来ない。

また、迎撃ミサイルを発射して、目標に当たらなかったとき、その後のミサイルのゆくえも、大変に心配である。

上手く自爆してくれれば良いが、一発でもそのまま飛び続けることになれば、そちらの方が、脅威になってしまう。

二つめは、政治的理由である。

迎撃ミサイルを発射して、当たらなかった場合、莫大な税金をつぎ込んで購入した、このシステムは、実は、全くの役立たずではないかという批判が、国民から出るのは当然である。

実際、アメリカの民主党は、ブッシュ大統領の時代に、共和党政権が進める迎撃システムの実効性に疑問を投げかけ、税金の無駄遣いであると批判し続けていた。

確かに、発射された大陸間弾道ミサイルを、自国から遠い場所で撃墜するのは、技術的に極めて難しい。

また、標的となっている都市の上空で破壊しても、核弾頭や化学兵器を搭載している場合は、甚大な被害が発生することに、変わりがない。

民主党が批判するのも、無理からぬことである。

イージス艦にしても、PAC3にしても、目をむくような額の税金がつぎ込まれている。

迎撃失敗の場合、未曾有の不況の真っ只中、使いものにならない軍事的おもちゃに、湯水のごとくお金を注ぎ込む余裕などない、という声が、日本でも強くなるのは目に見えている。

そして、それは、迎撃システムを購入した防衛省と、開発して売却したアメリカ政府が、もっとも怖れる批判である。

もともと技術的に失敗する確率の高い迎撃を、それだけの政治的危険を冒してまで、日米両政府が実行するとは思えない。

事実、北朝鮮がロケット発射を強行することが明確になって以降、防衛省やペンタゴンの発言は、当初と比べて、明らかにトーンダウンしている。

北が断念しないのであれば、脅しをかけても無意味ということなのかもしれない。

イージス艦の出港シーンやPAC3配備の様子をマスコミに流して、政府は国民の安全のために、最善を尽くしていますよ、とアピールする道具として使う。

出来れば、その辺で止めておきたい、実際に迎撃して、システムの実効性を試験されたくはない、そういう気持ちがあるのではないか。

技術的に迎撃出来ないのに、「迎撃出来ない」とは言えない政府。

北朝鮮の「人工衛星」で明るみに出た、日本の憂鬱な事情である。

結局、軍事ミサイルが、明らかに日本の都市を標的にして飛んでくるような、究極の場面でない限り、この迎撃システムは稼働させないのではないだろうか。

ところで、一つ疑問がある。

北朝鮮が、今回と違って、まったく予告なく、秘密の基地から、いきなりロケットを発射した場合、それが日本を標的にした軍事ミサイルであるかどうか、どのくらいの時間で、判別できるだろうか?

発射後、日本までの到達時間は、たったの7分だそうだ。

この時間では、判別はおろか、発射確認すら、出来ないかもしれない。

呆然とする話である。

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プロ野球はローカルに向かっている

2009-04-02 01:14:01 | Weblog
日本テレビは、地上波による巨人戦の中継を、昨年の45試合から、今年は26試合に減らすそうである。

これでプロ野球も、いよいよ簡単には見られなくなった、と思いがちだが、実際はそうでもない。

私の地域では、埼玉テレビ、テレビ神奈川、東京MXテレビの三つを視聴出来るが、これらのローカル局が、結構頻繁にプロ野球中継を流している。

埼玉テレビは西武ドームの西武戦、テレビ神奈川は横浜スタジアムの横浜戦、そして、東京MXテレビは神宮のヤクルト戦という具合に、地元チームの本拠地での試合を中心に放映している。

その結果、以前は、巨人戦しか見られなかったものが、今では、それ以外のセ・リーグの試合や、パ・リーグの試合も楽しめる。

さらに、交流戦もあるので、多種類の対戦カードをテレビで観戦可能になった。

これは、プロ野球ファンにとっては、却って、歓迎すべき事態であると思う。

ローカル局によって野球中継が多様化する一方で、キー局による、巨人戦ナイターの視聴率は、2000年くらいから、毎年、じりじりと下がり続けている。巨人が優勝しようが、日本一になろうが、さらに、2006年、WBCで日本が優勝しようが、関係なしである。

もはや、巨人戦を中継するより、オードリーの漫才を流した方が、数字が取れるところまで来ている(笑)。掛かる経費を考えれば、テレビ局が、ナイター中継を減らすのは、当然のことではある。

では、巨人戦の視聴率低迷という現象は、日本プロ野球の凋落を示すものだろうか?

いや、そう判断するのは、誤りかもしれない。

確かに、全国放送で、常時20%を獲得するような、人気チームは存在しなくなった。どんな好カードでも、ペナントレースの普通の試合では、全国のひとが、テレビにかじりついて観ることはなくなった。

しかし、一方で、札幌の日本ハムファイターズや福岡のソフトバンクホークスのように、地元の熱い声援を受けるチームは、むしろ多くなっている。

実際、ホームゲームが満員になり、ローカル局による中継が、高い視聴率を叩き出すのは、見慣れた光景になってきた。

これは、プロ野球ファンの裾野を確実に広げているはずである。

WBCの驚異的な視聴率も、「地元チームのよく知っている選手に、大舞台で活躍して欲しい」、そう願うファンが増えたことが、原因の一つではないだろうか。

プロ野球は、今、凋落というより、ローカルに向かいつつあるのだと思う。

かつての王・長嶋の時代は、中央集権的な経済で、地方都市の力がまだ脆弱だったため、フランチャイズという発想は、現実味が乏しかったかもしれない。しかし、現在では、地方といえども、その市場規模や資本力は、決してあなどれない。

二三のチームだけが全国のファンを独占し、大きな企業がそれらを支えて、全国放送のテレビが限られた対戦カードだけを中継する。

そういう時代は、終わりつつある。

そして、地元の声援を受けたチームが、地元のファンや企業から資金援助を受け、地元のローカルテレビが試合を中継する。

そういう新しい時代が始まっている。

今は、その過渡期ではないだろうか。

もし、ある球団の経営者が、この大きな潮流を理解せず、全国区の人気にこだわり、そのため有名選手の独占に血眼になり、親会社や大企業の方ばかりを向いて、「地元のファン」を軽視するならば、やがては自分のチームを危うくすることになるだろう。

この数年で、試合中継が本当に激減したチームが、一つだけある。

巨人である。

なぜなら、巨人戦を中継するローカル局は、今のところ、ないからである。


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日テレの苦しい「言い訳」

2009-04-01 00:56:02 | Weblog
日本テレビの細川知正社長が、WBC放映の獲得権をなぜ放棄したのかという批判に対して、「結果論。アメリカに行けなかった可能性もあった」と答えたそうだ。

唖然とする発言である。

WBC開幕前に、野球ファン5人に尋ねたら、1人が優勝、2人が準優勝、残り2人が第2ラウンド敗退、といった感じの予想をしたのではないか。

第1ラウンドで敗退という予想は、相当に辛口のひとでも、まずしなかっただろう。

また、今回のWBCでは、因縁の対決である日韓戦が、最大5回も実現する可能性があった。選手やチームには厄介な話だが、視聴率を考えれば、中継する方にとっては「おいしい」話である。

さらに、スポンサーも、マクドナルドのような大企業が、バックアップに乗り出していた。

細川社長は、北京五輪でのメダルなしを指摘したとも聞くが、それでも、あの時、日本は四強に入ったし、韓国戦など、要となる試合の視聴率は、決して悪くはなかった。

以上を考えれば、優先的な獲得権を投げ出す理由は、どこにも見当たらない。

「結果論」ではなく、拙い経営判断だったと言うべきだろう。

読売グループの渡辺恒雄会長が、この件に関して、日テレを強く批判したそうだが、笑止千万である。

その発言からも読み取れるが、渡辺氏自身が、WBC開幕前、日本の活躍に対して、非常に懐疑的だったのは明白である。

実際、自分が推す星野仙一氏が、代表監督になれなかった時点以降、日本代表に対して、後ろ向きな態度が目立っていた。

むしろ、日テレがWBC放映権を手放したのは、読売グループトップのこの態度が大きかったのではないか。

事実、ナベツネ激怒のあと、日テレは、巨人開幕戦の延長放送を急遽決めている。WBC効果でプロ野球人気が高まったためだと説明しているが、それだけだろうか。

もし、本当にWBC人気に便乗するのなら、日テレは、巨人対広島ではなく、日本ハム対楽天の開幕戦を流すべきだろう。

何と言っても、ダルビッシュと岩隈、WBCで大活躍した両投手の投げ合いである。どっちが日本のエースなのか、興味をかき立てられる野球ファンは多いはずである。

一方、巨人対広島の場合は、それに比べると、WBCで大暴れしたという印象は、残念ながら薄い。

強いて言えば、原監督である(笑)。

グラウンドで大活躍、とはいかない。

結局のところ、経営判断が上手く出来ない社長と、自分の無思慮な発言が自分の首を絞めてることに気づかないグループトップによって、数社しか持てない、特権とも言えるテレビ放送権が、粗雑に扱われている。

仕事の出来ない人間が、大きな企業のトップに居座っている。この不可思議な事実が、日本の不景気を、さらにこじらせているのではないか。

日テレは、みのもんたを降板させるようだが、本当に辞めるべき人間は、もっと他に、もっと上の方にいると思う。

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