○アイリーン・ベイトマン 「ドラゴンは寂しいと死んじゃいます」藤原ゴンザレス(アーススターノベル)
傭兵アッシュは身長2メートルを超える巨漢で、一騎当千の戦士。彼が味方にいるからこそ、圧倒的に不利な状況にもかかわらず、クルーガー帝国軍は連戦連勝。軍を指揮するのが絵に描いたように無能な辺境伯パトリック・ベイトマンでも軍は負け知らず。
ところがアッシュは殺人鬼のような面相の巨漢でも、本当は心優しい少年。戦っても戦っても怖がられるばかりで誰も褒めてくれないし、お金も貯まったので傭兵を引退し、故郷の幽霊屋敷を安く購入してのんびり畑仕事でもしながらお菓子作りというスローライフに引きこもってしまった。途端に戦場では連戦連敗。もちろん1人の傭兵のがんばりなど上層部は知らないから、負けが続く理由が分からない。
だが、ものを考えない家風のベイトマン一族にも、ごく少数のまともな貴族も存在していた。辺境伯の末娘アイリーンである。
父親の遺伝子を無視したような美しく、強い意志を感じさせる顔の少女は前線で聞き込みをしてアッシュの存在を知る。なんとかアッシュに正当な評価を与えて謝罪し、戦場に復帰してもらおうと隠遁先のクリスタルレイクへと向かうのだが……。
……ということで、最初は優秀なツッコミ役として登場。
「ちょーっと待てーい! 明らかにおかしいだろ!」
「ほえ?」
「何を言ってるのだ貴様は」
と、しっかりツッコんで、見た目はアークデーモンなのに実は善良でお菓子作りが上手なアッシュとか、小さなドラゴンのレベッカの存在などに声を上げて右往左往していましたが、あっという間に人の本質を見抜く特殊能力が身についていて泰然自若。人の姿をした悪魔がやってきても「見ればわかるだろ」と平然と応えてスルーできるようになり、悪魔とドラゴンで溢れかえってしまったクリスタルレイク村の代官を務めるようになります。
ツッコミ役からボケ役へと鮮やかな転身です。
さらに怪物アッシュと恋仲に収まるに至って、すべての基準がアッシュになってしまったため、どんな天変地異が起ころうと、皇帝陛下が乗り込んでこようが気にしなくなります。そして、かつては「周囲も認める優秀な貴族」「唯一家族の尻ぬぐいに奔走する苦労人」「聖人君子」と謳われていたのが、いまや「あー、ただのダメな人だ」と納得されるようになってしまいます。ここまでで3巻。
この凋落ぶりがこの話の見所ですが、そのためにこの話にはツッコミ役が不在となってしまうのでした。
傭兵アッシュは身長2メートルを超える巨漢で、一騎当千の戦士。彼が味方にいるからこそ、圧倒的に不利な状況にもかかわらず、クルーガー帝国軍は連戦連勝。軍を指揮するのが絵に描いたように無能な辺境伯パトリック・ベイトマンでも軍は負け知らず。
ところがアッシュは殺人鬼のような面相の巨漢でも、本当は心優しい少年。戦っても戦っても怖がられるばかりで誰も褒めてくれないし、お金も貯まったので傭兵を引退し、故郷の幽霊屋敷を安く購入してのんびり畑仕事でもしながらお菓子作りというスローライフに引きこもってしまった。途端に戦場では連戦連敗。もちろん1人の傭兵のがんばりなど上層部は知らないから、負けが続く理由が分からない。
だが、ものを考えない家風のベイトマン一族にも、ごく少数のまともな貴族も存在していた。辺境伯の末娘アイリーンである。
父親の遺伝子を無視したような美しく、強い意志を感じさせる顔の少女は前線で聞き込みをしてアッシュの存在を知る。なんとかアッシュに正当な評価を与えて謝罪し、戦場に復帰してもらおうと隠遁先のクリスタルレイクへと向かうのだが……。
……ということで、最初は優秀なツッコミ役として登場。
「ちょーっと待てーい! 明らかにおかしいだろ!」
「ほえ?」
「何を言ってるのだ貴様は」
と、しっかりツッコんで、見た目はアークデーモンなのに実は善良でお菓子作りが上手なアッシュとか、小さなドラゴンのレベッカの存在などに声を上げて右往左往していましたが、あっという間に人の本質を見抜く特殊能力が身についていて泰然自若。人の姿をした悪魔がやってきても「見ればわかるだろ」と平然と応えてスルーできるようになり、悪魔とドラゴンで溢れかえってしまったクリスタルレイク村の代官を務めるようになります。
ツッコミ役からボケ役へと鮮やかな転身です。
さらに怪物アッシュと恋仲に収まるに至って、すべての基準がアッシュになってしまったため、どんな天変地異が起ころうと、皇帝陛下が乗り込んでこようが気にしなくなります。そして、かつては「周囲も認める優秀な貴族」「唯一家族の尻ぬぐいに奔走する苦労人」「聖人君子」と謳われていたのが、いまや「あー、ただのダメな人だ」と納得されるようになってしまいます。ここまでで3巻。
この凋落ぶりがこの話の見所ですが、そのためにこの話にはツッコミ役が不在となってしまうのでした。