菅首相の要請を受ける形で、浜岡原発のすべての原子炉の停止が決まった。この決定の持つ意味は大きい。
なぜなら、一度停止した浜岡原発を再稼動する可能性は低いからである。
原発の停止期間は、津波対策の柱である防潮堤工事が完了するまでの数年程度という声も聞かれるが、これは単なる憶測に過ぎない。様々な事情を考えると、原発再稼動のチャンスはまず訪れないだろう。
その事情とは、
1) 節電対策が進んで、電力の需給バランスが早期に安定化する
福島第一原発の事故を受けて、関東圏では「節電ブーム」が起っている。LED電球、省エネ家電、蓄電池、太陽光発電。一般家庭から工場まで、社会全体が節電・蓄電・自家発電に邁進している。おそらく中部電力管内でも、同様の動きが始まるだろう。
節電による需要の抑制、蓄電による消費時間帯の分散、自家発電による供給増。こういった消費側の取り組みによって、需給バランスの切迫感は、短期間で相当程度に緩和されることが期待できる。
しかも、需給バランスが問題になるのは、酷暑になった場合の真夏の日中だけである。中部電力が行うであろう火力・水力による供給の積み増しなどを考えると、浜岡原発の再開が不可欠という事態が来るとは思えない。
勿論、関西電力管内のように原発依存度の非常に大きい地域であれば、原発全停止には代替エネルギーの大規模開発を検討する必要があり、実現にはかなりの時間が掛かる。
しかし、中部電力の場合、原発依存度は東京電力よりもずっと低く、より対応しやすい筈である。だからこそ菅政権も浜岡原発の即時全停止を要請したのだろう。
2) 反対を押し切って再稼動を許可する政権は現れない
浜岡原発の再稼動が問題になるのは、次の衆議院議員選挙のあたりである。当然のことながら、地震対策や津波対策が万全かどうかが、一つの争点になる。
しかし、この時点で福島第一原発の事故が完全収束している可能性は低い。一方、事故の検証を進めれば、安全対策の欠陥に加えて、政治家・官僚・学者・企業の深刻な癒着構造など、これまでの原発推進政策の問題点がいくつも浮かび上がってくる。
こういった状況下で、公然と原発推進を掲げて選挙に臨む政党はほとんどないだろう。ましてや、世界で最も危険な場所に立っている浜岡原発を再稼動させるという主張は、他候補から見れば、格好の攻撃材料になる。
従って、「浜岡原発再稼動」は勿論、「原発推進」ですら、それを唱えて当選する候補や政党は少なく、国会で主流を占めるとは思えない。
また、どの政治勢力が衆議院で過半数を得たとしても、参議院の状況から考えて、現在の菅政権と同様、政治基盤の脆弱な政権となるのは避けられない。もし「隠れ推進派」が政権を握ったとしても、不安定な政府にとって、浜岡原発再稼動は、あまり手を付けたくないデリケートな問題で、おそらくは先延ばしという結論になるのではないか。
つまり、原発推進派が政権の座に就いたとしても、浜岡原発の再稼動を決断する政治エネルギーはないと見るのが妥当だろう。
3) 浜岡原発への国際的逆風
今回の福島第一原発事故は、原発推進国の政府や原発関連企業にとって、迷惑以外の何ものでもない。事実、国際的に原発反対の声が高まり、多くの国で建設計画や稼動計画が一時中止を余儀なくされている。
もし、さらなる大事故が発生した場合、国際世論が決定的に反原発へと向かうのは間違いない。世界の原発推進派が一番恐れる事態である。
そして、生々しい現実感を持って、大事故の可能性を危惧されているのが、日本の浜岡原発である。
浜岡原発で福島と同じ程度の事故が起った場合、偏西風によって、放射性物質が首都圏を直撃する危険がある。数百万人単位の強制避難も絵空事ではなく、世界最大の原発事故になってもおかしくない。
その場合、世界中の多くの原発関連企業が深刻な打撃を受けるだろう。原発で儲けようとする日本以外の人々にとって、浜岡原発の存在は、出来れば消し去りたいリスク因子に他ならない。
世界屈指の大地震が起こる地域を選んで、わざわざ、そのど真ん中に原発を建てる日本という国は、一体何を考えているのか?
原発反対派だけでなく、推進派も含めて、世界中の多くの人がそう考えるのは、当たり前のことである。全世界に放射能をばら撒いた日本が、国際社会のこの至極もっともな批判を無視し続けるのは容易なことではない。
なぜなら、一度停止した浜岡原発を再稼動する可能性は低いからである。
原発の停止期間は、津波対策の柱である防潮堤工事が完了するまでの数年程度という声も聞かれるが、これは単なる憶測に過ぎない。様々な事情を考えると、原発再稼動のチャンスはまず訪れないだろう。
その事情とは、
1) 節電対策が進んで、電力の需給バランスが早期に安定化する
福島第一原発の事故を受けて、関東圏では「節電ブーム」が起っている。LED電球、省エネ家電、蓄電池、太陽光発電。一般家庭から工場まで、社会全体が節電・蓄電・自家発電に邁進している。おそらく中部電力管内でも、同様の動きが始まるだろう。
節電による需要の抑制、蓄電による消費時間帯の分散、自家発電による供給増。こういった消費側の取り組みによって、需給バランスの切迫感は、短期間で相当程度に緩和されることが期待できる。
しかも、需給バランスが問題になるのは、酷暑になった場合の真夏の日中だけである。中部電力が行うであろう火力・水力による供給の積み増しなどを考えると、浜岡原発の再開が不可欠という事態が来るとは思えない。
勿論、関西電力管内のように原発依存度の非常に大きい地域であれば、原発全停止には代替エネルギーの大規模開発を検討する必要があり、実現にはかなりの時間が掛かる。
しかし、中部電力の場合、原発依存度は東京電力よりもずっと低く、より対応しやすい筈である。だからこそ菅政権も浜岡原発の即時全停止を要請したのだろう。
2) 反対を押し切って再稼動を許可する政権は現れない
浜岡原発の再稼動が問題になるのは、次の衆議院議員選挙のあたりである。当然のことながら、地震対策や津波対策が万全かどうかが、一つの争点になる。
しかし、この時点で福島第一原発の事故が完全収束している可能性は低い。一方、事故の検証を進めれば、安全対策の欠陥に加えて、政治家・官僚・学者・企業の深刻な癒着構造など、これまでの原発推進政策の問題点がいくつも浮かび上がってくる。
こういった状況下で、公然と原発推進を掲げて選挙に臨む政党はほとんどないだろう。ましてや、世界で最も危険な場所に立っている浜岡原発を再稼動させるという主張は、他候補から見れば、格好の攻撃材料になる。
従って、「浜岡原発再稼動」は勿論、「原発推進」ですら、それを唱えて当選する候補や政党は少なく、国会で主流を占めるとは思えない。
また、どの政治勢力が衆議院で過半数を得たとしても、参議院の状況から考えて、現在の菅政権と同様、政治基盤の脆弱な政権となるのは避けられない。もし「隠れ推進派」が政権を握ったとしても、不安定な政府にとって、浜岡原発再稼動は、あまり手を付けたくないデリケートな問題で、おそらくは先延ばしという結論になるのではないか。
つまり、原発推進派が政権の座に就いたとしても、浜岡原発の再稼動を決断する政治エネルギーはないと見るのが妥当だろう。
3) 浜岡原発への国際的逆風
今回の福島第一原発事故は、原発推進国の政府や原発関連企業にとって、迷惑以外の何ものでもない。事実、国際的に原発反対の声が高まり、多くの国で建設計画や稼動計画が一時中止を余儀なくされている。
もし、さらなる大事故が発生した場合、国際世論が決定的に反原発へと向かうのは間違いない。世界の原発推進派が一番恐れる事態である。
そして、生々しい現実感を持って、大事故の可能性を危惧されているのが、日本の浜岡原発である。
浜岡原発で福島と同じ程度の事故が起った場合、偏西風によって、放射性物質が首都圏を直撃する危険がある。数百万人単位の強制避難も絵空事ではなく、世界最大の原発事故になってもおかしくない。
その場合、世界中の多くの原発関連企業が深刻な打撃を受けるだろう。原発で儲けようとする日本以外の人々にとって、浜岡原発の存在は、出来れば消し去りたいリスク因子に他ならない。
世界屈指の大地震が起こる地域を選んで、わざわざ、そのど真ん中に原発を建てる日本という国は、一体何を考えているのか?
原発反対派だけでなく、推進派も含めて、世界中の多くの人がそう考えるのは、当たり前のことである。全世界に放射能をばら撒いた日本が、国際社会のこの至極もっともな批判を無視し続けるのは容易なことではない。