(お城の入り口に入るまでの、道の傍の野の花。詩的な感じです。)
シザース城は入口から野の花が深く茂っている感じを受けました。花々の背丈も高く、草刈りをしないで自然に育つと、このくらいの背丈まで伸びて花が咲くのだという良い見本だと習いました。私には濃い緑と素朴な野の花の飛び交うような色の風情が目新しく、とても異国情緒を感じさせました。好みの風景であり、絵になる風景だと感じました。メモによると、ここに着いた時間は4時15分です。雑草厚(雑草深しですね。)と言う文字の下に時間があるので、入り口の時間だと思います。
(この刈り込まれた道の奥に今の代、又は所有者のご家族が住んでおられるとか、写真向かって右側に濠があったようです。色濃い濠に舟を浮かべて、お住いの若い男女が遊覧中であったかもしれません。)
(可愛らしいイメージで咲き揃っていた花々。階段に植えられ、花の階段になっていたかもしれません。私は初めてみる花でした。多色のマーガレットの花、又は日本の野菊の濃い色合いのカラフルな物が咲いている様な感じでした。近年、私は自分の住む地域でも、山里や郊外でこの花の様な群生を見かけた事があります。園芸品種として出回っているのかもしれません。)
ホテルに帰った午後、私はまだ日が傾いたと感じない夏の陽光に誘われ、夕食の時間までの自由時間を、異国の大気を肌に直に感じてホテル近辺の風景を楽しもうと思いました。手ぶらで、やや重く覆いかぶさってくるように感じる陽の光の中を、ふらふらと当てもなく歩いてみました。ほんの少しの時間でした。そろそろホテルに戻ろうとホテル脇のところまで来ると、そこでばったりBさんに出くわしました。彼女はいい物が見れるからと笑顔で私を誘うので、私は誘われるままに付いて行きました。
彼女はホテルの裏手に入って行きます。こんな裏の殺風景な場所にどんな見る物があるのでしょう?私が何だか不思議だと怪訝に思っていると、ここですと、彼女は目の前のガラス戸を押して入って行きます。私もBさんに呼ばれるままに後に続きました。そこはホテルの厨房で、従業員が何人も忙しく働いていました。洋画によくあるような厨房風景の通路を、Bさんと私は2人で通って行きました。
『こんな所通っていいのかしら?』私が不安に思いBさんに尋ねても、平気平気という返事です。通って来てしまったものは仕方ありません、それより、どんな見る物が有ったのか未だに私には不明です。Bさんの若い冒険心の成せる業と感じ、年代のギャップを感じた私は、年配の人なら多分そうであるように常識の範疇に苛まれるのでした。
ホテルの裏から入ると、私達の部屋は比較的直ぐ近くにありました。この自身ではとても出来ない貴重な体験に、どっと疲れた私はすぐに部屋に戻って休憩する事にしました。こんな体験はこの時だけでした。何時も安全圏を好む私は、生涯もうこんな経験をすることは無いと思います。