三国港の夕刻。
何気なく眺めた先に自生する花が気になった。
ふだんなら誰も気にとめないような花だが
暮れてゆく大きな景色を従えるような存在をその花に感じたからだ。
三国港(福井県坂井市) 2023.06.24 18:58 Sony α7S2 FE24-70㎜/f2.8 GM2 (49㎜ f/.8,1/200sec,ISO100)
「なんという花だろう」と思いつつ、
ふと、花の仕事をしている長男から聞いた話を思い出してもいた。
やたらと花の名前を知りたがる日本人観光客の話だ。
パリのとある花屋の店先。
色とりどりの花が歩道にまでこぼれ
街の一角を美しく飾っていた。
たまたま通りかかった日本人の男がその光景に目を奪われ
「この花は何という名前だ。あの花は?」
と矢継ぎ早に店の主人に尋ね始めた。
その刹那、店の主人が男に浴びせた言葉が
「美しいと思ったなら、花の名前などなんだっていいだろう」だった。
長男が言うには、花の名前を知りたがる人ほど花の名前を覚えないそうだ。
「そう。花の名前などどうでもいい。」と頬を緩ませながら
日暮れまでのわずかな時間、目の前の光景を楽しむことにしたのである。