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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

「収束」できない原発事故 ~ 「水素発生」への無為無策

2011-05-04 12:35:53 | 原発事故
4月23日付のウォールストリートジャーナル(電子版)は

「ベントの遅れが水素爆発を招いた」

という日米専門家による分析記事を載せた。格納容器の圧力が通常の2倍になるまでベントをためらったので、排気パイプの継ぎ目から水素や放射性物質のガスが漏れ易くなり、水素爆発に至ったという分析である。

これは実に不可思議な意見だ。

ベントを実行するのは、格納容器内部の圧力が高まっている時である。従って、排気専用パイプを高圧のガスが通るのは当たり前で、その継ぎ目からガスが漏れるというのは、手抜き工事か設計ミス以外の何ものでもない。

しかも原発の専門家が、格納容器の耐圧上限内のガスを排気して、継ぎ目から漏れたと言うのなら、専門家自らが排気配管系の設計ミスを認めたことになる。

こういった設計上の無為無策は、ベントに関わる部分だけではない。そもそも、原子炉で水素が発生したときの対処方法はいっさい検討されていない。

格納容器にたまった水素ガスを、何かに吸着させる、もしくは穏やかに化学反応させて別のより安全な物質に変える、といった水素回収システムはどこにも見当たらない。

「水素発生」への設計上の対策が皆無であるため、現在でも、福島第一原発は水素爆発の危険にさらされ続けている。

1979年のスリーマイル島原発事故でも、メルトダウンによって原子炉内で水素が発生し、その対策に四苦八苦している。そして驚くべきことに、それから30年以上経った今でも、発生した水素に対して出来ることは、窒素を注入することぐらいで、事実上何もない。当時と同じ状況である。

スリーマイルの貴重な教訓である「水素」への対策を、30年以上も時間があったにもかかわらず、設計に一切盛り込まなかった上、ベントの配管系すら高圧ガスに耐えられない。

こういったシステムを「絶対安全」と言い続けてきた専門家というのは、一体どういう精神構造をしているのだろうか。

「収束」できない原発事故。

過去の重大事故を他人事だと無視し続けた、傲慢でずさんな設計思想がその背後に見え隠れする。

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