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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

酔っぱらいの向こう側

2007-11-23 20:04:17 | Weblog
朝の八時頃、駅のホームで電車を待ってたときのこと。五十代くらいのおじさんが、階段の上で、ワンカップ酒をパカッと開けるのが見えた。おじさんは、階段を下りながら、酒をこくこく。ホームに降り立つ前に、飲み干して、「はあー」。

あまりの光景に、言葉が出なかった。朝のまだ早い時間に、酒。しかも、酔って宴会とかじゃなくて、水を飲むみたいに、一気に。でも、間違いなく、あれは、日本酒だった。このおじさんは、どういうひとなんだろう。訳が分からなかった。

それから何年かして、吾妻ひでおの「失踪日記」というマンガを読んで、納得した。おじさんは、アルコール依存症の一歩手前だったんですね。

吾妻ひでおは、ギャグ、ロリ、美少女が得意で、熱心なファンも多い、サブカル系のマンガ家(こう言って、いいのかな?)。ところが、執筆活動の辛さからだと思うけど、彼は、二度失踪して、ホームレス生活を送り、さらに、アルコール依存症になって強制入院、という強烈な体験をした。「失踪日記」は、それをマンガにしたものです。

「失踪日記」によると、アルコール依存症は、酒が好きで好きで、飲んでる状態では、ないらしい。酒を止めると、度を越した二日酔いが襲ってきて、幻覚、幻聴、被害妄想、恐怖感などの禁断症状が出てしまう。それは死ぬほど辛いらしい。それが嫌で、酒を飲み続ける。

だから、飲んでて、楽しいわけではない。胃腸がボロボロになるので、食事はもちろん、酒も受け付けなくなる。それでも、飲む。酒を飲んで、すぐに吐いて、それでもまた飲む。また吐いても、飲む。飲まないと、禁断症状が出るので、何としても、飲む。しかも、酒の影響で、夜、ほとんど眠れなくなる。まあ、「地獄を見た」に近いものがあるようです。

吾妻さんは、心配した家族が、強制入院させて、治療を始めた。彼は、禁断症状を抑える薬があることを知って、安心したそうです。もう、飲まなくていいって(笑)。もちろん、最初だけですけど。体が、ボロボロだから。復調したら、当然、また飲みたくなる。

「アル中が治ったら、晩酌くらいはいいだろう、今度は飲み過ぎないようにして」。彼は、そう考えたらしいですが、これは大きな間違いだった。一度、依存症になると、一生、断酒するしかないそうです。

こんな話がありました。依存症のひとが、十年近く断酒していた。あるとき、町内で祭りがあって、はっぴ着て御輿をかついだ。喉が乾いたので、目の前にある家のおばさんに、水を一杯頼んだ。で、それをくいっと飲んだら、酒だった。おばさんが、気を利かせたらしい。

その後、彼は、二杯目、三杯目と、酒が止まらなくなって、何時間も何時間も、飲み続けて、結局、ぶっ倒れて、救急車で病院に運ばれた。飲むと暴れる癖があったので、大騒動だったそうな。

アルコール依存症は、不治の病らしい。

でも、一番怖いのは、肝臓や腎臓をやられて、死んじゃう話ですね。どんどん、死ぬらしい。これは、読んでて、ぞっとしますね。

飲み始めると、止められない。あのおじさんみたいに、日の光を浴びても、飲める。酔うことだけを目的に、一気に飲むことがある。こういうのは、かなりやばいらしい。私も、大の酒好きで、とことん行く方なので、全然、他人事ではないです(^_^;)。

このブログ、いま飲んでる方は、読まない方がいいかも。せっかくの酒が、不味くなりますね(笑)。

ちなみに、吾妻さんは「失踪日記」で、手塚治虫文化賞、日本漫画家協会賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞など、大きな賞を、総なめにしました。転んでも、ただでは起きない。その根性、見習いたいです(笑)。

では、では。

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