ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

茂木健一郎「欲望する脳」(集英社新書)

2008-01-19 09:10:54 | 雑文
この本は凄い。内容が濃い。一行一行というよりも、1章1章が深く考えさせる問題を提起している。茂木氏は一応脳科学者という肩書きであるが、それどころではない。哲学者で、宗教学者でもある。もちろん社会学者をそれに加えてもいい。現職は、ソニーコンピューターサイエンス研究書のシニアリサーチャーということになっている。その仕事の内容が何かはよく分からない。学歴を見ると、東大理学部を卒業後、法学部も卒業し、同大学の大学院物理学専攻課程修了、理学博士とある。オマケにケンブリッジ大学も経ている。
わたしは一度脳科学関係の本を読んでおきたいと思い、軽い気持ちで、この本を手にした。後書きを見ると、この本は集英社のPR誌「青春と読書」に連載されたものをまとめたものである。集英社という割合軽い本を沢山出している出版社ということと、そこから出ている無料で配布される雑誌の掲載ものということで、軽い気持ちで読めると思って買ったのだが、読み出して、わたしの先入観を反省している。
この本は凄い。そう簡単に、一気に読むことができないほど、内容が詰まっている。全部で24章あるが、3章も読めば、頭の中が満タンになり、もうそれ以上読めなくなる。従って、何日もかかって、ゆっくり読まなくてはならない。その間、本から離れていても、そこで出された問題を考え続けている。
たとえば、第1章に「人間の行動は、どのようにして決定されるのか。人間は自由な意志を持つのか。それとも利己的な遺伝子に踊らされる哀れな存在でしかないのか」(11頁)という文章が倫理性の文脈で語られる。今、わたしは何気なく「文脈」という言葉を用いたが、この「文脈」という言葉は、本書のキイワードの一つである。また、第2章では、欲望についての分析の過程で、「母親の胎内で全てが充足していた世界から、いきなり他者の溢れる世界に投げ出される。聖書の原罪はまさにこの遷移を描いたものであるし、その意味で私たち全員は原罪から自由ではない」という言葉がサラッと出てくる。(つづく)

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