付け焼き刃の覚え書き

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らのべヒロイン列伝「槍水茉莉花(ベン・トー)」

2018-03-19 | 雑談・覚え書き
○槍水茉莉花 「ベン・トー」アサウラ(スーパーダッシュ文庫)

 スーパーマーケットの閉店間際に値引きされる半額弁当をめぐり、夜な夜な繰り広げられる飢えた狼たちの戦いを描く『ベン・トー』は、どうしようもなく低レベルでバカバカしい争いを昇華し、どこまでも熱い漢たちの崇高な戦場として描写する、庶民派ギャグアクションです。半額弁当を争って毎晩若い男女が総菜売り場で殴りあうという酷い話に、ひたすらセガサターンのゲームやソフトは素晴らしいという力説と、誰が訊いてもホラ話としか思ってもらえない主人公一家の行状が三位一体で、なんともいえないテイストの熱い青春小説に変じてしまうのは不思議です。
 登場人物も一癖も二癖もある者たちが、由来さえ知らなければすごくカッコイイ二つ名と必殺技をひっさげて、入れ替わり立ち替わり、主人公の《カペルスウェイト》こと佐藤洋とその仲間たちの前に立ちはだかります。

 洋の先輩で、黒いストッキングと頑丈な厚底のブーツを履き、《氷結の魔女》の二つ名で呼ばれる槍水仙。無理して先輩ぶっている虚勢の張り方がかわいいですね。
 洋の従姉でイタリア人とのハーフの眼鏡少女、《湖の麗人》著莪あやめ。ナチュラルに佐藤が好きすぎて、既に熟年夫婦の領域に達しようとしています。
 成績優秀だけれどしっかり腐っていて、本来内気で他人からの接触を極端に嫌がっているのに、何かがBLの琴線に触れると邪悪な方向に暴走してしまう《幽霊(ザ・ゴースト)》こと白粉花。
 《オルトロス》の二つ名を持ち、買い物篭を使った連係攻撃が得意な沢桔姉妹。成績優秀なはずなのに意図せずして卑猥な言動を繰り返す姉とそのフォローに苦労する妹のアンバランスさ。
 ヒロイン候補はわんさかいますけれど、あえて1人を選ぶというなら、《氷結の魔女》の妹で、入退院を繰り返す病弱な10歳の少女、槍水茉莉花でしょうか。
 素直な性格で子犬のように愛らしく、いろいろなことに興味があって、おねえちゃんが大好き。おねえちゃんこそ最強の狼として信じて疑わず、その後輩である佐藤にもやたらに懐きます。やばいくらい。ここまで警戒心がなくて良いのか、それともわざと? わざとなのか!?というくらいスキンシップを求めてきます。なんというか、佐藤が「幼女に手を出す最低のペド野郎」と罵られて悪評ふんぷんになるくらい。
 これで計算が見えるとあざといなーとなるけれど、そこのさじ加減が上手いのです。
 まだブラジャーを必要としない体型ながら、無垢な天使は、アパートで、合宿で、雪山でと、無意識のうちに佐藤を誘惑し、危険なペドの世界へ引きずり込もうとするのです。
コメント
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