折にふれて

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お化け煙突はどこだ!  続き

2023-03-03 | オトナの遠足

「お化け煙突」の話が続く。

 

地下鉄千代田線の町屋駅から北に20分ほど歩くと隅田川に出る。

そして、尾竹橋を渡ったところ、帝京科学大学キャンパスの一画に

「お化け煙突モニュメント」がある。

円筒のモニュメントの上半分が「お化け煙突」の一部。

煙突の解体後、当時近くにあった小学校の滑り台の台座に転用されたそうだが、

小学校が廃校となった後、ここでモニュメントして残されたという。

また、その足元では当時の写真とともに「お化け煙突」こと

千住火力発電所の概要や歴史も紹介されている。

 

「お化け煙突」の1/20スケールのモニュメント。

一節が1mほどで四節だから4m。

つまり、煙突の高さは80mほどあったようだ。

この高さは30階近い建物に相当する。

当時、東京タワーは別格として、

これだけの高さの建造物はそう多くはなかったはずで

今で言うランドマーク的存在だったのだろう。

さらに4本の配置を角度を変えながら眺めると

見える本数が変わるという「お化け」の由来も理解できる。

 

 

 

さて、「お化け煙突」が実際に建っていた場所はこのあたり。

右に見える帝京大学千住グラウンドからその奥にある東京電力資材置き場にかけて

「お化け煙突」があったようだ。

 

「お化け煙突」こと千住火力発電所は大正15年に稼働開始。

戦時中も空襲の被害を受けることなく稼働を続けたが

施設の老朽化、また豊洲に新しい火力発電所が建設されたことなどから

昭和38年に稼働を停止、翌39年に解体されている。

昭和39年は先の東京オリンピックが開催された年。

当時の私は8歳。小学校三年生だった。

前回の記事では東京で過ごした学生時代に「お化け煙突」を探したことを書いた。

受験で上京する新幹線の車中、

新横浜を過ぎたあたりからは車窓に顔を押し付けるように

東京の街並みに目を凝らしていた。

さらにそれからの4年間。都内の見晴らしのいい場所では

決まってそれらしい煙突を探したものだった。

だが、その時。「お化け煙突」はすでになく、

そのことを知らずに記憶の中の風景を探し求めていたのだ。

 

「お化け煙突」は山手線からも見えたというから、

私の年代を含む多くの人がその存在を知っていて、

しかも愛着をもってその姿を眺めていたことだと思う。

煙突が解体されると決まった時、

地元の人たちによる「お別れの会」が開催されたとの記録がある。

奇妙な話だ。

なぜなら、今の時代、火力発電所はその社会的な必要性はともかく、

近隣住民にとっては迷惑施設に他ならないからだ。

けれども、近隣の人たちにとっては、その「迷惑」を差し引いてなお、

「お化け煙突」は親しみの存在だったのだろう。

近くを散歩する年配の方、お二人に声をかけてみた。

お二人とも懐かしそうに「お化け煙突」のことを話してくださった。

「お化け煙突」は記憶の中の風景でしかなかったが

実際にそれを見ていた人たちの話を聞くことでその輪郭がはっきりとした。

それで満足だった。

 

小一時間ほど辺りを散策した後、

もうここに来ることも無いだろう、帰りかけたのだが...。

隅田川を渡ったところで足が止まり、

そして、対岸を振り返っていた。

大きく広がる空に、もう一度「お化け煙突」の記憶を重ねてみたくなったのだ。

その日の東京は快晴。澄み渡る冬空の青さが目に痛いほどまぶしかった。

 

 

 


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5 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
偶然ですね (荒川三歩)
2023-03-03 09:38:07
私もお化け煙突関連の記事を作成しました。
元宿堰稲荷神社は毎月1日が御開帳日です。
尋ねられては如何でしょうか?暖かく迎えて下さいます。
返信する
偶然ですね (荒川三歩)
2023-03-03 09:38:41
私もお化け煙突関連の記事を作成しました。
元宿堰稲荷神社は毎月1日が御開帳日です。
尋ねられては如何でしょうか?暖かく迎えて下さいます。
返信する
荒川散歩さん (juraku-5th)
2023-03-03 14:37:28
コメントありがとうございます。
2年前に「お化け煙突」のことを記事にしたとき
「お化け煙突モニュメント」の存在を教えてくださったのが
荒川散歩さんでした。
ようやく訪れることができました。
2月11日でしたが、幸いにも快晴。
記憶に残る冬空になりました。
ありがとうございました。
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Unknown (お〜たむ)
2023-03-05 09:23:44
おはようございます。
jurakuさんが長い間、ご記憶の底で
気になる存在だったお化け煙突のお話
ミニドキュメンタリーを拝見しているような
楽しい気持ちになりました。
時代と共にお役御免となったあとも
こうしてモニュメントとして残って生きているのは
良いことだなと思いました。
青空の風景が素晴らしいです!
東京23区内、こんなに広い空が見れるなんて。
実は亡父はかつてこの近くの中学校で教員をしていて
町屋の駅も通勤に使っていました。
家は練馬区だったので私が子供の頃は
あまり馴染みがない区だったのですが
とても好きなエリアだったようです。
父もまた川の上空の青空を眺めていたのだろうなと
感慨深く拝見しました^^
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お~たむさん (juraku-5th)
2023-03-05 10:55:12
うれしいコメントありがとうございます。
実は私もこの辺りはまったく馴染がありませんでした。
ところが7年前、私が勤める会社が都電荒川線の軌道緑化実験に参加することになり、
そのひとつが「町屋駅前」電停でした。
ただ、その時は「お化け煙突」が千住火力発電所だったことは知っていましたが、
それがどこにあったのかまでは知りませんでした。
2年前にも「お化け煙突」のことを記事にしているのですが、
記事を見たある方がその在りかを教えてくださり、
今回ようやくその場所に立つことができた次第です。
小学校の宿題を60年近く経って提出したような気分です(笑)
お~たむさんのお父様もきっと「お化け煙突」をご存じだったと思いますよ。
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