ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

東野圭吾『名探偵の呪縛』

2009-04-28 09:01:11 | ときのまにまに
東野圭吾の『名探偵の呪縛』を読み終えた。途中、退屈して中断することもあったが、ともかく何か不思議な魅力に引きずられて読み続けた。何か不思議な世界である。小説の筋というよりも、もっと根本的にこの小説を成り立たせている土台ともいうべき不思議な世界が何なのかということを解明するために読み続けた。「こちらの世界」から「あちらの世界」への移りゆきが「夢を見ている」ようで、劇的でないのが、不思議さの一つの鍵になっている。
話としては、要するに「記念館」、「資産家」、「小説家」、「委員会」という4つのタイトルに分けられているがそれぞれが独立した推理小説であり、それぞれ「本格的推理小説の伝統的なトリック」を取り扱っている。しかも、それらはすべて、一つの「犯罪?」の解明を追いかけている。
それら4つの「殺人事件」は名探偵天下一によって解明される。それはいい。それだけでもこの作品は読ませるし、読んで損はない。しかし、最後の部分で、読者の頭はこんがらがる。どうこんがらかるかは、ここでは紹介しない。ただ、これは小説家東野圭吾が「本格的推理小説」に対する「迷えるスタンス」の問題である。こんがらかりつつ考えさせられる。東野圭吾という小説家はただ者ではない。
ただ、一寸断っておくが、わたしはこれまでも東野圭吾の小説を読んできたが、それはあくまでもエンターテイメントとしての読書であり、読み方は気まぐれで、著述年代別でもないし、ジャンル別でもない。従って、この作品にしても東野圭吾の一連の作品の中でどういう位置づけになるのかについてはあえて考えないことにしている。これからも、そういう読み方を続けるつもりである。

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