○シェラ・ザード 「死神を食べた少女」七沢またり(エンターブレイン)
貧しい村を王国軍が襲撃した。それは王国軍の仕業に見せかけ、人心の離反を狙う解放軍の策略だが、襲われる村人にとっては大差はない。
しかし、女子供に至るまで皆殺しにされたはずの村に生き残りがいた。痩せこけた村娘のシェラだ。彼女は襲ってきた兵士をただ1人で返り討ちにすると、王国軍に志願した。解放軍は敵だし、王国軍に入ったなら腹一杯ご飯が食べられるだろうというのだ。
彼女はまともな教育も軍事訓練も受けていないし、非力だ。普通の兵士が持つ剣すら振り回すことができない。けれど、兵士が2人がかりで持ち上げるのがやっとの大鎌だけは、まるで死神の持ち物であるかのような鎌だけは軽々と振り回し、立ちふさがる敵を片っ端から切り裂いていくのだ……という、血塗れで痩せこけた少女が戦場を駆けるファンタジー戦記。
シェラ・ザードの名前が連想させるように、王国軍少佐シェラ・ザードが縦横無尽に戦場を駆け巡る様はまさに千夜一夜の悪夢。ただひたすら強く、情け容赦なく死をばらまき、殺そうとしても死なないし、しかも時には彼女が何人もいるかのように見えます。
彼女の行動原理はただ1つ、「美味しい食事が食べたい」それだけ。
エピローグまで含めて英雄神話の構成でありながら、魔法とか、異能とか、神とか関係なく、徹頭徹尾「ホラー映画」の文法でした。普通に仲間と食事している時は、痩せているのに食いしん坊な少女で「みんなとごはんを食べると愉しいね」とか言っているのに、戦場に出ると理不尽に強い。直感と本能だけで暴れ回っているのに、殺しても死なない。そして、彼女と戦い続けているうちに、仲間の兵士たちもいつしか現実世界から外れ始め、歴戦の勇者の仲間たちというより幽鬼の群に近くなって、物語の中に消えていきます。
だから、こざかしい人間たちの権謀術数とか思惑なんて知ったことじゃないのです。敵は殺す。ご飯は美味しく食べる。ただそれだけの話なのです。
貧しい村を王国軍が襲撃した。それは王国軍の仕業に見せかけ、人心の離反を狙う解放軍の策略だが、襲われる村人にとっては大差はない。
しかし、女子供に至るまで皆殺しにされたはずの村に生き残りがいた。痩せこけた村娘のシェラだ。彼女は襲ってきた兵士をただ1人で返り討ちにすると、王国軍に志願した。解放軍は敵だし、王国軍に入ったなら腹一杯ご飯が食べられるだろうというのだ。
彼女はまともな教育も軍事訓練も受けていないし、非力だ。普通の兵士が持つ剣すら振り回すことができない。けれど、兵士が2人がかりで持ち上げるのがやっとの大鎌だけは、まるで死神の持ち物であるかのような鎌だけは軽々と振り回し、立ちふさがる敵を片っ端から切り裂いていくのだ……という、血塗れで痩せこけた少女が戦場を駆けるファンタジー戦記。
シェラ・ザードの名前が連想させるように、王国軍少佐シェラ・ザードが縦横無尽に戦場を駆け巡る様はまさに千夜一夜の悪夢。ただひたすら強く、情け容赦なく死をばらまき、殺そうとしても死なないし、しかも時には彼女が何人もいるかのように見えます。
彼女の行動原理はただ1つ、「美味しい食事が食べたい」それだけ。
エピローグまで含めて英雄神話の構成でありながら、魔法とか、異能とか、神とか関係なく、徹頭徹尾「ホラー映画」の文法でした。普通に仲間と食事している時は、痩せているのに食いしん坊な少女で「みんなとごはんを食べると愉しいね」とか言っているのに、戦場に出ると理不尽に強い。直感と本能だけで暴れ回っているのに、殺しても死なない。そして、彼女と戦い続けているうちに、仲間の兵士たちもいつしか現実世界から外れ始め、歴戦の勇者の仲間たちというより幽鬼の群に近くなって、物語の中に消えていきます。
だから、こざかしい人間たちの権謀術数とか思惑なんて知ったことじゃないのです。敵は殺す。ご飯は美味しく食べる。ただそれだけの話なのです。