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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

脇谷選手の落球誤審にみる「だろう」守備

2011-05-13 07:39:12 | 野球
4月20日の阪神・巨人戦における誤審問題は、阪神が審判技術向上の申し入れを行っただけで、公式にはほとんど何のリアクションもなく終わってしまった。

NPBの結論は、予想した通り、今のプロ野球の「常識」からすれば、何の問題もないということらしい。

「常識」をもう一度見直したらどうかという話は、4月22日と25日のブログに書いたので、少し角度を変えて、脇谷選手の落球後の行動が守備プレーとしてどうだったのかという点を考えたい。

落球時のVTRを詳しく見ると、脇谷選手はバックスクリーン方向に頭を向けて倒れこみ、仰向けに起き上がりながら、一塁方向から近寄ってきた塁審の方に顔を向けている。

塁審は最初に両手を広げるしぐさを見せた後、右手を挙げてアウトを宣告したが、その間、脇谷選手は胡坐をかいたような姿勢で審判の方を見続け、右手でボールを挙げて捕球をアピールしている。

つまり、座ったままで、内野へは返球の素振りすら見せていない。

しかし、審判が誤審して、アウトを宣告する保証はどこにもないのだから、落球後は、すぐに立ち上がって送球姿勢を取り、しっかりと本塁方向を見るのが、まず第一のはずである。一塁走者の新井がホームインしたかどうか、打者走者のブラゼルはどこにいるのか、二塁にショートの坂本が入っているかどうか、確認するためだ。

そして、本塁が間に合わなければ、ブラゼルに二進を断念させる行動を取らなければならない。

実際、審判にアピールしている時点で、ブラゼルはすでに一塁をまわって、二塁へ向かっている。しかも脇谷選手が座り込んで送球姿勢を取っていないことを見ている。

加えて、阪神はすでに2人がホームイン。7回裏で3点差までリードが広がり、おまけに、アウトカウントはツーアウト。足の遅いブラゼルだが、リスクを冒して二塁を狙ってもよい状況で、セーフという正しい判定が出た場合、再び得点圏にランナーが進んでしまう可能性は十分にあった。

たまたまアウトがコールされたので事なきを得たが、立ち上がってブラゼルをけん制するのは最低限のプレーだったはずである。

「本塁は間に合わないだろう」「ブラゼルは足が遅いので二塁は狙わないだろう」そして「アピールすれば審判はアウトにしてくれるだろう」。

脇谷選手は幾つもの「だろう」を重ねて、立ち上がらず、送球姿勢を取らず、落球後に必要なプレーを怠ったと言わざるを得ない。

かつて巨人は、1987年西武との日本シリーズ第6戦、秋山のセンター前ヒットで一塁走者の辻がホームインして、痛い負けを喫したことがある。

センターのクロマティが緩慢な山なりボールを内野へ返したことが原因だったが、これも「辻は二塁で止まるだろう。まさか三塁は狙わないだろう」という思い込みが背後にあった。

このプレーがシリーズの流れを決めて、西武が日本一になったという意見も多い。もし、クロマティが基本に忠実に、すばやく三塁に返球していれば、シリーズの行方はまた違ったものになっていたかもしれない。

あれから20年以上経っているが、「だろう」守備をなくして、基本に忠実な隙のないプレーを行うのは、相当に難しいことのようだ。「プロ」というのは、「基本」を蔑ろにすることではないはずだが。

<関連ブログ>
4月22日
脇谷選手の落球・誤審はプロ野球の試金石
4月25日
そんな試合を見たかったんじゃない


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